ボーカル録りで悩んでいるバンドマンへ桃野からアドバイス!?
── ところで、さっきチラッと言っていたパンイチで録ったって何ですか?
桃野:そこ話戻します(笑)? テンションが高い曲に関してはパンイチ(パンツ一丁)で録るようになったって話です。『トライアングリー』もパンイチでした。
松下:歌入れしてる時のスタジオが、モニターと歌うブースが別部屋になってるところで、モニターの画面にパンイチの桃野が映ってるんですんですけど、靴下を脱がないからレスラーみたいで(笑)。
桃野:そのパンイチで録るというのを教えてくれたのは日高さんなんです。テンションをグッと上げたい時は脱いでみたらって。『ACME』の時は『NO CONTROL』とか、『淫ビテーションe.p.』の『旅立ちと少年2』とか。シリアスな曲なんですけど、脱いだほうが開放感があって高いキーが出るんですよ。歌録りで悩んでいるバンドマンは試してみたら良いと思います。
── なるほど。ライブでは高音はきつくないんですか?
桃野:ライブはテンションが上がってるから、自然と高いキーも出るんです。それに、お客さんの前でかっこつけたいと思ってるし。でも、レコーディングは締め切った空間の中で男ばっかりだから、どうテンションを上げるかって考えたら脱ぐしかないっていうところはありますね。
── わかりました。
桃野:わかっていただけました。
松下:でも、この話必要ですか(笑)?
── 桃野さんのパンイチって、それだけで面白いじゃないですか(笑)。他の楽器の方々も一発録りですか?
桃野:そこはいっぱいやりました。
出口:いつものレコーディングと変わらずな感じではありましたけど。ライブでアレンジを練っていたので、スタジオで考えたりということはほとんどしなかったですね。これをやろうという状態で臨んだので時間もかからずスムーズでした。
── ライブで演奏してからのほうが、MONOBRIGHTのレコーディングとしては合ってたということですか?
出口:今回はそうですね。
松下:ライブでやるためにリハーサルでアレンジするんですけど、それってCDを作る時と似た作業なんです。初めてライブで新曲をやった時に、あんまり情報量が多すぎるとお客さんだってわからないでしょうから、何かしら軸となるボーカルだったりリズムがあって、わかりやすいバカさとか激しさ、繊細さをどうやったら一発で伝わるだろうかという頭でリハーサルをするので、そういうことも含めて活きるんだと思います。
メンバーがいたから出来た曲です
── また、松下さんが作詞している『色色』(M-5)は、テンポやノリが一聴してわかりやすい曲ですね。
松下:『新造ライヴレーションズ』で『ウォークウォークウォーク』を書いて、ライブで楽しめる曲があったら良いなと思ったんです。それで、リズムから平和な感じがあってふんわり乗れる、清涼感のあるコードで作りたいなと思って、この曲を持っていったら好評だったんです。リズム押しなので飽きないように、みんなからアイディアをもらって。
── もう1曲、アルバムの最後を飾る『ブランニューウェーブ』(M-9)も松下さん作詞ですけど、こちらはじっくりと聴かせる歌が基調となった曲で。
松下:僕はボーカルではないから、デモを作りながら桃野がこれを歌ったらとか、バンドでこれをやったら面白いかどうかというだけの視点で作ったんです。桃野って独特の視点があって、それがキャラとして出ていると思いますけど、逆のことをやったら面白いんじゃないかなと、自分が思っている小難しいことをちょっとだけ入れつつ、真っ直ぐな言葉や難しい漢字を使ったりしました。
桃野:『色色』の歌詞に出てくる色の漢字が読めなかったですから(笑)。
松下:ふりがなをふって渡しました(笑)。でも僕1人だけではこういう曲にはならなかったと思います。メンバーがいたから出来た曲ですね。
桃野:前は日高さんが曲を書いていた部分を、違う音楽性のまっつん(松下)が書くことで、バンドの変化や進化をすごく伝えやすくなったと思います。まっつんの曲って、音楽のディープな部分も考えられているので、その感じが今回のアルバムでは肝として必要なのかなと思ったんです。
── その中で3曲目の『youth』ですが、私が8月に見に行ったライブでは「ブッチャーズ(bloodthirsty butchers)になりたかった」と言って歌われて、すごく記憶に残ってるんです。桃野さんの吉村さんへの思いが十分に込められた曲ですね。
桃野:『新造ライヴレーションズ』で一緒に曲を作った時に吉村さんといろんな話をさせてもらい、北海道のバンドとしてすごく憧れているんだなという自分の気持ちを改めて感じたんです。だからブッチャーズからの影響を惜しげもなく注ぎ込んでいて、そしたら偶然にもブッチャーズの新しいアルバムも『youth(青春)』というタイトルで、今では変な使命感に駆られてます。
── えっ! 偶然だったですか?
桃野:そうなんです。この曲は昨年ぐらいから『youth』というタイトルを付けていたんです。前に西荻の焼鳥屋で吉村さんと呑んだ時に、録ってすぐぐらいの曲を聴かせてもらって。
── ブッチャーズの新しいアルバムの9曲目(『youth パラレルなユニゾン』)を桃野さんと一緒に聴いたという話を弊誌椎名から聞きました。
桃野:そうなんです。でもその時は曲のタイトルが『youth』って知らなくて。MONOBRIGHTって基本おちゃらけているイメージがある中で、日高さんが入ってからは自分のエモーショナルな部分を出すようになっていて、今回もそういう曲を作りたいなと思ったんです。
── でも、その名曲を『OYOVIDENAI』の次に入れるというのがMONOBRIGHTっぽい(笑)。
桃野:『トライアングリー』と『OYOVIDENAI』に挟まれてるところが(笑)。でも『youth』みたいな素直な曲を最後にはしたくなかったんです。曲順はひねってますね。
── どんなイメージで配置したんですか?
桃野:今までは必ず最初にかまして真ん中で聴かせる曲があって、最後にエモくなるみたいな作り方をしていたので、今回は先にストレートな歌モノを入れて、その間にいつものMONOBRIGHTがいるという感じで、歌モノとおちゃらけた曲を奇数と偶数で分けたんです。偶数の曲がいつものふざけたMONOBRIGHTらしい曲で、奇数のほうにはいつもと違うなという感じの曲を入れていて。
── 交互の感じで?
出口:ライブでやっている流れではあるし、こういう並びって有頂天の『でっかち』というアルバムでもやってるんですけど、アルバムでしか出来ないことを考えました。
松下:CDしか聴けない人、ライブしか来れない人いろいろいると思うので、それぞれの楽しみはもちろんあって良いんじゃないかなって。どちらかに寄せすぎない方が親切なんじゃないかという思いはありましたね。ライブも大切なんですけど、CDを作品として作ろうというところはあったと思います。『youth』もこの位置にあるほうが映えたりするんですよ。