2009年にリリースした『monobright two』以来となる"MONOBRIGHT+数字"のタイトルが付けられた、MONOBRIGHT6枚目のニューアルバム『MONOBRIGHT three』が11月13日にリリースされる。今作はこれまで以上に心も躍る彼らのライブの勢いが強く提示された作品であり、専門学校時代に結成して今年で30歳を迎えた彼らが、MONOBRIGHTとはどんなバンドかを改めて考え、覚悟を決めて歩いている様を感じられるものだった。2年間、ヒダカトオル(現:日高央)と活動を共にし、その期間を経て再び4人となった彼らがこのタイトルを付けた意図とは。そして、4人となった彼らが目指しているものとは。
今回は久しぶりに4人でのインタビュー。これまでと変わらず非常に賑やかな時間だった。(interview:やまだともこ/Rooftop編集部)
メンバー全員30代に突入
── 4人体制のフルアルバムとしては3年振り、アルバムタイトルは2009年にリリースした『monobright two』以来の“MONOBRIGHT+数字”ですが、どうしてこの形に戻したんですか?
桃野陽介(ロック歌手):『monobright two』の次の作品が『ADVENTURE』なんですけど、冒険や実験をしながら音楽の幅を広げていく活動をしていたので、それまでとは違う形の作品ということで『ADVENTURE』というタイトルを付けたんです。その後、鬼嫁・ヒダカトオル(現:日高 央)が加入していた2年を経て、再び4人になって何を作るかという時に、帰ってきたMONOBRIGHTと新たに成長しているMONOBRIGHTという意味を込めて『MONOBRIGHT three』にしたんです。
── 『monobright two』から4年が経過し、バンドとしてどんな変化をしていると思いますか?
桃野:日高さんが2年間僕らをしごいてくれたので刺激も受けつつ、僕らも今年30歳になって心の成長と音楽的な成長がちょうど良い感じになってきているんじゃないかと思います。
── やはり30代に突入したということは個人的にも大きいですか?
桃野:大きいですよ。それに、バンドって仕事としては不安定なので、食っていけるかとか一度は考えますよね。
出口博之(Ba):それと20代前半で地元の札幌に住んでいた時の影響は大きいかもしれないです。札幌にはお世話になった人やかっこいいバンドがいっぱいいますけど、バンドで食っている人ってほとんどいなくて、その時に自分たちは30歳になった時に音楽をやれているんだろうか、ずっとここ(札幌)にいちゃダメなんじゃないかという気持ちもあって上京したんです。30歳という年齢で劇的に何が変わるということではないですけど、気持ちの中ではひとつの区切りみたいなものがあったかもしれないですね。
── バンドマンに限らず、30代に突入する時に一度は何かしら人生について考えますからね。
松下省伍(Gu):どれだけ考えても正解はないと思うんですけど、このメンバーで10年近く一緒にいて、曲作りやアレンジ、音楽に限らず考え方ひとつとってもお互い成長している部分は感じますよ。今回の作品は僕ら的には一皮剥けたなというものになりましたね。作りながら、良い作品になりそうだと手応えがあったし、出来上がった時に変な不安は何もなかったというか、シンプルに良いものが出来たというそれだけ。無責任なことを言うつもりはありませんが、売れようが売れまいが、自分たちにとってすごく良い作品が出来たし、度胸が付いた感じもあります。
── 30代に突入してユーモアのある部分も振りきれた感じがしますし、この作品はMONOBRIGHTがどんなバンドかというのがわかりやすくなりましたね。
桃野:この歳になって、自分がやりたいことの意志がはっきりしていることに気付いたんです。そういう意味で『MONOBRIGHT three』は、コミカルかつわかりやすいMONOBRIGHT像を作るタイミングだなと思ったんです。
── 歳を重ねたことで自然とそうなっていったんですか?
松下:今の30の話じゃないですけど、今まで出した作品を聴き直して、改めて自分たちと向き合うという作業を自然としたような気がして、まわりから見て何がMONOBRIGHTっぽいんだろうね、どこを面白いと思われているんだろうねということを考えたんです。それを曲や音像、歌や歌詞に落とし込めないかなと自然に考えながら出来た感じはありますね。
出口:曲作りをしていたのが、今年の7月から8月にかけて9週間連続毎週土曜日にDaisy Barで“下北沢ウィークエンダーズ”というツーマン企画のライブをやっていた時期だったんです。その時に昔の曲も演奏したんですけど、『MONOBRIGHT three』に収録している曲と過去の曲を並べた時に、なんで昔の曲はしっくりこないんだろうかって考えたら、日高さんが入ってくれていた2年間を経て、バンドの曲や自分たちを俯瞰で見ることが出来るようになって曲の捉え方が変わってきたのかなって。MONOBRIGHTの武器はここだというのがわかってきたのかもしれないです。
── 日高さんと離婚(脱退)して1年以上が経過していますが、この1年で自身が思うバンドの変化ってどんなことですか?
桃野:日高さんの存在がすごく大きかったから、それをまずは補った上でどうしたらもっと面白いものを作れるかというのが目標としてひとつ出てきた部分と、いかにMONOBRIGHTの面白い部分を成長させられるかということだったんですよね。
── ライブの見せ方も日高さんと離婚して以降、4人が自分のキャラをちゃんと見せるようになったというか、変わって来たなと感じました。
桃野:日高さんはライブが大好きで、ライブのために音楽を作ってると言っても過言じゃない人なんですけど、僕はもともと曲を作るのが楽しくて、ライブは披露するためのものというちょっと偏った考え方があったんです。日高さんにはライブの面白さを教えてもらったところがあって、自分なりにもっと詰めてやろうってなったのが、『MONOBRIGHT BEST ALBUM〜Remain in MONOBRIGHT〜』(2013年1月リリース)を出してからのライブになるんです。そこが振りきれたところだと思います。
MONOBRIGHTのライブの面白さを追求した作品
── 今作の『MONOBRIGHT three』ですが、前作のオリジナルアルバム『新造ライヴレーションズ』がライブ録音のアルバムで、今回ライブ録音ではないけれど、ライブの勢いがそのまま込められた作品ですね。
出口:“下北沢ウィークエンダーズ”では毎週1曲新曲を披露していて、最初に披露する場所がライブだったのでアレンジがライブに寄るというか、その要素は多くは入ってると思います。僕たちのライブが楽しいと言ってもらっているところを突き詰めて。みんなが感じているMONOBRIGHTのライブの面白さを自分たちも理解しないと王道の音楽も出来ないし、変化球も出来ないというのは考えましたね。
── 『OYOVIDENAI』(M-2)はMONOBRIGHTならではの、テンションが高くユーモアのある曲ですよね。
出口:いいんですよ、「バカな曲」って言っても(笑)。
松下:いいんですよ(笑)。
出口:最初は真面目でかっこいい曲だったんです。
── タイトルもかっこよかったんですか?
出口:タイトルは『OYOVIDENAI』でしたけど(笑)。
松下:最初はレニクラ(レニー・クラヴィッツ)みたいな曲だったんです。でも、そのままやって出来上がりが良かったとしてもそれでしかないので、バカなノリをわかりやすくする演奏とアレンジとは何なのかなというところは考えました。激しくてアホっぽい音で、MONOBRIGHT何やってるのよって言われるアレンジかもしれないですけど、レコーディングでは丁寧なプレイを心がけてます。
出口:歌はすごかったね。ほぼ一発で。
桃野:(歌録りを)パンイチでやったやつ。
松下:テンション作りと、気持ち作りだけ時間がかかって。
桃野:今回から僕の担当は「ロック歌手」という表記になりまして、歌にも凝ろうと思って、歌の模範になる人を曲ごとにイメージしたんです。『OYOVIDENAI』はB'zの稲葉さん、『風街ロマンスパイダー』(M-1)は槇原敬之さん、『妄想難破奇譚』(M-7)なら田島貴男さんみたいな色気のある感じとか。
── 『アイドル』(M-6)は?
桃野:『アイドル』は…そのまんま…。
出口:…桃野陽介。
桃野:アイドルになりたかった自分を自分で歌う。光GENJIに憧れていたんです。でも光GENJIをモデルにすると7人分の声を使わなければならなくて、わざわざ7人で重ねるのもちょっと違うなっていうことで。
── まぁ、そうですよね(苦笑)。でも、今の時代に光GENJIを出す人もなかなかいないですよ。私はファンでしたけど。
出口:結局そこなのかもしれないです。今までも他の人がやっていない音楽性を探してきたけれど、根っこにあるのは一番影響を受けたものだったりするので、ちょっと古くさく感じる曲もあると思いますが、古いから良くないわけじゃなくて、それが好きなジャンルだから、そこをどう抽出して面白く2013年に出すかというのは考えながらやったかもしれないです。デモが上がった時点で全体的に曲が良かったから、この面白い部分を振り切ることは考えました。