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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】URCHIN FARM(2006年7月号)- 一撃必殺の総天然色サウンド、第2幕突入! 極上の虹色メロディに感染した温故知新現在進行形ミュージック!

一撃必殺の総天然色サウンド、第2幕突入! 極上の虹色メロディに感染した温故知新現在進行形ミュージック!

2006.07.01

変態的な要素を織り交ぜつつ如何に判りやすく伝えるか

──今回のミニ・アルバム『オレマニア』は、1曲目の「On SHOWTIME」からアーチン・サウンドの余りの突然変異っぷりにまず度肝を抜かれますね。

13_ap02.jpgMORO:この「On SHOWTIME」を作った時には、ネッチョリとしてベッタリとしたインパクトが凄く強かったし、僕達の言葉で言うと“エモい”っていうか、なんて言うのかなぁ…ネチョッとした熱帯夜みたいなアルバムのスタートにしたかったんですよ。バンドとしての真新しい曲で幕を開けたかったというよりも、凄くいい曲が出来たと思ってるし、それをアルバムのトップに持ってきて「聴いてよ!」っていう、極々自然な感じなんですよね。

──ひねくれるにも程がある極めて変態度の高い曲ですが(笑)、アーチン一流のポップ・センスがちゃんと貫かれているのは流石だな、と思いましたが。

MORO:僕達の根底にあるのは、まずメロディが良くて、自分達が気に入っているテイストであればそれでヨシ! っていう感覚なんです。みんないろんなジャンルの音楽が好きですし。その曲がイヤイヤ作ったものでなければ、自分達が作った作品として堂々と胸を張れますしね。仮にバラードを作ろうというのであれば、至極のバラードを作らないとダメだと思ってるし、変態度が高くてオリジナリティに溢れた曲を作ろうと思ったら、ポップでキャッチーな曲が作れるという自分達の強みがあるぶん、そこに変態的な要素を織り交ぜつつも如何に恰好いいものに仕上げて判りやすく伝えるか、ということに対して一切の妥協はしないんです。基本的に何でもアリだと思ってるんですよ。

SOTA:まぁ確かに、「On SHOWTIME」は「これ、ホントにアーチンですか!?」って言われることが多い曲ではありますね(笑)。

──でも、“ミニモニ”という仮タイトルから「Me Need More Need」を作ったりする遊び心や、「ARKANOID」のような実験的なナンバーを生み出す意欲的なところも『I.D.[Illustrators' Decoration]』の頃からすでにあったわけで、「On SHOWTIME」みたいな曲がいつ生まれてもおかしくはなかったですよね。

MORO:そうなんですよ。僕達の中に元々あったヘンな部分をどこまで振り切れるかが今回の課題だったんです。ただ、それも自慰的なものにはしたくなかった。ポップでキャッチーな音楽がやっぱり好きだから、自分達だけにしか判らない音楽をやるのは恰好悪いよな、と思っていて。そんなメンタリティの中で、どこまで自分達にしか出せないオリジナリティを封じ込めるかに挑戦したというか。ここまで行ったら誰も付いて来れなくなるけど、それをちょっと下回るくらいまでなら自分達の我を出しても受け入れてくれるかな? みたいな。

──そう、だから新機軸を打ち出しても聴き手を突き放すことは決してしていないし、アーチン独自のポップさ、大衆性の高さはこれまで通り見事に保たれているんですよね。アルバムの最後を飾る「Sympathy」は従来のアーチン節炸裂の大名曲だと思うし。

MORO:ええ。「On SHOWTIME」のサビも、聴いてもらえればヘンでも何でもないと思うし、仰る通り「Sympathy」のような大直球ナンバーも今度のミニには入ってますからね。

──プロデューサーの佐久間正英さんは、テクノ・ポップを反映させた先鋭的なサウンドで名を馳せたPLASTICSのメンバーでもあったし、「On SHOWTIME」のような曲を共に練り上げるにはまさに適任だったんじゃないですか?

MORO:そうなんです。でも、だからこそ逆にキツかったんですよ(笑)。佐久間さんなら勝手も知ってそうだし、僕達としては早くレコーディングが済むだろうって甘く考えてたんですけど、音へのこだわりが凄く強くて。熱く語ることはないんですけど、「ここ、どうなの?」とか「これじゃヘンなノリは出せてないよ」って後からジワジワと来るんですよ(笑)。だから、「On SHOWTIME」は音質を決めるのに凄く時間が掛かったんですよね。今回は佐久間さんではなくYOSSYがキーボードを全編弾いてくれたという中で、結構佐久間さんが投げっぱなしだった感じもあるんです。「こんな感じにしたくて、でも抜けが悪いんですけどどうしたらいいですか?」って訊くと、その都度的確にアドバイスはしてくれましたけど、基本的にバンドを尊重して、サポート側に回ってくれた部分が多かったですね。

──1stシングルの『MONOchrome』、1stフル・アルバムの『I.D.[Illustrators' Decoration]』、2ndシングルの『One minute SNOW』、そして今回の2ndミニ・アルバム『オレマニア』と、佐久間さんとタッグを組むのもかれこれ4作目、やり取りも阿吽の呼吸でしょうし。

MORO:まぁ、「オマエらなぁ……」って叱られてばっかりですけどね(苦笑)。佐久間さんの仕事は凄く緻密だし、日本でトップクラスのサウンド・メイキングをする方だから、こっちの実力がそれなりに伴ってこないと最高の音は絶対に作れないんですよ。4作ずっと佐久間さんと一緒にやってきて、確かに以前に比べてテクニックや知識は格段に増してると思いますけど、佐久間さんが求めるサウンドを出すのはやっぱりなかなか難しいんです。僕達が理想としているサウンドが最高のものだと思われてないっていう部分もあるのかもしれないけど、そのヘンな感じのぶつかり合いが凄く刺激になっているんですよね。とにかく、毎回ヒーヒー言いながらやってますよ(笑)。

──『オレマニア』の収録曲を最初に佐久間さんに聴かせた時の反応はどうでしたか?

MORO:「MONOchrome」とか、シングルとして切る曲に対しては「聴きやすくしなければいけない」っていつも言われますけど、基本的に“ザ・バンド!”みたいなメンバー全員で作り込む曲に関しては結構こっちにお任せなんですよね。「On SHOWTIME」の場合も最初はそんな感じで。ただ、録りがうまく行くにつれて佐久間さんの注文がどんどん増えていったりして。それはやっぱり、いいものが出来上がってる空気と手応えが佐久間さんの中にあったからこそですよね。

──「On SHOWTIME」は特に、音を如何に詰め込むかよりも引き算のバランスが難しい曲ですよね。

MORO:そうですね。音の要素は選びに選んで作りましたからね。「この部分は要らないよね?」って話もみんなで徹底的にしたし。ホントに苦労した曲なんですよ。リズム録りも凄くキツかったし…。

TETSUYA:もう、毎晩泣いてましたね(笑)。

SHITTY:毎晩失禁してましたしね(笑)。

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