“怪獣音頭”をカヴァーできるのは怒髪天しかいない!
──レベル高いっすよねぇ。っていつの間にやら話が激しく脱線しましたので戻しますが、お次は怒髪天。で、とりあえず増子さんに言っておきたいのは、ほんとごめんなさい、そしてありがとうございましたということで。実は怒髪天には、微塵の選択の余地もないというまでに、猛烈に“怪獣音頭”をゴリ押ししたんですよ。
増子:ほんとだよ、完全曲指定だもん(笑)。本当は俺らだって、もっとカッコいい曲やりたかったんだよ?
奈良崎:ええっ? でも凄い合ってたよ。
恭一:俺は凄い羨ましかったよ。
増子:ええっ、そうなの?(笑)
──杉本さんはドリフ大好きですから(笑)。っつーか本当、どうしてもこの曲を怒髪天にやってもらいたかったんですよ。それはマジで私の夢と言っても良かった! つうかこのアルバム自体が私の夢の実現であったわけなんですが、中でも怒髪天のこの曲は非常に重要だったんですよね。何故なら、この曲のカヴァーは多分これが最初にして最後、唯一無二の代物となるんではないかと。それほどまでに演じ手が限定される楽曲だと。はっきり言うと、日本中でこの曲のカヴァーができるロック・バンドは怒髪天しかいない! と。
増子:……ははははは。
──けれども、まさかこれほどまでに全うしてくれるとは! という凄まじいデキで、私は大変感激しました。
増子:確かにねえちゃん、俺たちの“怪獣音頭”が聴きたいって、それこそずっと前から言ってたもんね(笑)。でもさ、普通やらんって!
一同:はははははは!
──ただ、一点心配していることがあるんです。潔くやり過ぎてくれているので爆笑できる分、バンドのマイナス・イメージにならないか、ちょっと気掛かりで(笑)。
増子:トリビュートってさ、アレンジ合戦っていうか、カードの切り合いだから、ポーカーみたいなもんでさ。で、みんないっせーのせ! っでカード出したら、「おおっ、それがきたか!」っていうのがあるじゃない? 俺たち……ちょっと強いカード切り過ぎたかな、とは自分でも思うよね(笑)。特に4番。
──ああ、あの物真似は酷かったですね!
吉村:「似てねぇー」って入ってるもんな。
増子:「似てねぇー」って言うしかなかった。なぜなら似てないから(笑)。
──それでですね、今回私は皆のレコーディングに顔は出さなかったわけですが、それは事前にいろいろ注文出したりした分、本作業はお任せしたいというのと、上がったのを聴いて楽しみたいというのと、あと単純に忙しかったというのもあったんですけども(笑)、とにかく。怒髪天のレコーディングにだけは行ったんですよ。何故なら、「コーラスをやれ! これは命令だ!!」と増子さんに呼び出されてですね。
一同:ははははは!
──罰ゲームを受けろと脅されてですね(笑)。
増子:そうそう。本当は5番を全部一人で歌わせようと思ってたんだよ(笑)。
──マジ勘弁してくださいよう。コーラス入っただけでも冷や汗が滝のようだったというのに。でも本当、聴いてるウチにじわじわ嬉しくなってもきました。何せ怒髪天と共演しちゃったわけですし。しかも出来上がりは、これぞまさしく私の聴きたかった“怪獣音頭”だったわけで。
増子:もうさ、元が音頭だから、いじりようがないんだよ! だからもう開き直って、いつも行ってる飲み屋から和太鼓まで借りてきて入れたもんね(笑)。でもさ、俺が子供の頃聴いてた企画盤に入ってた、テレビで流れたわけでもない“怪獣音頭”を、「おっさんフザケてんなぁ~」と思って聴いてた“怪獣音頭”をさ、まさか30数年を経て自分がやるとは思わなかったよなぁ。えらいオチがついたなと思ったもん!
恭一:あははは、あはははははは!
増子:あの歌詞とかもさ、言い回しが全体的に本当おっさんくさいんだよ。「ザザーンくんにてございます」だよ? あとさ、「コブラのように恐ろしく」っていう下りも凄いよね。どう考えても、コブラより怪獣の方が遥かに怖いっての!
──でもでもあの歌詞は怪獣の設定が完璧なんですよ。というのも、歌詞を書かれた東京一さんは、実は故・円谷一さんなんです。ね、泉さん!
泉:はい。
一同:えええええーっ!?
泉:で、私もこの曲は凄く気に入っていて。もうニヤニヤニヤニヤして聴いてましたね(笑)。大好きです。
増子:実は密かに意外と評判いいんだよね。サンプル上がった時にさ、バズラのテッペイからも即メールきたもんな。「素晴らしい!」って(笑)。そんでバズラの事務所の社長、もの凄い勢いで“怪獣音頭”をヘヴィ・ローテーションしてるらしいよ?
──社長ならバズラのやった“ウルトラマン80”をかけるべきなんじゃないかと突っ込みを入れるところなんでしょうが、社長最高っすね。
増子:(笑)あ、そんで俺さ、実は自分で曲を選べたら、その“ウルトラマン80”をやりたかったんだよね。あの歌詞最高なんだよ。ほんとグッとくる!
──そうだったんだ。いや、怒髪天に関してはわざと他にやりたい曲とか聞かないようにしてたから(笑)。でも、確かに80も超名曲です。
増子:うん。凄くいい曲。そんでちょっとゴダイゴっぽいの。
──そうそうそう。そういやバズラの80も私のリクエストを聞いてやってくれたんですよ。
増子:全部注文じゃねぇか! これはもうトリビュートじゃなくてゴメビュートじゃねぇか!!(笑)
吉村:ゴメビュートってお前(笑)。
増子:あとね、これ通して聴いてて、凄い頑張ったなぁと思ったのはね、MAD3。あれは頑張った。よく頑張った!
──MAD3は“ウルトラ警備隊の歌”の前に入ってる“悲愴”をやるために、チェロを特訓したんですよ。
奈良崎:へぇーっ!
増子:ほんっと凄いよ、だって自分達が得意なこと、敢えて全然やってないっしょ。あれは愛だよね、愛!
奈良崎:そういやさ、なんでAとタロウは誰もやらなかったの?
──候補に挙げてくれていたバンドもあったんですが、諸処の事情で今回は参加できなかったバンドがあったんですよ。もし続編があれば是非やりたいって言ってくれてるんですけれども。あとは、楽曲をリクエストしたけど、それが通らなかったバンドももちろんありますしね(笑)。
奈良崎:なるほどなるほど。
増子:でもホントは全部、Aとかタロウとかも入ってたら良かったのにね。
──ですね。その辺はちょっと心残りかな。ちなみに今回、バンド側から何がなんでもこの曲! という指定が来た場合に限り、ウルトラマン・シリーズ以外の円谷作品もアリにしようという話は、実は最初から泉さんやエイベックスとも話してたんですよ。モガ・ザ・¥5の怪奇大作戦の“死神の子守唄”、LOW IQ 01のウルトラQ、そして特撮のマイティジャックがそれにあたるわけです。
増子:やっぱね、モガにはやられたよね。あれいいもん、あの歌詞最高!
吉村:死んだ、死んだ、死んだって歌詞最高(笑)。
──こういう無気味な曲があるところも、また円谷のいいところですよね。はい。