この物語は、足芸人(足でタライをまわす芸人)の鉄熊一家に生まれた、鉄熊みち代の女一代記です。
彼女は、3歳のころに家族でアメリカに渡り、カーニバル、サーカス団と一緒に足芸を披露しながら、アメリカ各地を巡業し、そのまま日本に戻らず、母とアメリカに残ります。
その後、オレンジ農園で働いたり、ふたたびカーニバルに参加し、三味線弾きながら足芸を見せたりしていたら、メリーゴーラウンドに顔面を挟まれて怪我します。
それから、カーニバルを去り、ホテルのメイドとして働き、太平洋戦争を挟んで、日本人の強制収容所に入れられたり、戦後は、またホテルのメイドとして働き、コインランドリーで、強盗の流れ弾に当たって、生死をさまよい、復活して、「あんたはだいじょうぶ!」と、サンフランシスコの街で、道行く人に声をかけはじめます。
この、鉄熊みち代のほかに、もうひとり重要な登場人物、鴨田秀雄という男が出てきます。
彼は、東京は調布の生まれで、戦後は調布基地で働き、アメリカに渡り、農園で働き、ロサンゼルスで沖仲仕になり、その後ベトナム戦争に行き、指を失って、アメリカに戻ってきます。
しかし、帰還兵となり、アメリカの地に戻ったものの、何もやる気が起きず、サンフランシスコのヘイト・アシュベリーの安宿に滞在し、ピザを食べマリファナばかり吸っている、どうしようもない生活に陥っていきます。
このとき、ラジオから流れてくる歌に触発されて、改心し、人生やり直そうとするのです。
このように、人生をやり直そうとするきっかけともなった歌が、皆様にもありますでしょうか?
世の中には、がんばれソング、元気出せよソング、あんたはだいじょうぶソングなどなど、人々を勇気づける歌が、いろいろありますが、全面的にそのような感じを押し出されると、どうにも、こちらの気分が萎えてきてしまうことがあります。
でも、一方で、ビシッと心に響いてくるものもあります。中島みゆきの「ファイト」なんかは、とてもいい感じです。物語があって小説を読んでいるみたいな気分になって、「やらなくちゃ!」といった気分に、こちらもなります。満島ひかりが唄ってる「ファイト」も、とてつもなく、素晴らしいです。
そんでもって、拙著『あんたはだいじょうぶ』の中で、帰還兵の鴨田秀雄が聴いて、やる気を出そう、人生をやり直そうとした歌は、ニーナ・シモンの、「Ain't Got No, I Got Life」になります。
この歌も、だいじょうぶソングとして、心に、とても効いてくるものがあります。
「Ain't Got No, I Got Life」=「なーんにもないけど、命があるよ」といった感じの題名でしょうか。
前半の歌詞は、あたしゃなにもない、家もないし、金もないし、教養もない、ないないずくしでござんすよ、といったものになります。しかし後半は一転して、あたしにゃ、手がある、足がある、指がある、命がある! となります。
聴いてみれば、誰でも、「よーし、頑張ってみるか!」といった気持ちになれるかもしれません。
いろいろと大変な世の中になってきて、どうしようかと、人生どん詰まっている人が多くいると思います。そんなときこそ、「Ain't Got No, I Got Life」を聴いて、拙著『あんたはだいじょうぶ』(幻冬舎)を読んでくだされば、なにか、いい抜け道が見つかるかもしれません。


































































