Rooftop ルーフトップ

COLUMN

トップコラム戌井昭人の想い出の音楽番外地第百十六回「大変な世の中だけど、ニーナ・シモンの歌を聴いて『あんたはだいじょうぶ』を読めば良い抜け道が見つかるかもしれない」

十六回「大変な世の中だけど、ニーナ・シモンの歌を聴いて『あんたはだいじょうぶ』を読めば良い抜け道が見つかるかもしれない」

第百十六回「大変な世の中だけど、ニーナ・シモンの歌を聴いて『あんたはだいじょうぶ』を読めば良い抜け道が見つかるかもしれない」

2026.05.01

 nina.png 4月22日、『あんたはだいじょうぶ』(幻冬舎)という本が出ました。
 この物語は、足芸人(足でタライをまわす芸人)の鉄熊一家に生まれた、鉄熊みち代の女一代記です。
 

anta.jpg

 彼女は、3歳のころに家族でアメリカに渡り、カーニバル、サーカス団と一緒に足芸を披露しながら、アメリカ各地を巡業し、そのまま日本に戻らず、母とアメリカに残ります。
 その後、オレンジ農園で働いたり、ふたたびカーニバルに参加し、三味線弾きながら足芸を見せたりしていたら、メリーゴーラウンドに顔面を挟まれて怪我します。
 それから、カーニバルを去り、ホテルのメイドとして働き、太平洋戦争を挟んで、日本人の強制収容所に入れられたり、戦後は、またホテルのメイドとして働き、コインランドリーで、強盗の流れ弾に当たって、生死をさまよい、復活して、「あんたはだいじょうぶ!」と、サンフランシスコの街で、道行く人に声をかけはじめます。
 
 この、鉄熊みち代のほかに、もうひとり重要な登場人物、鴨田秀雄という男が出てきます。
 彼は、東京は調布の生まれで、戦後は調布基地で働き、アメリカに渡り、農園で働き、ロサンゼルスで沖仲仕になり、その後ベトナム戦争に行き、指を失って、アメリカに戻ってきます。
 しかし、帰還兵となり、アメリカの地に戻ったものの、何もやる気が起きず、サンフランシスコのヘイト・アシュベリーの安宿に滞在し、ピザを食べマリファナばかり吸っている、どうしようもない生活に陥っていきます。
 このとき、ラジオから流れてくる歌に触発されて、改心し、人生やり直そうとするのです。
 
 このように、人生をやり直そうとするきっかけともなった歌が、皆様にもありますでしょうか?
 
 世の中には、がんばれソング、元気出せよソング、あんたはだいじょうぶソングなどなど、人々を勇気づける歌が、いろいろありますが、全面的にそのような感じを押し出されると、どうにも、こちらの気分が萎えてきてしまうことがあります。
 でも、一方で、ビシッと心に響いてくるものもあります。中島みゆきの「ファイト」なんかは、とてもいい感じです。物語があって小説を読んでいるみたいな気分になって、「やらなくちゃ!」といった気分に、こちらもなります。満島ひかりが唄ってる「ファイト」も、とてつもなく、素晴らしいです。
 
 そんでもって、拙著『あんたはだいじょうぶ』の中で、帰還兵の鴨田秀雄が聴いて、やる気を出そう、人生をやり直そうとした歌は、ニーナ・シモンの、「Ain't Got No, I Got Life」になります。
 この歌も、だいじょうぶソングとして、心に、とても効いてくるものがあります。
 「Ain't Got No, I Got Life」=「なーんにもないけど、命があるよ」といった感じの題名でしょうか。
 前半の歌詞は、あたしゃなにもない、家もないし、金もないし、教養もない、ないないずくしでござんすよ、といったものになります。しかし後半は一転して、あたしにゃ、手がある、足がある、指がある、命がある! となります。
 聴いてみれば、誰でも、「よーし、頑張ってみるか!」といった気持ちになれるかもしれません。
 

 いろいろと大変な世の中になってきて、どうしようかと、人生どん詰まっている人が多くいると思います。そんなときこそ、「Ain't Got No, I Got Life」を聴いて、拙著『あんたはだいじょうぶ』(幻冬舎)を読んでくだされば、なにか、いい抜け道が見つかるかもしれません。
このアーティストの関連記事

あんたはだいじょうぶ

著者:戌井昭人
判型:四六判変型
ページ数:216ページ
ISBN:9784344045712
定価:2,200円(本体2,000円+税)
発売日:2026年4月22日(水)

amazonで購入

【作品紹介】
1歳になる前から、みち代は、
ご飯を食べるのも居眠りをするのも、
父の足の上だった。

足芸をする曲芸一座の流転──。
『芥川賞落選小説集』『おにたろかっぱ』の著者による
人間のおかしみと切なさが胸を衝く、傑作小説。

鉄熊みち代は、足芸をする曲芸一座の家に生まれた。
3歳でアメリカ巡業に出るが、6歳で父と生き別れ、18歳で母を喪う。
第二次世界大戦中は日本人を収容するマンザナー強制収容所で過ごし、
終戦後はホテルのメイドとして働いていたが、
ある日、ピストルの流れ弾にあたって天啓を受け
「あんたはだいじょうぶ」と唱えながら街角で足芸をはじめることに……。

失ってばかりだが わたしたちには心臓がある
足がある タライがある 樽がある
三味線があって りんごの木箱がある

COLUMN LIST連載コラム一覧

  • 最鋭輝『私は今日までムードで来ました!』
  • PANTA(頭脳警察)乱破者控『青春無頼帖』
  • おじさんの眼
  • ロフトレーベルインフォメーション
  • イノマー<オナニーマシーン>の『自慰伝(序章)』
  • ISHIYA 異次元の常識
  • 鈴木邦男(文筆家・元一水会顧問)の右顧左眄
  • レズ風俗キャストゆうの 「寝る前に、すこし話そうよ」
  • 月刊牧村
  • 「LOFTと私」五辺宏明
  • 絵恋ちゃんの ああ えらそうに コラムが書きたい
  • おくはらしおり(阿佐ヶ谷ロフトA)のホントシオリ
  • 石丸元章「半径168センチの大問題」
  • THE BACK HORN 岡峰光舟の歴史のふし穴
  • 煩悩放出 〜せきしろの考えたこと〜
  •  朗読詩人 成宮アイコの「されど、望もう」
  • 今野亜美のスナック亜美
  • 山脇唯「2SEE MORE」
  • 大島薫の「マイセルフ、ユアセルフ。」
  • 能町みね子 新中野の森 アーティストプロジェクト
  • 能町みね子 中野の森BAND
  • アーバンギャルド浜崎容子のバラ色の人生
  • 戌井昭人の想い出の音楽番外地
  • さめざめの恋愛ドキュメンタリー
  • THE BACK HORN 岡峰光舟の ああ夢城
  • 吉田 豪の雑談天国(ニューエストモデル風)
  • ゲッターズ飯田のピンチをチャンスに変えるヒント
  • 最終少女ひかさ 但野正和の ローリングロンリーレビュー
  • 吉村智樹まちめぐ‼
  • いざゆかんとす関西版
  • エンドケイプの室外機マニア
  • 日高 央(ヒダカトオル)のモアベタ〜よ〜
  • ザッツ団地エンターテイメン棟
  • 劔樹人&森下くるみの「センチメンタル「非」交差点」
  • 三原重夫のビギナーズ・ドラム・レッスン
  • ポーラーサークル~未知なる漫画家オムニバス羽生生純×古泉智浩×タイム涼介×枡野浩一
  • the cabs 高橋國光「アブサロム、または、ぼくの失敗における」
  • “ふぇのたす”ちひろ's cooking studio
  • JOJO広重の『人生非常階段』〜今月のあなたの運勢〜
  • マリアンヌ東雲 悦楽酒場
  • 大谷雅恵 人生いつでも初体験
  • ジュリエットやまだのイケメンショッキング
  • ケラリーノ・サンドロヴィッチ ロック再入門
  • 岡留安則 “沖縄からの『書くミサイル』”「噂の真相」極東番外地編
  • 高須基仁 メディア論『裏目を読んで半目張る』
  • 田中 優 環境はエンタメだ!
  • 雨宮処凛 一生バンギャル宣言!
  • 大久保佳代子 ガールズトーーーク!!!!!
  • DO THE HOPPY!!!!!

RANKINGアクセスランキング

データを取得できませんでした

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻