馬鹿な音楽、馬鹿が前面に迫ってくる音楽があります。その音楽を聴いていると、しみじみ「馬鹿だなぁ」と思ってしまう音楽です。ちなみに、ここで言う「馬鹿」は、とんでもない褒め言葉なわけで、嫌な音楽という意味ではありません。
とにかく、いま私の言っている、馬鹿な音楽とは、よくもまぁ、こんなことやっているなぁと思えて、そこがなんだか格好良くて、感動してしまう音楽なわけです。そもそも、音楽って馬鹿なわけで、「馬鹿だなぁ」と気づかせ、「馬鹿が格好いい」と思えるのが、音楽なのではないかと勝手に思っています。真面目に音楽をやっている人には申し訳ないのだけど、でも、その真面目な部分が馬鹿で格好いいと最高なのではないか。なんだか、よくわからなくなってきましたが、馬鹿の骨頂音楽は、とにかく良いものなのです。
でもって、具体的に馬鹿な音楽を奏でているのは、誰なのか挙げてみると、ジャズの、ローランド・カークなんてのは、まさしく、そんな感じがします。サックスを何本もくわえて、ブヒブヒ吹きまくる。格好いい。あとは、ボブログ三世というミュージシャンも凄かった。ジャカジャカ、ボトルネック奏法でギターを弾きながら、ドラムをやって、パイロットのヘルメットみたいなのを被っていて、そこに黒電話の受話器がくっついていて、それがマイクになっているのです。私、ライブを観たことがあるのですが、馬鹿で格好良かった。
でもって、日本にも、このような馬鹿の骨頂で、感動を与えてくれるミュージシャンがいます。泉邦宏さん! 何度かライブを観たことがあって、この前も、渋さ知らズの『渋大祭』で、泉さんのライブを観て、相変わらず、「すげぇなぁ!」と感動してしまいました。
泉さんの場合、先に挙げた二人、ローランド・カークとボブログ三世を足した感じの馬鹿になっております。ギターを弾く、ドラムを叩く、キーボードを弾く、玩具をジャンジャカ鳴らすは、サックスを何本も口に突っ込んで「ブヒブヒ」吹いて、尺八もやっちゃう、唄っちゃう、音の鳴るものならば、なんでも来いや! といった感じです。
さらに音楽も、いろんなジャンルを奏でますが、本来はサックス吹きであるから、サックスが素晴らしい。鈴木常吉さんの『望郷』に収められている「大感情」という曲で、吹いている泉さんのサックスを聴いて、私は涙がジャカジャカ流れてきたことがあります。でも安心してください、馬鹿な時は、しっかり馬鹿なので、どうしちゃってんだ! と思わせてくれます。
そこで今回は、泉邦宏さんの『thank you sambar』というアルバムを紹介したい。ここでは、スカやレゲエ調の曲を、ばっちり馬鹿調でやってくださっています。ぜひ聴いてほしい。でもね、ここだけの話、泉さん、実はすげぇインテリだというのを私は知っておるのです。そんなこんなで、究極に馬鹿で格好いいライブも必見、泉さんはワゴン車に乗って、全国をまわってますので、あなたの街に来たら、ぜひ観に行ってください。馬鹿がワゴンでやって来るだ。