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十回 "和製ランナウェイズ"ことガールズのやさぐれ感に痺れる

第六十回 "和製ランナウェイズ"ことガールズのやさぐれ感に痺れる

2020.03.04

戌井昭人 想い出の音楽番外地  第六十回 “和製ランナウェイズ”ことガールズのやさぐれ感に痺れる
 
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 世の中には、ガールズバンドといって、女性だけがメンバーの格好いいバンドがあります。やはり女性だけがメンバーで、ビシバシ楽器などを演奏されて、暴れ回っていたりなんかするのを見ると、痺れてしまいます。なにも敵わねぇやと思えてきます。とくに不良っぽかったりすると、「すいません」と謝りたくなってきます。
 現在は違うのかもしれないけれど、かつては、「バンドやってるけど、なにが悪いんだこの野郎!」といった感じで、女性バンドは、気合の入り方が違うようにも思えました。
 ランナウェイズとかL7とか、なんだか怖かったのを覚えています。いっぽうで、ちょっと毛色は違うけど、バングルスというバンドもありました。ボーカルの女の子が可愛かったなあ。「Walk Like An Egyptian」という曲の変な踊りも印象的でした。最近では、ハイムという、アメリカ出身、3姉妹のガールズバンドもあって、この前ラジオで、最新曲が流れていて、良かったです。あとは、三姉妹バンドといえば、シャッグスですけれど、この人たちは、ガールズバンドといっても、特殊な部類に属するのではないかと思います。
 日本のガールズバンドも負けてはいません。最近のガールズバンドでも格好良いバンドがたくさんあって、YouTubeの映像なんかを見ながら、「ああ、凄えな、かっちょ良いな」と思ったりしているのですが、オッサンゆえに、新たにバンドの名前を覚えるのが困難な状況になっていることをお許しください。
 そんでもって、今回紹介したいのは、現在の日本のバンドではなく、かつてのガールズバンドです。その名も、ガールズというバンド名で、アルバム名は『Punky Kiss』です。調べてみたら、1977年に結成して1979年に解散したようです。当時、どれくらい売れたのかわからないけれど、先に挙げた、ランナウェイズの影響とかあったのかな? とにかく、まずは、ジャケットから気合の入り方が違います。メンバーの皆さまが、カラフルなレオタードで、ポーズをとっているのです。「なんだコレ?」と思ってしまいます。レコード棚にあったら、「どうしたの?」と思われてしまうかもしれません。
 しかし、レコードに針を落としてごらんなさい。スピーカーから、流れる音は、相当かっちょ良いです。2曲目「パンキー ハイスクール ラブ」なんて、どうなってんだってくらいイカしてる。歌詞は、学生生活を唄っているものなのですが、まるで学生を感じさせないやさぐれ感があります。「スーパー・カーでぶっ飛ばせ」という曲は、当時のスーパーカーブームに乗っかろうとしたのか、スーパーカーの名前を連呼しているだけで、やけっぱち感が漂います。でも、面白い。一方で、小林旭の「自動車ショー歌」が、いかに完成度が高い曲だったのかを知ることもできます。
 ジャケットのレオタードもそうだけど、どこか、偉い人にやらされている感があるバンドでもありますが、聴けば聴くほど良いわけで、ジャケットのレオタード写真が「OKだ」と思えた瞬間、あなたはガールズの虜になっていることでしょう。
 
戌井昭人(いぬいあきと)/1971年東京生まれ。作家。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」で脚本担当。2008年『鮒のためいき』で小説家としてデビュー。2009年『まずいスープ』、2011年『ぴんぞろ』、2012年『ひっ』、2013年『すっぽん心中』、2014年『どろにやいと』が芥川賞候補になるがいずれも落選。『すっぽん心中』は川端康成賞になる。2016年には『のろい男 俳優・亀岡拓次』が第38回野間文芸新人賞を受賞。
 
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