本当の自由ってなんだろう? ってときたま考えたりします。いや、考えたフリをしているだけなのかもしれません。みなさまはどうでしょうか? しかしながら、とにかく、考えてみたところで、自由っていったいなんだかよくわからないものです。
そもそも、この地球に存在すること自体、すでに自由なんてないのではないかと思ってしまうことが多い。
それでも、自由について書かれた本や、映画は、たくさんあります。『イージー・ライダー』なんて映画は、自由を求めてといった感じですが、結末は不幸です。
もしかしたら自由の裏側には、不幸なことがあって、自由を求めたところで、それは簡単に、くるっと裏返しになってしまうのかもしれないと思えてきます。
このように、自由について考えてみたものの、いや、本質にはまったく迫ってないので、考えたことにはなってないかもしれないし、それを追求するほどの、頭も気力もないのが、わたしの実情です。
それでも、やっぱり、自由ってものを目指すというのは、高揚するもので、ウッドストックのフェスティバルなんてものを見ると、特にそう思えてきます。わたしも、「自由!」って、叫びたくなるくらいです。
映画の中で、とくに高揚したのは、リッチー・ヘブンズの「フリーダム」でした。ギターを抱えて、ジャカジャカ弾きながら、歩いてきて、大きな手の親指でも弦を押さえて、「フリーダム、フリーダムッヤ、フリーダム」って唄ってるアレです。
初めて見たとき、わたしは衝撃を受けました。もしも、このおっさんが、このようにギターを弾きながら、地球を練り歩けば、本当の自由が訪れるのではないかと思ったくらいです。
しかしながら、自由というか、ウッドストックのフェスティバルは、結局、幻想のようになってしまいます。
そんなこんなで今回は、リッチー・ヘブンズのベスト・アルバムを紹介したいのです。このアルバムは、カバーもたくさん入って、それも良いのですが、あの「フリーダム」を唄う、リッチー・ヘブンズを聴くことができます。
乱暴な感じの、たまらないギターの音。そして、しゃがれた声で、「フリーダム」と叫ぶ、リッチー・ヘブンズ。
昨今、ミサイルが飛んだり、政府もうんぬんかんぬんで、きな臭い世の中になっておりますが、これを爆音で聴きながら、街を練り歩き、世直しについて考えるのもいいかもしれません。
やっぱり、もしかしたら、音楽は、世界を変えることができるのかもしれない、と思えてくる、素晴らしいアルバムです。
自由は、そこにあるかもしれない。リッチー・ヘブンズのベスト・アルバムを是非。
戌井昭人(いぬいあきと):1971年東京生まれ。作家。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」で脚本担当。2008年『鮒のためいき』で小説家としてデビュー。2009年『まずいスープ』、2011年『ぴんぞろ』、2012年『ひっ』、2013年『すっぽん心中』、2014年『どろにやいと』が芥川賞候補になるがいずれも落選。『すっぽん心中』は川端康成賞になる。2016年には『のろい男 俳優・亀岡拓次』が第38回野間文芸新人賞を受賞。