野坂昭如さんが亡くなってしまいました。子どものころはなんだか変なおじさんだと思っていました。パーティー会場で大島渚さんを殴るところや、酔っ払ってテレビに出ている姿など、いろいろ思い出します。
昨今、このような、昭和のおおらかさを持っている人が、どんどん亡くなり、今の時代が、どんどん、おおらかさを失っていくような気もします。
野坂さんは、自分が子どものころ、『火垂るの墓』のアニメが流行ったので、なんというか、涙を誘うような小説を書く人だと思っていたのですが、大人になって、『エロ事師たち』を読んで、その面白さに唖然としました。
そんでもって、野坂さん、音楽アルバムもたくさん出していまして、家にあるものを見てみると、まずは、『辻説法』というのがあります。これは、題名通り、辻説法で、野坂さんが参院選に立候補したときの街頭演説を収めたものです。マイクを通して喋る野坂さんの熱も凄い。そして、途中、応援演説で出てくる、小沢昭一さんの熱がとんでもない。音楽ではありませんけれど、必聴です。
関係ありませんが、野坂昭如、小沢昭一、そして、わたし戌井昭人、どうでしょう、三人とも、名前の三番目の文字に「昭」がつくのです。このお二方には、まったくおよびませんけれど、これがわたくしのちょっとした自慢であります。
とにかく、この『辻説法』というアルバム、そんな昭和の熱がビシビシ伝わってきて、身体が熱くなってきます。
二枚目は、『鬱と躁』というアルバム、女子大の学園祭でのライブで「バージンブルース」を唄う前のMCが最高だったり、「サメに喰われた娘」や「黒の舟唄」も入ってます。あらためて、今回、聴いてみたら、名曲ぞろいでした。
そんでもって、三枚目は、『不浄理の唄』です。これは、弁舌が入っていたり、歌は、「黒の舟唄」「バージンブルース」も入っています。そして名曲、「マリリン・モンロー・ノーリターン」もあります。
ちなみに、クレイジーケンバンドのアルバム『青山246深夜族の夜』で、ゲストに呼ばれて「マリリン・モンロー・ノーリターン」を唄う野坂さんも最高です。横山剣さんが野坂さんを紹介するところも素晴らしく格好良い。
でもって、『不浄理の唄』にはゲストで美輪明宏さんが出てくるのですが、そこで唄う、「星の流れに」「ミロール」が、度肝抜かれるくらい素晴らしいのです。
そして、最後は、なんだか、「手じめ」で終わるといった、まとまっているのか、まとまっていないのか、よくわからないアルバムです。
しかし、この、まとまりのなさ、ごった煮感が、やはり、昭和という時代のおおらかさを物語っているように思うのです。