あんたのこと大好きだけど、なかなか振り向いてくれないから、「I put a spell on you」「あんたに魔法をかけてやる」。そして、わたしのものにしてやる。なぜなら、あんたは、わたしだけのものだから。
男と女のことを唄った歌は、たくさんあるけれど、魔法をかけて、好きにさせてしまうもので、他に思い浮かぶのは、アニメ『さすがの猿飛』の主題歌、「恋の呪文はスキトキメキトキス」(歌:伊藤さやか)でしょうか。恋の呪文はスキトキメキトキスは、さかさに読んでも、スキトキメキトキスなんです。
でも、今回、ご紹介したいのは、スキトキメキトキスではなくて、ニーナ・シモンの、「I put a spell on you」です。
これは原曲が、スクリーミング・ジェイ・ホーキンスで、こっちの方も、とんでもなく、すごい曲で、わたしが知ったのは、ジム・ジャームッシュの映画、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』でした。映画の中では、カセットテープで、スクリーミング・ジェイ・ホーキンスの「I put a spell on you」が、ことあるごとに、流れているので、くらくらしてしまうほどです。
でも今回、ご紹介したいのは、スクリーミング・ジェイ・ホーキンスの方ではなく、ニーナ・シモンの「I put a spell on you」です。
このアルバム、一番目の曲が、「I put a spell on you」で、アルバム名も、『I put a spell on you』なので、しょっぱなから、われわれは、魔術をかけられたような状態になってしまいます。スクリーミング・ジェイ・ホーキンスの声もすごいけれど、ニーナ・シモンの歌声というものは、なんというか、とんでもなく、魔術的な気がします。とにかく、最初に聴いたときは、どこかの、おっさんが唄ってるのではないかと、思ってしまいました。でも、聴き込んでいくと、とてもチャーミングになってくるのです。
ニーナの魔術。映画、『ビフォア・サンセット』で、最後、ジュリー・デルピーが、ニーナ・シモンの真似をするのですが、これが最高なのです。ニーナのセクシーさ、ヤバさをジュリー・デルピーが真似するという、とんでもなく素敵な、モノマネ大会が、男と女、二人の部屋で繰り広げられています。
なんだか、アルバム紹介から、どんどんそれてしまっていますが、ニーナ・シモンの「I put a spell on you」で、魔術にかかって、全曲聴き込んでみてください。おすすめは、半ばにある「Feeling Good」。ここで、魔術と現実の境目を、われわれはみることでしょう。