島田紳助の電撃的引退劇で、ワイドショーやスポーツ紙は大騒ぎである。テレビでレギュラーの司会を何本も持つ売れっ子だけに、その衝撃は大きかった。おそらく、芸能界に身を置く関係者やタレントの中には他人事には思えなかった連中も何人かいたはずだ。芸能界においては、ヤクザと芸能人の付き合いは日常茶飯事という過去もあった。芸能と興業の間にはヤクザとの歴史的な共有関係が成立してきたからだ。今回の紳助の渡辺二郎と山口組の大物幹部との交友に関して、紳助自身は「アウトではなくセーフ」だったとの認識を示していた。しかし、電撃会見の翌日、渡辺二郎へのメールの内容や、山口組大物幹部との具体的な交友関係が判明するにつれ、紳助への同情は消えていった。大見えを切った紳助の潔ぎよさの背景に事実が隠蔽されていたためだ。
とは言え、暴力団との交友のある芸能人や芸能プロダクションは多い。吉本興業だって、バーニング・プロだって同様だ。紳助にしてみれば、「なぜ、俺だけが」という思いもあったに違いない。しかし、今年の秋からは全国都道府県で暴力団との交友を厳しく制限する条例が施行される。今回の紳助に関する情報源は明らかに大阪府警だと思われる。紳助ほどの大物芸能人ならば、警察の反暴力団キャンぺーンには絶大な効力を発揮する。紳助がそのための生贄にされた部分もあったのだろう。本来ならば、この手の「事件」は、謹慎処分程度で済んだはずだ。以前、紳助が吉本の女性マネージャーに暴行を加えた事件では、書類送検され、謹慎期間を送ったこともある。この時は刑事事件である。しかし、今回は今のところ刑事事件ではなく、モラルのレベルである。稼ぎ頭でもある紳助に詰め腹を切らせた吉本の狙いは何か。吉本は中田カウス事件などでイメージが悪い。そこで、企業としてもコンプライアンスを進め、イメージ刷新に取り組んでいた。紳助を切ることで、吉本の組織とイメージを守ったというのが、真相だろう。ま、紳助にすれば、蓄財は万全だろうし、政治家への転身の道もあるし、芸能界とヤクザの関係を本に書く手もある。紳助、頑張れよ!
▲今年2月に刊行された『島田紳助100の言葉』(ヨシモトブックス)の中では自身の引退についても言及。「現に私が引退しても、誰も困りません。急に辞めるから困るだけで一年後に辞めると言ったら何も困りません」と述べていたが、半年後にまさか現実になるとは…。