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5回「いつまで聞こえないふりができる?」

第65回「いつまで聞こえないふりができる?」

2025.03.13

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Text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)

大企業の搾取システムが問題ならば、なぜ動物への搾取システムには目を向けないのか?

 政府の政策や戦争、パレスチナでの虐殺行為、原発事故による放射能汚染、人種やジェンダーによる差別。世界にはあまりにも多くの矛盾が渦巻いている。俺の周囲には、バンド関係の仲間や友人、そうでない人々も含め、こうした社会の歪みに憤りを感じている者が多い。
 実際に行動を起こす者も少なくない。能登半島の震災支援ボランティア、東日本大震災の被災者支援、さまざまなデモへの参加、保護猫活動、障がい者支援。「何かしなければ」と思い、行動に移す人たちがいる。彼らは、社会的弱者や虐げられている存在、確実に助けを必要としながらも公的支援の届かない者たちの苦しみを理解し、自分のことのように感じられる人たちだと思う。
 戦争や震災によって家族や友人を失った人々の悲しみ、殺されゆく者たちの肉体的・精神的な苦痛、出身や見た目、ジェンダーの違いによって存在そのものを否定される理不尽な差別や暴力。そして、人間に捨てられたペットや、被災地で飼い主を亡くし行き場を失った動物たち。「もし自分がその立場だったら」そう考えるからこそ、彼らは黙っていられないのだろう。
 彼らの優しさと強さには、心から敬意を抱く。俺自身も何かできることはないかと考える日々が続く。しかし、どれほど他者の痛みを理解し行動する人々であっても、その思いを馳せる範囲は「人間と一部の愛玩動物」に限られることが多い。
 なぜだろう? なぜ、人間とペットは「守るべき存在」なのに、牛や豚、鶏、魚は「食べてもいい存在」なのか?
 この違いは、幼い頃から刷り込まれた価値観によるものなのか、それとも自らの欲望には抗えないという人間の本能なのか。
 「もし自分がその立場だったら」と考え、社会の矛盾に憤ることができるのなら、その「共感のライン」はどこまで引き延ばすことができるのだろう。突き詰めて考えれば考えるほど、自らの行為の矛盾が見えてくる。しかし、それを直視するのは苦痛を伴う。だからこそ、人は「感謝の気持ち」という美しい言葉を用いて、自らの選択を正当化しようとするのかもしれない。
 本当は気づいているのに、「だって仕方がないだろう」と諦める。そんなふうに、自分を納得させることで、何も変えずに生きていくことを選んでしまうのだろうか。
 
 「植物も生命だ」という反論。この議論は何度も繰り返される。しかし、命を奪うという行為の意味を、本当に同じ基準で語ることができるのだろうか?
 例えば、テレビで木が伐採される映像を見ても何も感じない人が多い。しかし、もし動物の屠殺現場が映し出されたら、多くの人は不快感や違和感を覚えるはずだ。その違いはどこから来るのか? 本能的に、私たちは「命の違い」を感じ取っているのではないだろうか?
 人はペットの苦しみには共感できるのに、牛や豚の苦しみには無関心でいられる。それはなぜなのか?
 実際には、俺たちが日々当たり前に口にするもの、身につけるもの、使うものの多くが動物由来だ。革の靴やバッグ、ウールのセーター、動物実験を経た化粧品。これらはすべて、動物たちの命と引き換えに生み出されたものだ。
 普段気にせずに買い物をしているだけなのに、実は搾取の構造の一部になっている。これに本当に気づいたとき、人はショックを受けながらも戸惑い、どう受け止めればいいのかわからなくなるかもしれない。もしくは、自分の選択を正当化するために無意識のうちに理由を探してしまうこともあるだろう。
 だからこそ、「感謝していただく」という言葉が、自分が加担している現実を直視することの苦しさを和らげるための、一つの手段になっているのではないだろうか。
 
 搾取という構造は、資本主義社会の根幹に組み込まれている。
 「構造改革」という名目で、大企業や政治家たちはメディアを使い、社会のシステムを自分たちの都合のいいように作り変えてきた。その結果、日本では非正規雇用が当たり前になり、多くの人々が低賃金のまま苦しい生活を強いられている。
 人々はこの矛盾に気づき、搾取に怒り、社会の変革を求める。格差社会が広がる現状を嘆き、「大企業の横暴を許すな」と訴え、「政治を変えなければ未来はない」と声を上げる。しかし、その怒りを向けるべき「搾取」は、本当にそこだけなのだろうか?
 俺たちは、政治家や企業が「欲望のために民衆を苦しめている」と批判する。しかし、同じ構造のもとで、人間は日々、動物を搾取している。
 工場畜産、毛皮産業、動物実験。そのすべては、「より安く、より便利に、より贅沢に」という人間の欲望によって支えられている。
 もし、大企業の搾取システムが問題だというのなら、なぜ動物への搾取システムには目を向けないのか?
 このダブルスタンダードが続く限り、本当に社会が変わる現実が来るのだろうか?
 動物への共感を広げることが、社会全体の搾取構造を変える第一歩になるのではないだろうか?
 すべての人にこの現実を知ってほしい。
 だが、まずは俺と同じ思いを抱き、共に歩んできた仲間たちへ、俺が信じ、敬愛する心優しき強き者たちへ。
 俺たちの理解と行動が、この世界を変える最初の一歩になると信じている。
 この現実を前にして、何もしないままでいられるのか? それとも、声を上げるのか。
 不当な殺戮が続く限り、俺たちの戦いは終わらない。
 解放するのは、あなたと私だ。

DROPDEAD『Unjustified Murder(不当な殺戮)』

アメリカだけでも6秒ごとに1匹の動物が殺されている
科学的実験の名の下に
人類がこれまで目にしたことのないような大虐殺が
今まさに目の前で行なわれている
それを止めるのは、あなたと私の責任だ
それを変えるのは、あなたと私の責任だ
それを……解放するのは、あなたと私だ!
動物実験 — それは科学的詐欺
搾取 — あまりにも長く続いてきた
不当な殺戮 — それは組織的な虐殺
解放 — それが目指すべき終着点
 
Chat GPTで翻訳しました。
 
DROPDEAD『Unjustified Murder』
In the United States alone
An animal is killed
Every six seconds
In the name of scientific experimentation
A holocaust the likes of man has never known before
Is taking place right before our very eyes
It's up to you and I to put a stop to it
It's up to you and I to make a change
It's up to you and I to ... Liberate!
Vivisection --- It's scientific fraud
Exploitation --- gone on too long
Unjustified murder --- It's systematic slaughter
Liberation --- a means to an end
 

◉DROPDEAD(ドロップデッド)はアメリカのロードアイランド州プロビデンス出身のポリティカル・ハードコア・バンド。1991年結成。メンバー全員がヴィーガンまたはベジタリアンであり、政治問題、動物の権利の問題等を楽曲を通じて訴え続ける。「Unjustified Murder」は、1993年にリリースされたファースト・アルバム『DROPDEAD』(落とす死)に収録。
 
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。
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