Text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)
東京で12月に紅葉? 地球温暖化抑制のためにも「肉税」の導入が必要ではないだろうか?
あっという間に2024年も12月を迎え、今年も終わろうとしている。今年最後のコラムなので、2024年に何が起きていたかを調べていた。その中に2024年の世界の平均気温が過去最も高くなる可能性が99.8%になるという記事を見つけた。【参考記事▷https://weathernews.jp/s/topics/202410/260085/】
この記事によると、日本でも平均気温は9月時点で過去最高を上回っていて、今年の気温が過去最高になる可能性がほぼ確実になっているという。
この原稿を書いている12月頭現在でも、20度に手が届くかという気温で、東京都心ではようやく紅葉が見られるようになった。
「JAPAN TIMES」という海外へ日本を紹介しているようなサイトでも「日本は記録上最も暖かい秋を目撃する」と題した記事を発表している。
【参考記事|英語のため要翻訳▷https://www.japantimes.co.jp/news/2024/12/03/japan/japan-warmest-autumn/?utm_medium=social&utm_source=twitter#Echobox=1733213228-2】
12月で紅葉? 20度近い気温? 日本の気候である四季の中でも「秋」がほぼなくなってしまったのか、通常「冬」である12月になってようやく「秋」が訪れたのか、「冬」の期間が短くなるのかは定かではないが、冬用の上着を着ていても電車の中や屋内では暑く感じられ、中には上着を手に持っている人もたくさん見かける。外国人観光客だと、まだTシャツ短パンで街を徘徊していたりもする。はっきり言っておかしいと俺は感じている。
地球の気温が上昇していくとどうなるか。こちらの記事に詳しくあるが【https://www.jiji.com/jc/v8?id=202311ssamoc2】、北極圏の氷が溶けた場合、地球の気候をコントロールする海水の循環機能(AMOC)が停止する可能性もあるという。
こうした気候変動の大きな要因はCO2の排出であるが、一番の原因は火力発電や石油エネルギーによる発電だ。
発電によるCO2の削減を行なうためには原発や自然エネルギーへの転換が必須とされるが、2011年3月11に起きた東日本大震災による福島原発事故を知る日本に住む人間には、到底原発を容認することはできない。自然エネルギーへのシフトが一番ではあるが、まだ時間がかかってしまうのが実情だ。
そうなると、温暖化の大きな原因である畜産による温室効果ガスの排出を抑制するのが我々のできる一番簡単で効果的な方法だ。
このような話をこのコラムではずっと伝えているが、そう簡単に肉食をやめられない人が多いのはわかる。かと言ってそれを責めても頑なになり、余計反発して悪循環になってしまうだろう。
そこで面白い研究ノートを見つけた。神奈川大学の学術機関リポジトリに経済学部教授・山口拓実氏が2022年に発表した「肉税または食肉環境をめぐる諸事情についての一考察」というものだ。
【参考記事|ここのPDF資料▷https://kanagawa-u.repo.nii.ac.jp/records/14647】
「肉税」という響きにはパンクスとして税金というものへの抵抗はあるが、消費税のように誰も彼もから奪い取り、使い道がめちゃくちゃなものよりも良いと思えてしまった。
このレポートによると「肉税」は、タバコや酒にかける税金「悪行税」と同じもので、砂糖やキャンディー、麻薬、ソフトドリンク、ファーストフード、コーヒー、賭博やポルノなどにも悪行税を課す国があるという。
地球温暖化の原因であるメタンの排出が多い畜産業であるため「肉税」を導入すれば食肉消費量を抑えられるというもので、肉税導入によるメリットとデメリットが考察された、面白く素晴らしいレポートなのでぜひ読んでみてほしい。
「肉税」の導入によるメリットとしては、温室効果ガスの削減、人々の健康増進、動物福祉、などが詳しく考察されている。
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)により関税が引き下げられ、日本の畜産業には大きなダメージがある。「肉税」を導入すれば安価な海外産の肉に課税され、課税率としては日本産よりも大きくなるので価格差が減り、日本の畜産農家のためにも悪くはないという考察もある。
肉食者にとって一番重要な部分であると思うデメリットとしては、肉税の導入で「安価な肉のほうが高級な肉よりも価格上昇の割合が大きくなる」という部分だ。低所得者に不利になるというもので、わかりやすく言えば牛丼などの安い肉食が高くなってしまうというものだ。
もう一つは、伝統的な田舎の景観がなくなってしまうというものだが、これはイギリスの原風景である牧草地帯のことであり、日本の原風景といえば山間に水田があるような田舎の風景になるので違いがある。しかし水田によるメタンガス排出量も地球温暖化の原因の一つなので、その辺りの考察も納得できるものがある。
こうした点からさまざまな考察を行なっているのだが、海外、主に欧米と日本では異なる事情により、日本では牛や羊のメタンガスを多く排出する反芻動物への「肉税」導入をするべきだとしている。
俺のような動物の権利を訴えるものとしては、「肉税」を課すならば全ての肉に課すべきだと思うが、アニマルウェルフェアの考えに賛同する方や現状肉食である人たちにとって、畜産による地球温暖化の抑制のためには、段階的に肉食をやめる方法のひとつとして「肉税」を考えてみるのは良いと思える。自らの欲望の権利のみを主張する方々には理解不能かもしれないが、そんな人々のためにこそ「肉税」が必要ではないだろうか。
欧米から目の敵にされてきた「捕鯨」や、CO2排出の大きな原因である火力発電に頼っている日本が「肉食を犠牲にして脱炭素、CO2排出制限に取り組んでいる」と、欧米に対するメッセージを発信でき、肉食のやめられない欧米に対しても有効だという考察もこのレポートには記されている。
そもそも日本では、肉食文化はなかった。古くは西暦675年、天武天皇4年に発せられた詔勅に「牛・馬・犬・猿・鶏の宍(シシ=肉)を食べてはいけない。それ以外は禁止しない。もし犯すことがあれば、罪を問う」【https://nihonsinwa.com/page/2299.html】と記されていたり、豊臣秀吉がイエズス会宣教師に対して「汝らは何ゆえに馬や牛を食べるのか。それは道理に反することだ」と言ったとされている。
江戸幕府五代目将軍の徳川綱吉による「生類憐れみの令」(一般民衆が活きた魚鳥を殺して食べることや獣類の食肉を禁じた)による肉食制限政策が有名だが、「薬食い」という病気療養のために獣肉を食べたり「桜肉」「牡丹鍋」というように、隠語を使って隠れて肉を食べる習慣はあったが、明治5年に肉食禁止令が解禁されるまでは基本的に日本は肉食ではなかった。
こうした歴史的背景から見ても、日本は欧米よりも肉食の抑制が比較的容易であり、そのため「肉税」を導入すべきだと結論づけている。
こういう言い方は勝手かもしれないが「肉税」であれば、タバコや酒を嗜まない人間がタバコや酒の税金を払わないように、肉を食べなければ税金を払う必要はない。いくら肉食が一般的で多数といえども、地球環境を破壊している原因であればやめざるを得ないのは理解してもらわなければならない。
そのうえ現状肉食者ばかりの日本であれば、かなりの税収も見込めるだろう。その税収により「肉税」による負担を強いられる畜産業者への補償や転職のための補助金などにも使えそうなので、大好きな肉を食べるためにみんながいつも言う「畜産農家のことを考えろ」問題も、現状より解決できる部分が多いのではないかと思える。
そのほかにも政府が使い込んだ年金の補填や、消費税がほとんど使われていない福祉や社会保障などにも使えるかもしれない。そこに使うのは反論があるかもしれないが、足らない分の補填は必要だろう。ちゃんとした税金の使い方ができる政府であればだが。
英国の国民食糧戦略【https://www.j-milk.jp/report/international/h4ogb40000007vy1.html】での発表では「自然を維持するための土地を確保する効果的な方法の一つは動物性タンパク質を減らすことだ」「私たちの食習慣が環境を破壊している。そしてそれが私たちの食の安全を脅かしている。私たちの食糧供給に次に起こる大きな衝撃は、異常気象や壊滅的な収穫の失敗という形で、ほぼ確実に気候変動によって引き起こされるだろう」とある。
「肉税」の導入でもしない限り、肉をやめない人間だらけなのは変わらず、地球温暖化は加速していくばかりだ。でもそんな税金なんか払いたくはないだろう。ならば地球温暖化を止めるために、一番簡単で今日からできる効果的な方法である畜産動物の利用、肉食や動物性製品の使用を減らすべきだ。そうでもしないと地球が終わってしまう危機が、目の前まで迫っているんだ。わからないのか? 感じないのか? 東京で12月に紅葉だぞ?
2023年、東京の8月の平均気温は34.3℃だったという。50年後、今の子どもたちが生きている間にも、この気温が「普通の暑さ」になってしまい、2023年のような「いつもよりも暑い夏」であれば、平均気温で40℃になるという可能性まで指摘されている。少しは想像してみないか? 子どもたちの未来を、地球の未来を。
今回は「肉税」という極端な話をしたが、実際は国民の大反対で導入は難しいだろう。しかし「肉税」の導入で一番効果が見込めるのは「この世の中から殺される恐怖と苦痛を感じるものが減る」という事実と「地球温暖化の抑制」だ。
他のもので充分満たされる快楽と欲望じゃないか。動物を殺す言い訳を探すために、時間を無駄にするな。生き物が生命を育める環境が壊れる寸前だぞ。動物も植物も含め、俺たちはみんな犠牲者だということを忘れるな。犠牲者が犠牲者を生み、地球を破壊して自分の首を絞めるなんてあまりにもおかしいと思わないか?
もうそれは、すでに戦争と何も変わらない。
RUDIMENTARY PENI『Pig in a Blanket』(毛布の中の豚)
私は動物たちについて語る
彼らがどう苦しみ、どう死ぬか
あなたは罪の意識を隠そうとする
宥(なだ)めるような微笑みで
あなたは決して責任を取ろうとしない
この殺人的な残酷さに
無駄に積み上げられた血まみれの死体
良心に見せようとしない
なぜこんなことをするのか
引きちぎられた肉体を
この苦しみを貪欲に煽るために
貪欲を煽るためにもたらされているのか?
動物を殺すだけでは満足せず
何百万人もの人間を殺している
死んでいく人々の数が増えていく
第三世界の地獄で
何百万人もの人々が死に続けている
貪欲な屠殺場に閉じ込められ
何百万人もの人々が死んでいる
必要以上に奪うことによって
この死に正義はない
幻想もない
動物殺人を隠すために使う伝統は
薄っぺらな変装にすぎない
*DeepL.com(無料版)で翻訳しました。
RUDIMENTARY PENI『Pig in a Blanket』
I tell you about the animals-
How they suffer how they die
You try to hide your guilty doubt
From me with an appeasing smile
You never want responsibility
For this murderous cruelty
The wasteful piles of blood-soaked bodies
You won't let your conscience see
Ask yourself what makes you want this
Torn ripped flesh so desperately
Are you worthy of having this suffering
Brought about to fuel your greed?
Not satisfied with killing animals
You're killing millions of people as well
As the numbers increase of those dying-
In your man made third world hell
Millions dying all the time
Locked in your abattoir of greed
Whilst you destroy them and yourself
By taking much more than you need
There is no justice in this death
No illusion I'll let you hide behind
The tradition you use to hide animal murder is
Nothing but a thin disguise
◉RUDIMENTARY PENI(ルーディメンタリー・ぺニ、ルーディメンタリー・ペナイ)は1980年結成、ニック・ブリンコ率いる英国を代表するグレイテスト・アナーコパンクバンド。病的なほどひねくれまくった中にも、天才的な感性が鋭く研ぎ澄まされたダークサイキック・アナーコパンクサウンドが特徴。「Pig in a Blanket」は1983年にCrassレコーズ傘下のCorpus Christiからリリースした1stアルバム『Death Church』に収録。
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。