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8回「あなたは何を知っていた? 何を気にしていた?」

第58回「あなたは何を知っていた? 何を気にしていた?」

2024.08.13

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Text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)

生き物に死を押し付け、地球に破壊を押し付けているのは誰なのか?

 2024年8月現在、世間では戦争行為のために参加できないロシアがあるのに、パレスチナで虐殺行為を行なうイスラエルは参加する偽りの平和の祭典で盛りあがって(?)いるらしい。
 内容までは読んでいないので実際どんな記事なのかはわからないが、金メダルがどうだとか、判定がどうだとか、勝手にネットニュースにあがってくる。
 そんな欺瞞に満ちた偽りの平和の祭典が行なわれているフランスに住んでいる人物がいる。日本では「エコ・テロリスト」というレッテルを貼られている環保護団体「シー・シェパード」のリーダーであるポール・ワトソン氏だ。
 日本の調査捕鯨船の妨害活動に関与したとして、デンマーク自治領グリーンランドで身柄を拘束され、日本の海上保安庁がデンマーク当局に身柄の引き渡しを請求したと伝えられている。
 
 上記の記事は、日本でよく見られるシー・シェパードへの偏見を助長する記事だ。記事中にある(実はヤラセ)との記載だが、海がイルカの血で真っ赤に染まる風景は、和歌山県太地町だけではなく、デンマーク領フェロー諸島でも毎年行なわれており、ヤラセではない。こうしたマスコミの報道を鵜呑みにした人間が、特に日本にはかなりの数で存在する。
 
 そもそもシー・シェパードは「エコ・テロリスト」ではない。環境問題や人権問題の他にも様々な社会問題を「知ってしまった」ために、社会をより良くしようと日々奔走する人々である。
 ポール・ワトソン氏は、日本は自然崇拝に根差した文化があり、賢明な長期計画を立てられる国だと日本についても学んでおり、日本の未来を危惧してこうした発言もしている。
 「本当なら、日本人こそがシー・シェパードを一番支持してくれるはずなのです。失うものが最も大きいのは日本人なのですから。彼らは間もなく伝統的な食文化が深刻に脅かされる事実を目の当たりにするでしょう。文化の理解の問題ではなく、食材そのものが消えてしまうからです。海は人間の手で死に追いやられようとしています。海という唯一最大の生物の宝庫に未来がなければ、人間にも明日はないのです」(『ソトコト』2010年5月号より)
 
 そもそもポール・ワトソン氏は、アメリカの海上核実験に反対する団体に参加したのが最初の組織活動だ。
 団体の創設メンバーだったが、後に「グリーン・ピース」となるその団体とは意見が合わず、シー・シェパードを創設する。
 シー・シェパードは、海洋生物を保護する組織であり、海を破壊する「違法行為」である海洋保護区での密猟や流し綱漁、捕鯨などを阻止するための介入活動を行なう団体だ。
 彼らが行動を起こすのは「違法である」という確かな証拠がある場合に限られており、1982年に批准された「国連世界自然憲章」という国際法に基づく正当な権限だ。
 
 あたかも悪者で犯罪者であるようにマスコミには書かれているが、根本的に「生物に害を与えない」という理念に基づいているのがシー・シェパードの基本行動だ。
 しかし、キング牧師の言葉「感情のないものへの暴力は暴力ではない」という考え方に賛同しているため「違法行為」に使われる「道具」へは攻撃をする。船への衝突行為などはそれに当たるだろう。
 衝突行為とは別の攻撃に使うものは、腐ったバターのような酸による悪臭弾やペンキ弾など、ある種シャレが効いたものであり、すべての作戦は「人を傷つけない」ように考えられ、合法的な範囲で活動するように細心の注意を払っている。
 
 シー・シェパードは、今まで一度も裁判所による法的措置を受けてはいないが、今回、ポール・ワトソン氏の身柄が日本へ引き渡されてしまえば、初めての法的措置が行なわれてしまうかもしれない。
 しかし、フランスのマクロン大統領からは、日本へ身柄を引き渡さないようにとのデンマーク政府への働きかけもあり、2024年8月初旬現在ではどうなるかわからない状況だ。各国にあるシー・シェパードの支部も、様々な方法でポール・ワトソン氏の身柄拘束に対して抗議を行なっている。
 フランスでは各地でデモも行なわれているようだが、もし日本に身柄が引き渡され、裁判での法的措置などされてしまえば、今後海洋破壊活動に拍車がかかり、海は人間の欲望で破壊され放題だ。
 そうなってしまえば、ポール・ワトソン氏の言うように、周りを海に囲まれた日本は一番の被害を受けてしまうと言っても過言ではないだろう。
 海を守ることは、すなわち日本の国土や国民を守ることに繋がると理解できないだろうか。
 
 考えてみてほしいのは、先に「違法行為」を犯し、注意に耳を傾けず「違法行為」を継続したのは誰であるかという点だ。
 日本の南極調査捕鯨が「国際捕鯨取締条約に違反した商業捕鯨である」として、2010年にオーストラリアから国際司法裁判所に提訴されている。
 調査捕鯨と言い張っているようだが、調査でクジラを殺す必要性があるのだろうか。国際司法裁判所は2014年に「調査のためにはクジラを殺さなくてはならない」という日本の言い分を【日本が南極でクジラを「殺すことによって研究」するのは、科学的調査にあたらない】との判断を下し、日本政府に停止を求めた事実がある。
 他にもワシントン条約で国際取引が禁止されているナガスクジラの肉が、日本で売られている実態もあるようだ。一体どこからナガスクジラの肉を手に入れ、売っているのだろう。不思議だ。
 だからと言って、設備の破壊や捕鯨船などへの衝突による沈没など、シー・シェパードには過激な行為も多いので、それが正しいかと言えば正しくはないかもしれない。
 しかし、例えばどこかの商店や家などに、道具を持った何者かが侵入しているのを見つけてしまったとする。声をかけ「やめろ」と言ってもやめないので、犯罪者だと思いながらも傷つけないように、犯罪に使っている道具や乗ってきた車を破壊して、侵入者には悪臭のするものやペンキをかけて撃退をし、未然に犯罪を防いだとする。果たしてその行為が犯罪で悪だと言い切れるのだろうか。
 妨害行為自体に焦点を当てれば、確かに犯罪かもしれない。しかし、もともと犯罪が行なわれているのを知らずに、侵入者への妨害行為だけを取り上げ、犯罪で悪だと吊し上げるのは個人的に疑問が残る。
 
 日本では、聞く耳も持たず、自分たちだけが正しく、意見を押し付けると言われるシー・シェパードだが、本当に話し合いに応じず、聞く耳も持たず、自分たちだけが正しいと環境破壊行為に目を瞑り、真実を隠し、欲望を満たし、金儲けのために生き物を殺し、弱いものたちを蔑ろにして、命の尊厳を破壊しているのは誰なのか。生き物に死を押し付け、地球に破壊を押し付けているのは誰なのか。
 何も知らずにマスコミがつけたレッテルだけを信じ、本当に弱いものや環境のために人生を賭して戦う人々を犯罪者扱いし、本当の悪である犯罪行為を擁護して自分の首を絞めている事実に気づかないのは誰なのか。
 環境を破壊してまで欲望を満たす行為を正当化するために「エコ・テロリスト」という悪を仕立て上げ、まるで自分だけが正義だと言わんばかりの行動の、どこにシー・シェパードを非難できる要素があるのか甚だ不思議である。
 欲望のために真実の悪を誤魔化すマスコミ報道を鵜呑みにしていたら、実際の悪が見えず殺されていくだけだ。それは今の日本の政治報道と同じじゃないのか?
 
 シー・シェパードは、単に日本の捕鯨活動を妨害しているだけの団体ではない。エクアドル政府と協働しての世界遺産保護には一番力を入れ、ガラパゴスでナマコを守る活動をし、フカヒレ目当てのサメの乱獲を阻止し、重油流出などで汚染された海の洗浄や負傷した鳥や海洋生物の救済、天然記念物の密輸の監視や、その取引の実態を暴くなど、活動は多岐にわたっている。
 そうした活動の実態の一部すら知らずに「エコ・テロリスト」だと騒ぎ立て、日本の敵のように扱う。
 海に囲まれ海洋破壊で多大な影響を受ける日本という国の、一番の味方とも言える行動をしているのがシー・シェパードじゃないのか?
 少しでいいから、実態を知り、その上で自らの心に聞き、判断をしてもいいんじゃないか? シー・シェパードを知れば、マスコミで言われているような団体ではないとわかるはずだ。
 今回は日本ではほとんど伝えられることのない、シー・シェパードについて、知る範囲で書かせてもらった。
 まだまだ調べれば、事実はもっとわかるはずだ。文句を言っているあなたたちのためにでさえ、戦える勇気を持つ人々だと。
 
 クジラやイルカ、サメ、シャチなどの海洋哺乳動物の乱獲は、海の生態系へ甚大な被害を及ぼす事実も知ってほしい。海の生態系が破壊されたらどうなるか? ポール・ワトソン氏の言葉を、よく考えてみてくれないだろうか?
 この前行った神奈川県葉山の海水浴場では、まだ7月の終わりだというのに水温は高く、クラゲまで出ている始末だ。海の温度は既におかしくなっている。
 海は守らなくてはならない。地球に生きるヒトという生物として、俺はシー・シェパードを断固として支持する。
 地球のために、海のために、ヒトを含めた地球上の生物全てのために、ポール・ワトソン氏の一刻も早い釈放と無罪を心から願う。

CRASS『ANARCHY'S JUST ANOTHER WORD』(アナーキーは粗野な言葉に過ぎない)

妥協の産物
あなたは何を知っていましたか? 何を気にしていたのか?
勇敢な前フリ、欺瞞に満ちた偽装
何を知っていた? 何を気にしていた?
嘘を見て見ぬふりをすることで、すべてを保とうとする
でも時々こうして一人になると、その価値があるのかどうか考えてしまう
 
笑顔で社交的
何を知っていた? 何を気にしていた?
終わりのない哲学
何を知っていた? 何を気にしていた?
表面的な合意、事実の表明、自分たちができることを証明しようとする。
でも時々、こうして一人でいると、誰がそれを見抜いてくれるのだろうと思う
 
駆け引きと犠牲
何を知っていた? 何を気にしていた?
安いトリック、安い装置
何を知っていた? 何を気にしていた?
ビジョンを持ちながら、視力を失い、果てしなく解決策を探し続ける。
でも時々、こうして一人になると、それがどれだけの機関なのか疑問に思う
 
何を知っていた? 何を気にしていた?
何を知っていた? 何を気にしていた?
何を知っていた? あなたは何を気にしていましたか?
あなたは何を知っていましたか? 何を気にしていた?
 
アナーキーは “10ポンドの余裕があるか?”の別名になった。
何を知っていた? 何を気にしていた?
「俺はO.K.だ、外の連中はクソくらえだ」という別の言い方だ
何を知っていた? 何を気にしていた?
恐怖をごまかすための、もうひとつの形だけの癇癪だ。
何を知っていた? 何を気にしていた?
別の施設、別の十字架を背負わされた
何を知っていた? 何を気にしていた?
何を知っていた? 何を気にしていたの?
あなたは何を知っていましたか?何を気にしてた?
"[?]"
何を知っていた? 何を気にしてた?
 
*翻訳はDeepLにて。間違いがあればご指摘いただけると助かります。
 
CRASS『ANARCHY'S JUST ANOTHER WORD』
Making the compromises
What did you know? What did you care?
Brave fronts, deceitful disguises
What did you know? What did you care?
Turning a blind eye to the lies just to keep it all together
But sometimes when I'm alone like this I wonder whether it's worth it
 
Smiling and socialising
What did you know? What did you care?
Endless philosophising
What did you know? What did you care?
Surface agreements, statements of fact, trying to prove we can do it
But sometimes when I'm alone like this I wonder just who can see through it
 
Bargains and sacrifices
What did you know? What did you care?
Cheap tricks, cheaper devices
What did you know? What did you care?
Holding the vision, but losing our sight, endlessly searching solution
But sometimes when I'm alone like this I wonder how much it's just institution
 
What did you know? What did you care?
What did you know? What did you care?
What did you know? What did you care?
What did you know? What did you care?
 
Anarchy's become another word for 'got 10p to spare?'
What did you know? What did you care?
Another way of saying 'I'm O.K., sod you out there'
What did you know? What did you care?
Another token tantrum to cover up the fear
What did you know? What did you care?
Another institution, another cross to bear
What did you know? What did you care?
What did you know? What did you care?
What did you know? What did you care?
"[?]"
What did you know? What did you care?
 
 
◉CRASSは1977年から1984年まで活動し、“Anarchy & Peace”をスローガンとしたイギリスのアナーコ・パンク・バンド。“ダイヤルハウス”と呼ばれる家で自給自足の集団生活を送り、自身のレコードレーベル“CRASS RECORDS”を立ち上げ、DIY精神の基礎を確立した。「ANARCHY'S JUST ANOTHER WORD」は1983年に発表された最後のオリジナル・アルバム『Yes Sir, I Will』に収録。
 
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。
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