Text by ISHIYA（FORWARD / DEATH SIDE）
未来を育むために現実に変化を起こせる可能性を持つのは、選挙よりも、政治家よりも、あなたなんだよ
このコラムが掲載される頃には既に結果が出ていると思うが、2024年7月7日に行なわれる東京都知事選挙の期日前投票へ行ってきた。
前回のコラムで、投票行為自体に疑問があると書いていたが、俺はまだ、投票を棄権するほどのアナーキストになれていない。
投票するにあたって今回はかなり冷めた感覚なのだが、それもそのはずで、小池百合子の信任投票的意味合いしかない選挙だからだ。
異論がある方はいるだろうが、簡単に言えば小池を信任しないのであれば蓮舫に投票するという簡潔なもので、蓮舫が嫌いであろうが、立憲民主党が嫌いであろうが、小池が嫌ならば蓮舫に投票するしか選択肢がない。俺は立憲民主党なんて全く信用していないし大嫌いだが、選択肢がひとつしかないので仕方なく蓮舫に投票した。
他の泡沫候補に投票する行為は、蓮舫の票割れを起こすため、小池への投票と同じだ。そして様々な泡沫候補が存在し、ポスター掲示板売買などのほかにも、あまりにもひどい選挙に成り下がっている。
こんなに投票したくない選挙も珍しいが、仕方なくやったという感が拭きれない最低の気分だ。
言い訳させてもらうのであれば今回の選挙は、日本で生まれ育ち、東京に住んでいても選挙権を持たない日本国籍のない人や、未成年の子どもたちのために投票したようなものだ。せっかく権利があるのだから行使したという単純なものであり、選挙結果にも政策にも期待していない。
今まで期待して裏切られてばかりだったので、最近特に「政治に期待するほど馬鹿らしい行為はない」と、心から思っている。
何度か色々なところで書いているとは思うのだが、個人的に「世の中を変えるのは政治や政治家ではない」と思っている。人々が変われば、政治なんて勝手に変わる。
大差のない変化しか起きていない現実は、政治家ではなく、この国に住み生きている人間たちの責任だ。
今の自民党政治で良いと思っている人以外は、生きていくための不都合ばかりの世界で、弱いものを蔑ろにし、生命の危機が迫っていようが何をしようが、現状を何とも思わずに、自分や家族、企業や金持ちの欲望を満たすために行なわれる政治が嫌で、変わって欲しくて投票に行くと思う。
しかし、まず自分の行為を省みて欲しい。
自分は搾取して監禁して殺して欲望を満たしているのに、政治家には止めろと言うのか？ 自分が変わりもしないのに、政治だけは変われなんて都合の良い話を、選挙という手段だけでまかり通させるつもりなのか？ それで世の中が本当に変わると思えるのか？
政治家と同じように自分の行為に言い訳ばかりしていたら、変化なんて未来永劫訪れるわけがないと思うのは、俺だけなのか？
「美味しい」という快楽のために搾取しているのに、他の搾取には止めろと言うのか？
自分は直接手を下さないとしても、事実として殺しているのを黙認しているのに、殺すなと言い平和を求めるのか？
欲望のために監禁して殺して、レイプされている生命があるのに、自分の行為は無視して他には止めろと言うのか？
男だから女だからと、性別の違いだけで殺される行為を黙認して快楽を得ながら、平等を唱えるのか？
言葉が喋れないから、見た目が違うから、ヒトという動物ではないからといった理由で、痛みや苦しみや悲しみを感じて、愛があるのを無視しておきながら、差別に反対するのか？
自分がやっているのに、止めろと反対して、無くなるとでも思うのか？
泥棒に「人のものを盗んではいけない」と言われても「何言ってんだこいつ？」ってならないか？ 政治に文句を言うなと言っているわけではない。あなたが動物たちにやっているのと同じことを、政治が俺たちにやっていないか？
自分の欲望のために殺して搾取しても当然だと思うなら、自民党政治のように生きていけばいいんじゃないかな。それでいいならね。
弱いものたちから声を奪い、自分のことしか考えない生き方は、今の世の中にお似合いかもしれない。ただ、そのまま歳をとって、そんなに遠くもない未来が訪れ、自分の首を締めていただけだと気付いた時には、手遅れかもしれないけどね。
日本に住む人たちも、虐殺されているパレスチナの人たちも、飢餓に苦しむアフリカの子どもたちも、監禁されて殺されるだけの動物たちも悲鳴をあげているよ。俺たちの欲望のままに生きてきた結果、温暖化で地球は悲鳴をあげているよ。
自分の悲鳴だけ聞いて欲しいなんて都合の良い話は、ちょっと無理だと思わないか？
今からでも遅くはない。現実を変えたいなら、何を変えればいいのか考えてみようよ。
ひとりでは変えられないかもしれない。でも数多くの人がいれば変わる。その部分は投票と同じかもしれない。人の変化によって起きる行動は、環境や現実、状況に対する投票行為と同じじゃないのか？
同じような行為であれば、俺は政治家より自分や友人たち、この世界に生きる心ある人たちを信じる。
自分の気持ちひとつで、救われる生命があるんだよ。ひとつでも多くの生命が救われる世の中が良いと思わないか？
結果はすぐに見えないと思うが、今すぐ自分にできることで、世の中は変えられる。
最悪、良くてもあっちの女王がこっちの女王に変わるだけの、どうしようもない選挙だが、どんな結果であろうと未来を育むために、現実に変化を起こせる可能性を持つのは、選挙よりも、政治家よりも、あなたなんだよ。それだけは忘れないで欲しい。
まだ梅雨で七夕前なのに、東京はすでに35℃の猛暑だぞ？ おかしいと思わないほど、おかしくなっちまったか？ いつまでも当たり前が続くなんて思うなよ。
SEX PISTOLS『GOD SAVE THE QUEEN』（女王様万歳）
女王様 万歳！
ファシストの政治は
お前を低脳にしちまった
有効な水素爆弾さ
女王様 万歳！
女王は人間じゃない
お先真っ暗だぜ
夢見る英国は
口に出さずに欲しいものは奪っちまえ
口に出さずに必要なものは奪っちまえ
お先真っ暗、未来なんて無いぜ
真っ暗なんだぜ
女王様 万歳！
本気でそう思ってる
愛しの俺達の女王様
神が味方してくれるぜ
女王様 万歳！
旅行者なんて金に見えるぜ
俺達の首領は
見かけとは全然違うんだ
神が歴史に手を貸した
お前のイカれたパレードに手を貸した
あぁ 神よ御慈悲を
すべての罪は罰せられたのです
未来を失っちまえば
何処にも罪なんて無いだろ
俺たちはゴミ箱に飾られた花
俺達は機械みたいな人間の毒
俺達こそが未来、お前の未来さ
女王様 万歳
本気でそう思ってるぜ
お先真っ暗だぜ
夢見る英国は
お前はお先真っ暗、未来なんて無い
俺もお先真っ暗、未來なんて無い
お前はお先真っ暗、未来なんて無い
ノー・フューチャーだぜ
＊翻訳は東芝EMI / Virginから1993年に発売された日本盤CDの歌詞から引用
『GOD SAVE THE QUEEN』
God save the Queen
The fascist regime
It made you a moron
Potential H-bomb
God save the Queen
She ain't no human being
There is no future
In England's dreaming
Don't be told what you want to want to
And don't be told what you want to need
There's no future, no future
No future for you
God save the Queen
We mean it, man
We love our Queen
God saves
God save the Queen
'Cause tourists are money
And our figurehead
Is not what she seems
Oh, God save history
God save your mad parade
Oh, Lord, God have mercy
All crimes are paid
When there's no future, how can there be sin?
We're the flowers in the dustbin
We're the poison in your human machine
We're the future, your future
God save the Queen
We mean it, man
We love our Queen
God saves
God save the Queen
We mean it, man
And there is no future
In England's dreaming
No future
No future
No future for you
No future
No future
No future for me
No future
No future
No future for you
No future
No future for you
◉SEX PISTOLS（セックス・ピストルズ）は1970年代後半にロンドンで勃興した、パンク／ニュー・ウェイヴ・ムーヴメントを代表する象徴的バンド。自国の王室、政府、大手企業、ロックシーンを攻撃した歌詞等、反体制派のギミックが特徴。また、活動期間は短命ながら、後世のミュージック・シーンやファッション界にも多大な影響を与えた。「GOD SAVE THE QUEEN」は1977年に発表された2ndシングルであり、唯一のオリジナル・アルバム『勝手にしやがれ!!』にも収録。
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。
