団地団が団地に対する偏愛をリレー形式で掲載していくコラムです。
団地団とは:大山顕、佐藤大、速水健朗、今井哲也、久保寺健彦の団地好きによるプロジェクト
今月の団員:久保寺健彦
二〇歳まで暮らした町は団地だらけで、自然にとぼしかった。その反動か小学生のころ、昆虫のたぐいが大好きだった。とりわけあこがれたのがゲンゴロウ、タガメ、タイコウチなどの水生昆虫で、万が一の出会いを求めてうろつき回ったあげく、公園の池と防火水槽で友だちが、川でぼくが、水に落ちたりした。子どもは体のわりに頭が大きいため、水面をのぞきこむとコロッといきやすいのだ。結局、ゲンゴロウたちとは無縁だったけれど、出会えた生きものも何種類かいる。今回のコラムではそれらの中から、特に印象深いものをランキング形式でご紹介する。
第五位/ザリガニ
のちに暗渠化した都営団地の脇のドブ川や、工事現場の重機の掘りあとにできた、水たまりで捕獲。一度、上級生たちがたき火をして、焼いたのを食べさせてくれたことがある。けっこう乙な味だった。
第四位/ゴマダラカミキリ
団地の庭や公園で捕獲。飼育し、死んだあとは宝箱にしまいこんでいた。
第三位/タマムシ
なぜか生きているのを捕獲したことがない。公園や道端で死んでいるのを発見し、やはり宝箱にしまいこんでいた。ちなみにその宝箱には、側溝で見つけた謎の骨(おそらく、犬か猫の脊椎)なんかも入っていた。いま思うと不気味だ。
第二位/カブトムシかクワガタの幼虫
公団のそばの駐車場を掘り返し、偶然捕獲。後生大事に握りしめ、夕方まで友だちと遊んで手を開いたら、ぐったりして死んでいた。返す返すも惜しい。
第一位/コウガイビル
団地の庭で比較的よく遭遇する生きものとして、カナヘビがいた。下級生たちにその話をしたら、だれも見たことがないというので、連れ立ってさがしに出かけた。しかし、そういうときに限って見つからない。あきらめムードで団地をはなれ、むかいの喫茶店の植えこみに腰をおろしたとたん、目の端でなにか動いたので勇み立ち、ほーらこれがカナヘビとつかんだらおそろしく長い生きもので、悲鳴をあげて放り出した。ミミズやイモムシにしては長すぎるし、ヘビにしては細すぎる。長いあいだ正体不明だったが、後年それがコウガイビルらしいとわかった。陸生プラナリアの仲間で、長いものは一メートルを越えるという。見た目がかなりグロテスクなので、画像検索はおすすめしない。
▲水生昆虫を求め、友だちが落ちた公園の池。
今回調べたところ、付属施設の生物園にゲンゴロウがいるらしい。灯台もと暗し。
団地団〜ベランダから見渡す映画論〜
著者:大山顕、佐藤大、速水健朗
定価:1,995円(税込)
判型:A5判
ページ数:208
発行元:キネマ旬報社
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