団地団が団地に対する偏愛をリレー形式で掲載していくコラムです。
団地団とは:大山顕、佐藤大、速水健朗、今井哲也、久保寺健彦、山内マリコの団地好きによるプロジェクト
今月の団員:山内マリコ
2010年12月、新宿ロフトプラスワン。団地団の記念すべき第1回目、そのときわたしは、客席にいました。まだ作家デビューする前のことで、文学的ニート期のまっただ中。数ヶ月前に読んだ速水健朗さんの『ケータイ小説的。──“再ヤンキー化”時代の少女たち』がおもしろすぎてすっかりファンになり、トークイベントの情報をキャッチすると、新宿歌舞伎町にこわごわ足を運んだのでした。
その夜のことはいまでもよく憶えています。なにしろああいう形式のトークイベントに行くこと自体はじめてだったので、なにが起こるのかよくわかってなかったのです。チケットを取ってくれた彼氏と一緒に地下の階段に並んでいたら、出演者の知り合いらしき団地仲間(?)たちがわいわいやっていて、その様子を恨めしげに見ていた記憶があります。こういうイベント会場で友達を見つけて「あ〜久しぶりぃ〜!」と再会を喜び合う交友関係とは無縁のため、すぐに羨んでしまうんです。
かなり早く行っていたので、真ん中あたりのよく見える席に座りました。意外にも食べ物系が充実しているし、けっこう美味しいので、もりもり食べてビールを飲みました。一体これからなにがはじまるんだろう、みたいな気持ちでした。
その日のイベント内容はのちに単行本『団地団〜ベランダから見渡す映画論〜』に採録されていますが、ちょっと筆舌に尽くし難くおもしろく、脳裏にこびりついています。オープニングは総裁(大山顕さん)による団地鑑賞の基本からはじまり、佐藤大さんによる『耳をすませば』の、姉が投げた手紙を主人公が空中でキャッチする描写の壮絶さ(アニメでは空気を描くのがいちばん難しい)、そして速水さんによる『団地妻』がラストシーンで着ている白い服は死装束である等、知的好奇心がどんどん満たされて、イベント中はちょっとしたハイ状態でした。そのおもしろさを取りこぼさないように、せっせとノートまで取ってました。
それから3年後──。2013年10月、阿佐ヶ谷ロフトAの出演者席に、わたしは座っていました。まるでモーニング娘。のごっちん(後藤真希)にあこがれてオーディションを受け、自身もモー娘。の一員になった加護ちゃんのような気持ちでした。いまでは当然のようにしれっとした顔で座っていますが、よくよく考えると不思議です。「3年で人生は変わる」……これはワン・ダイレクションのドコモのCMでの名コピーで、ジェーン・スーさんはラジオでこの現象のことを「ワンダイ」と略してましたが、まさにわたしも2010年から2013年の間に、ワンダイしたのでした。
回を重ねるたびに、出演者とも、常連さんとも親しくなっていきました。イベント当日は控え室で、いろんな人と「あ〜久しぶりぃ〜!」と再会を喜び合います。友達と久しぶりに会えるのって、本当に嬉しいもんなんですね。そう、わたしも、こういう仲間が、ずっと欲しかったんです。
▲当連載はこれで終わりますが、団地団の活動はこれからもまだまだ続きます!
団地団〜ベランダから見渡す映画論〜
著者:大山顕、佐藤大、速水健朗
定価:1,995円(税込)
判型:A5判
ページ数:208
発行元:キネマ旬報社
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