団地団が団地に対する偏愛をリレー形式で掲載していくコラムです。
団地団とは:大山顕、佐藤大、速水健朗、今井哲也、久保寺健彦の団地好きによるプロジェクト
今月の団員:佐藤 大
突然ですが、どうやら長らく続いた連載が終わるとのことです。今まで団地をキーワードに写真家、ライター・編集者、漫画家、小説家、脚本家というメンバーが持ち回りでコラムを自由に書くという珍しい連載。書くのももちろんですが読むのも凄く楽しかったです。というわけで僕にとって最終回なので、あらためて団地団という存在について考えてみたいと思います。一言でいうと、僕にとって団地団は学生の頃から憧れだったバンドみたいな存在です。
そう。学生時代はバンドブームでした。でも僕は楽器ができないし、楽譜が読めない。その頃から音楽は聴くのが専門でした。だからこそバンドに憧れていました。音楽を奏でることの魅力もだけど、何よりバンドという特殊な関係性に憧れていました。家族でもなく友達でもなく、それぞれがそれぞれを必要とする関係というのは他にないものに見えました。同じ目標に向かいながら、馴れ合いとも違う、それぞれの距離感で自分のポジションに責任を持ち、一つの作品やライヴを創り上げる。そんなバンドの関係性に憧れました。
「どうも団地団です」そんな決まり文句でスタートするトークイベントというライヴ。事前の打ち合わせはナシ。大枠のテーマだけは決め、それぞれが考えたり感じたりしたことを話しながら、他のメンバーからのリアクションで自分では思いもしなかったところへ話題が流れていく。まるでセッションをしながら曲を完成させていくような感覚。もちろん、そこに集まってくれた人たちのリアクションも大きく関係していくライヴ感。最初、三人だったメンバーが続けていくうちに増えていき、当初、団地が出てくる映像作品などを中心に語っていたスタイルも段々と変化していき、今や団地という括りすらなくなっていったのに活動は続いている。その理由は、もはやメンバーとのトークという名のセッション、そのライヴ感が楽しいから、それだけ。
普段の仕事では基本的に自宅でPCに向かって何かしら文字を書いているか、会議で作品について話し合いをしている。そして、完成した作品が発売や放送される時には楽しむ人たちの姿を直接見ることはない。でも団地団としての活動で、いつもとは違う世界での表現があることをメンバーたちから知る。そんな場として大切なものになりました。
バンドの関係性に憧れるだけで団地で一人もんもんと過ごしていた学生だった僕が、団地から離れ数年、あらためて団地を語ることでバンドのような関係性を手に入れた不思議な巡り合わせに感謝しつつ、そんなこんなで連載は次回で終わりますが、団地団としてのバンド活動は続きますので、これからもよろしくお願いします。
普段、それぞれと会う機会は少ないのに、
集まると仲間意識を感じる不思議な関係です。
団地団〜ベランダから見渡す映画論〜
著者:大山顕、佐藤大、速水健朗
定価:1,995円(税込)
判型:A5判
ページ数:208
発行元:キネマ旬報社
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