団地団が団地に対する偏愛をリレー形式で掲載していくコラムです。
団地団とは:大山顕、佐藤大、速水健朗、今井哲也、久保寺健彦、山内マリコの団地好きによるプロジェクト
今月の団員:速水健朗
団地団が公式に認定する団地映画の最高峰は川島雄三『しとやかな獣』で決まりなんだけど、僕速水が個人的に考える団地映画の最高峰は、嵐が出演した堤幸彦監督の『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』だ。
舞台は、羽田へ向かう高速道路で右手に見える品川の八潮団地。ここで生まれ育った5人の男子高校生を嵐が演じている。彼らは団地から出た経験がほぼなくて、一緒に原宿におでかけするだけでも大冒険である。みな同じ団地育ちといっても、家庭環境や社会階層はバラバラ。松潤は、金持ちの多い街区在住のぼんぼんだし、櫻井君は地元の暴走族「鮫洲一家」の所属。高校卒業後は、皆が離ればなれになるであろうことを知りながらも仲良く遊び回っている。そして、卒業の日が迫ってきて……。
そう、これは日本版の『アメリカン・グラフィティ』なのだ。
アメグラは、アメリカ西海岸の小さな田舎町のお話。優等生のカートとスティーブは、東海岸の大学への進学が決まっている。そして、この町で過ごす最後の夜を、この町の若者が週末に必ずするように、友だちと一緒に夜中中ぐるぐるとクルマを乗り回して過ごす。スティーブは、離ればなれになる年下のガールフレンドと喧嘩をしてしまう。カートは、町で見かけた美女を追いかけるうちに、不良グループの仲間にさせられてしまう。彼らのヒーローで、街の若者のボスであるジョンは、自慢の黄色いフォードデュースクーペに乗るナイスガイ。でも彼は、自分が過去の栄光を引きずるダメなやつであることを自覚している。卒業した自分は、町を離れることができないブルーカラー労働者でしかない。
早朝に飛びだつ飛行機を見送るために皆が集まる小さな飛行場でのラストシーン。今後、交わることのないであろう別々の人生を生きる若者たちの別れの場面。ビーチ・ボーイズの『オール・サマー・ロング』がかかり、エンドロールが流れる。何度見てもここで涙が出てくる。
で、『ピカ☆ンチ』のラスト。進学を決意し受験会場に向かう相葉君を、族のヘッドの櫻井君がバイクで送る。そしてラストは、アメリカ西海岸に旅立つ二宮君を全員で見送る。アメグラで言えば、町の外れの小さな飛行場の場面だ。
そこには橋が架かっている。この橋の向こう岸には、見知らぬ世界。そして背後には、団地がそびえ立っている。ぜひ、アメグラを見てからこの作品を見てほしい。泣けるから。
ロフトチャンネルにて『団地団TV』を配信しています。
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