団地団が団地に対する偏愛をリレー形式で掲載していくコラムです。
団地団とは:大山顕、佐藤大、速水健朗、今井哲也、久保寺健彦、山内マリコの団地好きによるプロジェクト
今月の団員:大山 顕
団地フォトグラファーの大山です。本コラムでは需要に関係なく「死ぬまでに一度は見ておくべき素敵な団地」を紹介しています。今回は東京を離れて大阪の団地作品を推したい。魅惑の千島団地です。
先日、団地になんかまったく興味のないまっとうな女性が(ぼくにもそういう友人が一人ぐらいはいるのです)、横浜のとある団地を見て「ガンダムみたい!」って言ったんですよ。って、いま書いてて気づいたんですが、団地見てこういうこと言う人がほんとうに「まっとうな女性」かどうか疑問ですね、これ。
ともあれこの比喩はすごく良い。「なんかわかるー」って人けっこう多いんじゃないかな。単に「メカっぽい」というのとも「機械っぽい」というのともちがう、マッシブさとある種の繊細さを兼ね備えた造形物に対する比喩として「ガンダムっぽい」というのはちょう正解なわけです。
実はモダン建築のデザインを表現する言葉として「船っぽい」という常套句がありまして。現にかのコルビュジエもデザインに船モチーフを使っていたりします。おそらく船、それも大きな船には「マスプロダクト的な面もありつつ、一点モノの面もある」「乗り物だけどある種建築でもある」っていう両義的な性質があって、そこにぐっとくるんだと思います。
で、ガンダムも船っぽいよなあ、とかねがね思っていて、そういう意味でモダン建築の代表である団地を見てガンダムを連想することは当然と言えましょう。
さて、ぼくが知っている中でもっとも「ガンダムっぽい」団地が写真の、大阪・千島団地だ。どうですか、この造形! もちろん注目は屋上にある2つの頭だ。ガンダムというより正確に言えばホワイトベースだ。そういえばあれはまさに「船」だ。
以前フランスはリヨンでコルビュジエの名作団地「ユニテ・ダビタシオン」を見たのだが(写真)、そのとき「千島団地だ!」って思った。こうやって見比べると似てるような、似てないような、だがどちらもガンダムっぽいのは間違いないと思う。
団地は複数の棟がまとめて建つからこそ「団」地なわけで、だからいちばん問題になるのは「どういったレイアウトか」であって、個々のデザインそれ自体は敷地の影響を受けづらい。一方、「団」じゃないいわゆる「マンション」はデザインがもろに敷地の影響を受ける。どこまで建てていいか、どの高さまで高くしていいか、という法律と経済が形となって表れる。
そういう意味で言うと、空間の制約を受けない、大海原をゆく大型船や宇宙空間をゆくホワイトベースに近いのは、マンションじゃなくてまさに団地なのだと思う。よく見てるなー、彼女。やっぱり「まっとう」じゃない気もしてきたけど。
団地団〜ベランダから見渡す映画論〜
著者:大山顕、佐藤大、速水健朗
定価:1,995円(税込)
判型:A5判
ページ数:208
発行元:キネマ旬報社
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