団地団が団地に対する偏愛をリレー形式で掲載していくコラムです。
団地団とは:大山顕、佐藤大、速水健朗、今井哲也の団地好きによるプロジェクト
今月の団員:佐藤大
狭山台団地のハガキ
入居者全員に知人に引っ越しを伝えるために配られたと思われる狭山台団地の絵葉書。出来たてほやほやで誇らしげな姿。一番奥にある一街区に住んでいました。単行本でも紹介したのですが白黒ページだったのでカラーでは初公開!!
団地団リレーコラムの四回目は、佐藤大が担当です。初回は漫画家の今井さん、前回は写真家の大山さんと続いての私。普段は、テレビアニメやゲームなどで脚本を担当している脚本家だったりします。団地団とは、映画やアニメなどの映像や小説、漫画などの作品に登場する団地を様々な角度から語り倒すという不思議な集団です。「ぼくらのよあけ」という阿佐ヶ谷住宅という伝説の団地を舞台に素敵なマンガを描いた今井さんや、写真家として「団地の見究」など何冊も団地の写真集を出版している大山さんに比べ、脚本を生業にしていながら実は今までの私は作品の中で団地を舞台にしたことはありませんでした。SFアニメやゲームが仕事の中心なので自然に団地を出すのは難しいですが、方法はあるはず。そんな私が、団地団のメンバーとなっている理由は幼稚園から高校を卒業して独立するまで団地で育ったから。今でも実家は、育ったところとは別ですが団地。そんなわけで私にとって団地というのは、学生時代の記憶そのものであり、今では故郷でもある人生と寄り添う存在なのです。
そんな私が育った団地は、埼玉県の狭山市にある狭山台団地。一街区の十号棟にある三階の四号室でした。団地的にいえば1-10-304となります。この数字の並びは、きっと子供の頃、団地の中で迷子にならないよう親から呪文のように覚え込まされたおかげで、今でも何故か忘れられない魔法の数字。大山さんと初めてあった時、自分はこうした団地あるあるを語ると同時に団地ファンという視点で語られた大山さんの言葉で気がついたことも多かった。例えば私が自然と惹かれてきた要素、ガンダムより量産型のザクが好きだったり、テクノ音楽のように無機質で機能的な行為が整然と並んでいること、同じモノが出来るだけいっぱいあることでテンションがあがったりする、こうした全てが団地と繋がってる。この感覚、きっと学生時代の全てを団地と共に過ごしたからに違いない。
そう。最後に、こうした私の感覚をまるごと一つの作品に閉じ込めた様な素敵な団地映画が公開中です。『みなさん、さようなら』という作品。団地団の単行本でも紹介している同名小説を原作にした作品で、団地を一歩も出ないというルールを自分に課した男の子の青春成長物語です。団地団推薦の映画。団地が舞台というと懐かしさか、ほの暗い不気味さで描かれることが多いなか、学生時代の記憶そのもので故郷でもある人生と寄り添う団地を、映像でみたのは初めてでした。団地という存在に興味を持つきっかけとしてもよかったら。
狭山台団地の写真
1-10-304の前で父親と自転車にのる団地生活時代の私。背後には、まだ完成したばかりで芝生も植樹も途中の団地が懐かしい。今ではここも道路も整備され、タイルが敷き詰められ緑に包まれている。