竹安堅一のギターの切れが半端ない。リズムが踊る、響く、音って物理的には空気の振動なだけのはずなのに、身体の底まで沁みて心を揺らがす音がある。そしてシチュエーションはそれを増幅させる。今日は揺らぐ。もう何回も何回もライブ観てきたのに一味違う感情で心が揺らぐ。
今日はライブレポート係なんだけど久し振りだ。初心にかえって頑張って書くぞ! ただし普通は時間軸どおりに書くだろうけど、普通のライブレポートっていうわけにはいきませんよ。俺がスマイリー原島イベントのことを書くんだもの。
原島さんって何だろう? 不思議なんだよ。空気を造るし、淀んだ空気を入れ替えてくれるんだ。落ち込んでるとき迷ってるときには突然現れて救ってくれるし、元気なアイディアには抜群の後押しをしてくれる。
38年前インクスティック芝浦で右も左も分からないとき、なんなら36年前に大事故して大怪我したとき、32年前CLUB Queができたとき、23年前に映画作ったときも去年までとにかくたくさん俺にも皆にも勇気くれたんです。
だけどね~勝手に入ってきて、勝手に飲んで、勝手に寝るからね。座敷わらしかい!
今日はそんな原島さん、あっちの世界に行って初めての誕生日祭ウィーク@CLUB Que。
ただそうね~あっちの世界だから、直接話ができないのが困りものなんだけどね。
さあさあライブレポートです。今ちょうどセッションが終わったとこなんで、いきなりセッションのことからいきます。
演奏はフラワーカンパニーズ。歌いだしは鈴木圭介。エルヴィス・コステロの曲なんだけど、歌詞は水戸華之介さんの書き下ろし。
「死んでる場合じゃない……」という言葉が刺さる。そうなんだよ、「何で死どん?」
POLYSICSのハヤシヒロユキとScoobie Doのコヤマシュウが続く。曲は何度も聴いたことあるのに新鮮さが半端ないの。リハーサルで聴いたときにはコステロを想像できていなかったから。
歌詞は続く。「遊ぼう別世界…… 心は燃える火事のようだよ…… 破裂しそうな笑顔…… 逢いたい…… 天国とハーモニー…… 墓から飛び出せ…… 天国とハーモニー♬」
火事か~あったなあ……分かる人にだけ分かる恐ろしくパーソナルなワード。
CLUB Que黎明期から支えてきてくれた思いも格別な3バンドなんだけど、別視点で見たらこの3バンドがCLUB Queのステージに並ぶって凄いこと。同窓会のようでもあるし、不思議な感情がいくつも交差している。特に出演を指定したわけでもないし、ツアーや忙しい合間のスケジュールを縫って偶然この日にたどり着いた。イベントは6DAYSだから、どの日に嵌るかかなり偶然という感じ。偶然にこそ意味があるとスマイリーが言ってたな。
凄い。
別途練習があったわけでもないし、今日会って、今日合わせて、今日やる曲。
なんだけど、まるで何十年も同じ釜の飯を食ってきた相棒の会話。
会話と言えば3人のMCのやり取りも、そこらの漫才のそれよりよっぽど面白いね。もう一つ別のイベントができそうなくらい面白いのです。
これも原島さんのDNAなのか、良く喋る。それ以前のロックバンドは「喋っちゃいかんやろう」みたいな空気があった中で、原島さんは垣根を超えて「面白い」という、もう一つのファクターをロックに落としてきた。よく怒ってもいたけどね。喜怒哀楽激しい。
フラカンの演奏中にお喋りが過ぎるので、圭介君にヒョウリしてきて「ぶぉーい! はよーせ~! はよ曲やれ~」って。
原島さんが旅立ったのは今年の1月6日なんだけど、その前の12月になった頃からCLUB Queに来る人たちの中で原島さんの知り合いがいたら写真に撮ってLINEで送ってたんだ。まあ当然だけど返事なく。でも2日以内には既読つくかな~みたいな。
それがね、12月30日に突然返事が来て、そこから何往復か会話をしたの。ちょっと「文面がおよよ~」って感じはあったんだけど、いやこれが嬉しいの。頑張って病床から一所懸命LINEしてくれてるの。
そして「今からそっち行く、体不自由なれど、行けば何とか」というコメント。
めちゃくちゃ嬉しくて……という感情と同時に何かを感じたよ。
それで半泣きで「来て、来て、ぜひ来て、待ってま~す」って返事したのね。
でもね、それきり返事はなかったよ。
それでも原島さんはああいう人だから、正月が明けるまで絶対に頑張るんだろうなって思って……1月6日になり、そこで旅立っていきました。
2月にお別れ会をやったときは、関係者みなさん忙しいだろうから251とCLUB Queと2回に分けてね。凄い数の方たちが来てくれました。愛されてる~。おい~なんで先に行くーーー!!
リハーサルが終わった頃、CLUB Queの中はとてもあったかい空気だった。たくさんの機材が溢れかえるかと思いきや、どのバンドも言わずともがなこの場所とイベントの趣旨を理解してくれて、かなりネイキッドスタイル。ほとんど持ち込み機材はない。そこで「CLUB Queの機材使ってどう?」みたいな話になるんだけど、「いいよね」って言われてちょっと嬉しい俺。
1994年の開店からしばらくは変なプライドでマーシャルを置かない店として有名だったCLUB Queですが、その後置くようになって、今日使ってるのを見て置いて良かったって思う俺。
置かなかった理由と、置くようになった理由は別で語ってるので、どっかで読んでください。
それでもちょっとシーケンサーなど機材の多いPOLYSICSがトップとなるわけですね。
今日は白のツナギで右胸に「P」。その衣装とバックドロップのスマイリー原島の笑顔のシンクロがとってもいい感じ。
会場を見ると元メンバーのスガイ君も来てる~、懐かしい。お客さんメチャ手が挙がります。
ステーキと寿司とフレンチフルコースが同時に並ぶような今日。中には原島さんのことを知らずに来ているお客さんもいるけど「いいんだよ~」、このシュチェーションを楽しんでいただければみんな幸せで、それは原島さんにとってもとっても嬉しいこと。
凄い、POLYSICS凄い。
いつもはワンマンでしか見てないから短期戦でバーッとやる感じ。炸裂してる。
そういえば始まる前には原島さんが歌ってたときの映像が流れてた。そのあと元スマイリーズの秋山佳之が前説をして、ちょっと原島さんの説明して。熊本出身だからということで震災の募金を募ったり。
そうそう、これは関わっている人もあんまり知らないけど、80年代アクシデンツってバンドで博多で活動していてレコードデビューしてたんだよ。俺としては高校生の頃、隣街の博多のシーンは凄すぎて憧れ。そこでアクシデンツやモダンドールズ、アンジー。凄いことが起きてたんだ。その事実は水戸さんとUP-BEATの広石さんと語ったQueTube(YouTube)があるので見てもらえると嬉しいな。
原島さんはフジロックのMCとしても有名で、いろんなバンドのステージ登場前に呼び込みをしてきたわけですが、その肉声が残っていて、今日はそれを使って各バンドを呼び込むの。まるでそこにいるみたいだったよ。ただねガラガラ声がすぎて、いまいち聞き取れないのよ。それがいいんだけどね。「ネクストバンド、POLYSICS!」って言ってるはずなんだけど、「ネガギゴバー、ポデゼブウバス!」みたいな。なんだか涙が出る。おかしいだろう。
Hey! Everybody! 続いてScoobie Do。SEに乗せてコヤマがハープを吐く! 箱ギターの独特の音色が鳴り、「行こうぜ下北沢!」ボルテージが上がる。アメリカから帰ってきたばかりのモビーが叩く。もうこのグルーヴは4人のというより、一つの生命体の音になってる。コヤマシュウの得意の煽り、追従を許さない活舌、興奮するのよ。
メンバー紹介のくだりで更に震えた~。
「スマイリー原島を愛し~、スマイリー原島に愛されたファンキー4!」
「ドラムスはファンキーマエストロ、オカモト“MOBY”タクヤ!」
「ベース! ファンタジスタ、ナガイケジョー!」
「ギターはリーダー、マツキタイジロウ!」
「ボーカル、スウィートソウルシンガー、コヤマシュウ!」
俺たちが、Scoobie Do! ここでしかできないやつ演るぞ! 最後に……!
そうやって始まった「夕焼けのメロディ」、これは掛け値なしに名曲だと思う。
タイトルとリズムとメロディ、もちろん歌詞。これらがリンクして脳内夕焼けを作ってくれる。みんな家にまで脳内パッケージで持って帰って、きっとお風呂の中で開放して歌っちゃうの。
さあ、トリはフラワーカンパニーズ。
バンドをこういう活字で表現するとリズムが、メロディが、音色がってなるわけだけど、全部が高次元。それに加えて百戦錬磨の説得力。それ以上に子どもの頃から共に過ごした4人の奏でる音は、もう宇宙規模なんだよね。説明なんかできない。でもさあ、庶民派な感じでしょう。威圧とか大スターとか、そういうのとは真逆の「皆おいでー!」みたいな。絵に描くと瓦屋根をバックに舗装されてない道を4人の子どもが虫取りみたいな感じ! え……失礼? 大好きすぎちゃって音楽的なレポートになんないね。
楽屋には原島さんの遺品のサングラスやネクタイや帽子がどうぞご自由にって感じで置いてあって、竹安君はネクタイもらって、圭介君が被って出てきた帽子はまさに原島さんのなんだけど、めちゃ似合っていてそのまま違和感なし。そこでケイ君が「そのオーバーオールも原島さんのだよね」とグレートマエカワに冗談振ると場内大爆笑、「原島さんがオーバーオール着るイメージないわ!」と返すグレート。
楽しい。楽しい時間が流れる。
カバー曲で「モナ」。これは原曲ボ・ディドリーだけど、明らかにルースターズのバージョン。昔々に原島さんにルースターズのトリビュート盤に誘われそうになってたんだけど、そのときは惜しくも漏れちゃったらしいけど、実は37年前にバンド組んで初めてスタジオ入って演ったのがこの曲だったとか。皆しっかり縁を持ってる。
今日はスマイリーズコネクション。
ライブが終わってもイベントが終わるわけではない。打ち上げまで含んでスマイリーズコネクションが完成するの。俺もとっとと事務仕事終わらせて突入しつつ、同窓会のようなアットホームな空気にまみれて、音楽以上に時間を共有する仲間たちと至福の時間を過ごします。
必要以上の欲がないって美しい。我がないって幸せ。自分のこと少しほっといて誰かのためにやるってことがエンターテイメント。カッコイイ。それが次を作り出す。
みなさん疲れもあるだろうし、明日もあるだろうし、でも終始笑顔で原島さんの思い出やCLUB Queでの昔話を語ったりしつつ……そうこうしてるとウエノコウジやいろんな人たちが遊びに来て。
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが1991年初頭、大事故あけで仕事復帰したばかりの俺の前に現れたんだけど、CLUB Queができる頃、つまり1994年に原島さんに紹介してスマイリーパワーを得て、その後日本のロックを塗り替えた。ありがとう、誇りだよー。原島さんあっちの世界できっとチバやアベとまたワイワイやってんでしょう、みたいな話して。
いい時間を過ごしているうちに朝5時。ご苦労様です。
明日もあるからね。そろそろ開きましょうか……。
このあと続くイベントも楽しみだね。
みんな大好き“スマイリー原島”。
病気がちなお母さんの面倒を見るために熊本に帰ったあとも、皆が九州ツアーに行くと必ず顔を出してラジオに誘って。遠くても全然そんな感じがしなくて、ずっと『下北沢音楽祭』のプロデュースしてたから、俺も毎月一回は会ってたんで、遠い気はしなかった。
だから突然いなくなっちゃった感じ。ん~でもいるっちゃいる。
冒頭で書いた現世での最後のやり取りだけど、「今から行くから……」ってのがLINEで来てね。それで最後だったんだけど、実はその翌朝、つまり大晦日の朝に枕もとでガサっと音がして……「来たな……」って思ったよ。
おいおい、CLUB Queじゃないのか、家にかい!?
Text:二位徳裕(下北沢CLUB Que)/ Photo:光吉孝浩














