一つのバンドやグループを長く続ける秘訣とは
──お三方ともそれぞれ長きにわたって同じバンド、もしくはグループを続けていますが、一つの集団の中で長く活動し続ける上で何か秘訣みたいなものはありますか。
アツシ:僕はバンドがもはや生活の一部になっているので、秘訣も何も、それが当たり前のことっていうか。
──たとえばメンバーに当たりの強いことはなるべく言わないとか、心がけていることはありませんか。
アツシ:特にないかなあ……。長く続けるためには売れてるバンドに媚を売って対バンするのが一番だけど(笑)。その作戦で40年以上、生き延びているので。
村田:勉強になります(笑)。
アツシ:さっきも話したけど、前のメンバーが一斉に辞めて集客が落ちたときは自分なりにアンテナを広げた。ニューロティカが好きだっていう若手バンドのライブへ行って、打ち上げでバカやって、その席で「3カ月後のライブに出てくださいよ」と言われたりして。当時、POTSHOTやGELUGUGU、ロリータ18号や氣志團には助けられたね。
──実際、ニューロティカはそこから右肩上がりに動員を伸ばして人気が再燃しましたよね。村田さんはグループを長く続ける秘訣がありますか。メロン記念日を10年間休むことなく続けたのは凄く大変なことだったと思うのですが。
村田:メロンはメンバーそれぞれに良いところや持ち味があって、そこを互いに認め合って、全員揃って一人の人格みたいな感じで続けられたのが良かったと思います。たとえば斉藤の仕切りを褒められたら自分のことのように嬉しいし、柴田の歌が褒められたら嬉しいし、じゃあ私はそのぶんMCで頑張るぞ! みたいなところがありました。そもそも私は歌割りをあまりもらえなかったんです(笑)。今の私なら頑張って歌を何とかしようとしたと思うんですけど、当時の私は「歌を振られないならダンスやトークで頑張ろう」と考えていました。お休みの日は本を読んで知識を増やすことに頑張ってみたり。あと、いろいろと物議を醸したのですが、ライブのMCでダンボールの人形を使った劇を始めるという突飛なことをしてみたり。そこにかまけて歌割りがさらに遠のいてしまったんですけど(笑)。
──今は3人だから歌割りが増えましたよね。
村田:そうですね。今回は今回で全うするつもりですが、まぁしぃのパートに関しては、今回、彼女の分まで頑張らないとと思っています。
──4人それぞれが互いをリスペクトし続けたことでメロン記念日が成立していた。とても良い話ですね。
村田:一つの歌を4人で分けて唄うので、自分が目立つ部分で唄いたいという思いは当然のようにあったと思うんです。でもそこでライバル視するのではなく、同じ仲間として捉えていたのが良かったんじゃないですかね。グループとして成長していく上で競争心は多少なりとも必要なのかもしれませんが、メロンは互いを仲間だと思い合っていたからこそ10年間続けられたのではないかと思います。
──互いを仲間として支え合っていたのは、太陽とシスコムーンも同じだったのでは?
稲葉:メロンと一緒の部分はありますね。やっぱりグループでしか表現できないものがあるので。一人だけではできない表現を今は3人でやってますけど、それは今の3人だからこそできることであって、太陽とシスコムーンはこの3人にしかできないものなんです。それと、各自のバックボーンの違いがリスペクトに繋がるというか。小湊は3歳から舞台に立って民謡の世界で活躍してきたし、信田は体操選手としてソウルオリンピックに出場した実力派で、人としてそれぞれ尊敬できる部分がある。私は私でこれまでのキャリアがある。その3人が一つになったときにしか出せないパワーがあるし、年を重ねた今だからこそできる、そういう3人ならではの表現を楽しんでいます。
──お三方ともソロとして活躍したことはないですよね。村田さんでいえば「ランチ」というソロ楽曲はあってもソロデビューしたことはなかったし、あっちゃんはソロでやろうなんて発想は微塵もないじゃないですか。
アツシ:100%ないです(きっぱり)。僕はギターも弾けないし、何の楽器もできないし、バンドでしか自分の表現はできない。僕はARBというバンドが好きで、そのバンドの在り方やメンバーの生き様が格好良くて、いまだに自分にはバンドしかないと思ってやり続けてます。自分のことをミュージシャンだと思ったことは一度もないし、強いて言うならバンドマンだね。
村田:私は器用な人間ではないので、一人で唄い切るよりも、やっぱりどこかで余白が欲しいんです。グループなら誰かが唄っているときに「なるほど、そういう表現もあるのか」と学べる部分があっていいなと思います。
稲葉:グループを長く続けていると一人で活動することに不安を感じる人はけっこういると思う。私はシスコムーン以外にOPD時代のメンバー(古谷文乃)と(s)pirit colorという2人組のユニットをやっていますが、グループに慣れちゃうと一人になるのが不安になることがあります。たとえばライブを一人でやってみるとか、それもきっと続けていけば慣れるんだとは思いますけど勇気が要りますね。一人でやってる舞台やMCなど、そういう仕事は別として。
村田:去年、あっちゃんの還暦ライブに出演させていただいたときは“村田めぐみ(ex.メロン記念日)”というクレジットで、4人分の思いを背負ってステージに立ったのでかなり気合いを入れて臨んだんです。私がもしそこでヘマをしたら他の3人に申し訳が立たないですし。だけどMCでカタルさんに話を振られると、「あ、これは私が答えるのか」とか思ったり(笑)。いつも斉藤リーダーが先に答えてくれるので、やっぱり一人は勝手が違うなと感じました。