「山から来たようなバンドだね」
──で、次は「MY GENERATION」。作詞作曲がSUZZYさん。
伊藤:わりと早くにSUZZYが持ってきて。
順堂:SUZZYは作り込んで完成のイメージが出来上がってから曲を持ってくるんだけど、コレは歌詞も変わったし。
三隅:途中で「シンセにしてほしい」って言ってきたり。
順堂:SUZZYには珍しくスタジオで作っていった感じだよね。
──あ、SUZZYさんが来ました! 「MY GENERATION」について。歌詞も音もどんどん変わっていったそうで。
SUZZY(Electric Guitar / Acoustic Guitar / Chhorus):遅れてすみません。「MY GENERATION」はスマホばかり見てたりネットに頼ってばかりいる現代人に対して、アンチテーゼみたいな歌詞を書いてたんですけど、自分もスマホをかなり見てるなと(笑)。嘘は良くないって歌詞を変えて。サウンドもファミコンっぽい感じがしたから朋ちゃんに「シンセを入れてほしい、チープな感じで」って言って。
──そして「ガゼル」と「山河へ」。この2曲はスケールがありますね。
伊藤:ガゼルって動物なんですけど、僕の中でガゼルっていうのは「ガンダーラ」で。理想郷を目指すっていうゴダイゴの曲があるじゃないですか。ガンダーラを勝手にガゼルって名前にして。あるのかないのかわからないけど、そこに向かって行く人々の話を書いた歌詞。
──冒険小説のようだけど、人間を野生のガゼルに例えて厳しい世の中を生き抜く歌って感じました。「山河へ」もスケール感があって。コレは「死」や「命」を歌ってますよね?
伊藤:「山河へ」は作詞作曲SUZZYで。SUZZYと俺の共通の知り合いが亡くなって。その人に向けて書いたんだよね?
SUZZY:そうです。わりと近しい人で、最後は植物状態で。Aメロはお見舞いに行ったときや、その人の思い出とか。サビではそこから世界を広げていって。
──「山河へ」はサウンドは孤高で雄大、歌詞は死がテーマ。死って誰にでも訪れるものだし、太古の昔から常にある。そういう普遍性があって、同時に死は一人一人違う個人的なものっていう。マクロとミクロが同時に感じられる曲だなと。
SUZZY:五木ひろしに「山河」って曲があるんですよ。作曲は堀内孝雄、作詞が小椋佳。大好きな曲なんです。それには勝てないけど頑張ってみようって作りました。「山河」は胡弓とか使って中国のイメージなんですけど、僕はアンデスの山ってイメージで(笑)。
伊藤:山に行きがち。困ったときは山なんです(笑)。
──あ、山で思い出した。かなり昔、新宿LOFTでのイベントでオールディックのライブを井上さんと押田さんと見て。トンズもライブだったのかな。押田さんが「山から来たようなバンドだね」って笑って、井上さんは「そうだね。いいバンドだね」って感じのことを言って。たぶん2人は初めてオールディックを見たときだったと思う。
伊藤:それ、きっと『the WILD ROVER』ですよ。トンズが再結成したときじゃないかな。そうか、あのとき、見てくれてたんですね。今日の『the WILD ROVER』でやりますよ、「白銀を越えて」。
──楽しみです。最後は「ビューティフルデイズ」。去年の暮れに放送されたNHKの『ドキュメント20min.「ふたりの、終われない夜」 伊藤雄和と西村賢太』でこの曲の弾き語りをやっていました。番組では歌詞を書いてる伊藤さんも出てきますが、その頃に作った曲?
伊藤:番組に向けて仕上げたんですけど、西村さんが亡くなってからずっと考えてはいたんです。
──アルバムにはバンド編成で録音。伊藤さん自身、救われたんじゃないかな。バンドによって楽しい歌になってるし。
伊藤:そうですね。一人だと悲しい歌になっちゃいますもんね。一人でやると悲しいってなるのはわかってたんで。バンドでやると悲しくないっていうのもわかってた。あの、NHKの番組はかなりシリアスで、歌詞を書いてるとこも撮られて。全然歌詞が書けなくて。
──撮影されてたから?
伊藤:いや、あの曲の歌詞がなかなか書けなかった。
──ああ、本当のことだからね。本当の自分の気持ちを書かなきゃない。
伊藤:そうですね。嘘は書けないですからね。