変化しても「らしさ」を貫いた16TONSからの影響
──「今夜はきっと満月」は鹿児島さん作曲。
鹿児島:歌詞は発注しました(笑)。
伊藤:今回は発注が多いな(笑)。
鹿児島:「ちょっとエッチな感じにしてください」って発注しました(笑)。
──オールディックらしく(笑)。
伊藤:もうエッチは飽きたしいいかなって思ってたところに発注が来て。エッチな歌詞ならバンバン書けるんで。普段はエッチじゃないですよ、職業エッチです(笑)。
──サウンドもオールディックらしく多国籍というか無国籍というか。昔の歌謡曲っぽくもある。
鹿児島:NAOTOさんがやってるDJユニットがあって……。
伊藤:デザイナーのNAOTORADAMS。ずっとアートワークやTシャツのデザインやってくれていて、今作のアートワークも彼。
鹿児島:NAOTOさんのDJユニット、Hoykraeng splashesがタイ音楽のミックスCDを作っていて。それが面白くてタイっぽくしてみました。タイっぽいファンクで歌モノにしたかったんです。
──6曲目がインタビューの最初にちょっと話した朋ちゃん作曲の「隣人」。例えるなら、70年代のミュージシャンが新しいことやるぞ! って作ったキテレツな曲ってイメージ。懐かしさがあるけど新しい。凄い好きです。
三隅:70年代を意識しました。
──ああ、70年代を知らない世代が70年代を作る、だから面白いものが出来たんですね。
三隅:70年代の音楽、好きなんです。意識したのは70年代と、ヤバイ曲、キテレツな曲にしたいってことです(笑)。オールディックならカッコ良くやってくれると思ったので。
──ただ、歌詞が……(笑)。歌詞は素朴でロマンチックなラブソングかと思いきや。コレは覗きの歌?
伊藤:ストーカー的な。朋ちゃんからの発注ですよ。「なんか勘違いしてる人を書いてほしい」って。
──最初のコーラスもポップでいいなぁって思ったけど、何度か出てくるそのコーラスがどんどん恐ろしくなり……(笑)。
三隅:コーラスは最初に小出しにして最後にも出てきて、伏線回収って感じで。コーラスの部分はメロディをいくつか作ったけど決まらなくて。SUZZYさんが「あれでいいんじゃない?」って言ってくれたり、伊藤さんがメロディつけてくれたとこもあったり。部分部分で皆さんから考えを頂いて、繋がって、一つになったときに完成したっていう感じがしました。メッチャいい曲になったって感激してます。
──歌詞も別にヤバイ単語が出てくるわけじゃない。ピュアなラブソングに思える。だから凄いよ、伊藤さんの歌詞。そして次が朋ちゃんがボーカルの「今日じゃなきゃダメ」。
伊藤:昔から女性メンバーが歌う曲を1曲入れてたんですけど、その曲を最初に考えるんです。今回も朋ちゃんが歌う曲を最初に考えた。そうすると自分の中でアルバム全体がわかりやすくなるんです。
──女性の気持ちになったり?
伊藤:それは無理なんでイメージですね。こんな感じかなっていう。
──「今日じゃなきゃダメ」って歌う部分が何カ所か出てくるけど、少しずつニュアンスが変わって。声に表情があります。
三隅:ありがとうございます。メッチャいい曲だな~って思って歌いました。
──次の8曲目は16TONSのカバー、「白銀を越えて」。16TONSはどんな存在でした?
伊藤:ヘヴィなことをポップな感じでやるっていうとこ、かなり影響を受けてます。ハードコアはメッセージ性があるものが多いけど、そうじゃなくて歌に乗せてメッセージを伝えるっていうことをやりたいって思ったのは、トンズの影響が大きかったです。
──独自の詩的感覚でメッセージがありましたもんね。
伊藤:そうそう。あと変わっていきましたよね、後期になっていくにつれてサウンドがどんどん変化して。そこも凄い好き。変化してもトンズだなって感じがするじゃないですか、素晴らしいバンドでしたね。
──オールディックもそうですね。変化を恐れず。
伊藤:影響受けてます。あと井上さんってちょっと危ない感じがあるじゃないですか、そこもスゲェ好き。昆虫採集とかしてたり。たまらないですよね、コロナの時期、俺、YouTubeやってて、そこで川釣りに誘ったんですよ。知識が全然敵いませんでした。そのときから会ってなかったのかな。もう会えなくなって。
──昔、井上さんにインタビューしたときに昆虫の話になって。昆虫って太古からいるじゃないですか。でもルックスは宇宙から飛んできたような未来的なルックス。だから好きなんだって言ってたな。
伊藤:ああ、井上さんも宇宙から来たっぽい(笑)。井上さん、車に自分で作った珈琲を置いてるんですけど、凄い甘いんですよ。凄い甘い珈琲を飲んでるの(笑)。
──昆虫っぽい(笑)。トンズのカバーは絶対やろうと?
伊藤:レコーディングしてるときだったんです、訃報を聞いたのは。
順堂:で、やろうかって。収録するには許可が必要なんだけど、とにかくやろう、録ろうって。で、許可をもらって。
──わりと原曲に忠実ですよね。忠実で誠実。
伊藤:そうですね。