美しさっていうのは表面的なことじゃない
──「ビューティフルデイズ」のMV、俳優の渋川清彦さんの後ろ姿が西村さんにソックリで。ドキッとしました。
伊藤:似てますよね。あのシャツは俺が買ったんですよ。西村さんが着てたのと同じようなやつ探して。800円で古着屋で(笑)。ズボンはキーくん(渋川清彦)の私物なんですよ。靴と上着は、「俺が買ってくる」ってキーくんが。バッチリのやつを買ってきた。
──撮影は西村さんのお墓がある能登。渋川さんが災害に遭った街を歩くシーンも。いろんな人がいろんな思いを重ねるでしょうね。
伊藤:お墓は西村さんが生前に建ててたんですよ、西村さんが敬愛する明治から大正時代の小説家の藤澤清造さんのお墓と一緒に。
──伊藤さんも敬愛する西村さんが亡くなって、ある意味、西村さんの気持ちに近づいた、気持ちがわかる、みたいな感覚は?
伊藤:西村さんがどんな気持ちかはわからないけど……。悲しかったですよ。喧嘩別れのままでしたから。でも時間が解決するなって思ってたんですけど、それが叶わないことになって。叶わないんだって思ったら……、悲しかったですね。
──MVで最後に渋川さんがタクシーに乗るじゃないですか。乗らないでー、って思いました(笑)。
伊藤:思いますよね。タクシーの中で亡くなったから。
──西村さんってキレイゴトなどないリアルな作品を書き続けていた。だからMVもリアルにすることが西村さんへの追悼。豊田利晃監督はそんなふうに思ったのかなって。
伊藤:どうでしょうね。豊田監督はね、あの人はとにかく過酷な環境を作りたがる人なんです(笑)。
──伊藤さんも雪の中で歌ってるもんね。しかもかなり薄着で。アレは過酷(笑)。そろそろライブの時間になりますね。今作、風通しの良さを感じました。やりたいことやろう、出てきたものをやろうっていう。メンバーそれぞれの個性が発揮されてバラエティあるし、オールディックらしさが広がっている。伊藤さんの歌詞はストレートで素直でリアル。いろんな人生があって、そこには生と死がある。そんな人生を歩き続けるぞーって、切なくもどこか爽快な感じがしました。『Beautiful Days』にはどういう気持ちが込められてます?
伊藤:西村さんとはいろんなことがあったし、喧嘩別れのままになってしまった。それもいい思い出として考えなきゃ進めない。そういう想いもあり。いろんなことがあった、それが続いて今があるんじゃないかっていう。ひっくるめて良かったんだっていう。西村賢太の小説は、自分自身のみっともないとこばかりを書いているじゃないですか。それも含めて美しさに変えていこうかなと、俺が。美しさっていうのは表面的なことじゃないですからね。いろんな日々を生きて、これから前向きに生きていこうって思いを、『Beautiful Days』というタイトルに込めました。前向きで、素直で、謙虚で、人の悪口も言わない……(笑)。
──そこで止めてくれー。それ以上言うとウソくさくなるから(笑)。
伊藤:……規則正しい日々で、朝早く起きてご飯をしっかり食べて(笑)。
──あとジャケ写。NYパンクの伝説のバンド、テレビジョンの『マーキー・ムーン』のオマージュ?
伊藤:好きなアルバムだし『マーキー・ムーン』みたいにいつか撮ってほしいなって思ってました。だからオマージュっていうより、ああいう写真がいいなってだけで。で、撮ってもらいました。
ハラダ“たたみ”ケイコ(カメラマン):撮りました。私もそこまで『マーキー・ムーン』を意識せずに、被写体がカッコイイんだから、そのままを撮ればいいって。
──うんうん。自然体でありつつどこか凄みがあってカッコイイです。『マーキー・ムーン』を知らなくても写真としてカッコイイ。
伊藤:カッコ良く撮ってくれるから、構えずそのままでいこうって。
──わかりました! 最後に一言。
順堂:ツアーが楽しみです。まだ今の時点ではアルバムの曲、ライブでやってないんですよ。だから自分らでも凄い楽しみ。大変だろうけど(笑)。