OLEDICKFOGGY、『残夜の汀線 -ZANYA NO TEISEN-』から2年振り、8枚目となるフルアルバム『Beautiful Days』をリリース!
5人編成となったオールディック、5人がそれぞれ作曲したナンバーに、SUZZYは2曲で作詞作曲を担当。それぞれの個性が発揮されバラエティに溢れ、OLEDICKFOGGYらしさがグンと広がっている。伊藤雄和の手によるメロディと歌詞は、聴き手を翻弄していくような物語性があるが、特筆すべきは歌詞がストレートで素直、だからこそリアリティが増しているところ。「白銀を越えて」は今年の初め、空へ、いや宇宙へと旅立った井上ただし氏のバンド、16TONSのカバー。アルバムタイトルでもある「ビューティフルデイズ」はとことんリアルを書き続け亡くなった無頼の小説家、西村賢太氏を想い書き上げた曲。「死」と向き合うのは自分と向き合うことだったのだろう。
生と死が存在するのが人生で、悲しさや切なさや悔しさなんかを抱えつつ、人生を歩き続ける! っていう爽快さがあるアルバム、まさに『Beautiful Days』。
インタビューは新宿LOFTでの『St.Patrick's Day THE WILD ROVER 2025』の当日、出番前に行なった。『St.Patrick's Day THE WILD ROVER』にオールディックは何度も出演しているし、16TONSとの出会いのライブでもあった。(Interview:遠藤妙子 / Photo:ハラダ"たたみ"ケイコ)
歌詞はストレートで素直に、いつも心にディスチャージを
──今作はメンバー全員が曲を作って。鹿児島さんは2曲、SUZZYさんは作詞作曲を2曲という。SUZZYさんはインタビューに遅れるそうですが。全員が曲を作るというのはどういう流れで?
伊藤雄和(Vocal / Mandolin):勝手に作ってきたんですよ(笑)。鹿児島君は1曲かと思ったら2曲作ってきましたからね、勝手に(笑)。
鹿児島大資(Electric Bass / Phin / Chorus):勝手に作りました(笑)。
大川順堂(Drum / Chorus):5人になって初めてのアルバムだし、5人でやっていこうって思いもあって。「曲もみんなで書いたらいいんじゃない?」ってヒロ君(伊藤)から言ってきたんだしね。
伊藤:「書いたらいいんじゃない?」とは言ったけど、「書いてきて」とは言ってないけどね(笑)。
順堂:メンバーが書いてきたからヒロ君の曲はいらなくなったってこともあったよね。コード進行がかぶってて出せないのもあったでしょ。
伊藤:SUZZYが作った「山河へ」と俺が作った曲のコード進行が一緒で、俺は引っ込めて(笑)。
三隅朋子(Accordion / Keyboard / Vocal / Chorus):かぶってたんですか!? 考えてることは一緒なんですね(笑)。
伊藤:……。
──沈黙なのは嬉しいからですね(笑)。みんなが能動的に曲を作ってくる、いいムードですね。
伊藤:俺が12曲も作るとなると大変だけど、今回はみんなが作ってきたから楽でした。
──あ、私、朋ちゃん作曲の「隣人」にハマっちゃって。
三隅:ヤバイ(笑)。
──そうそう。歌詞がヤバくて好きって言えない(笑)。
三隅:言ってください(笑)。
──曲とピッタリだし面白い歌詞なんだけど、ヤバイ(笑)。
伊藤:朋ちゃんからの発注があったんですよ。こういう感じにしてくれって。
三隅:「ヤバイ歌詞にしてください」って(笑)。
──そうなんだ!? どんな曲かは追って聞きますね。まず1曲目「O.D.N.」。曲はSUZZYさん。“O.D.N.”ってなんですか?
伊藤:“オーバードーズ・ニッポン”です。
──ああ、今の日本社会を暗喩した歌詞に感じます。このオープニングから2曲目の「LIFE」の流れ、『グッド・バイ』(2016年)の「マネー」と「シラフのうちに」の流れに似てますよね。
伊藤:あ、SUZZYに言わせれば、「O.D.N.」は「マネー」の師匠の歌らしいですよ(笑)。
順堂:「マネー」の前の曲ってことらしいです。エピソード0みたいな(笑)。
──壮大なストーリーがあったのか(笑)。「マネー」も作曲はSUZZYさんでしたね。
伊藤:あ、そうですね。
──ハードコアをアコースティックの楽器でやる面白さとカッコ良さが発揮されていて。
三隅:SUZZYさんから「中国雑技団で!」って言われたんで(笑)。中国の曲をいろいろ聴いて、音やコードが中国っぽいものを見つけて。
──ハードコアで! って言われるより、中国雑技団で! って言われたほうが、自由に面白くやれそうですね。
三隅:そうですね。でも、中国雑技団が頭から離れなかったですけど(笑)。
鹿児島:あ、「いつも心にディスチャージを」って名フレーズがあって……。
順堂:俺らリズム隊が録ってるときは「いつも心にディスチャージを」で(笑)。
──「O.D.N.」の歌詞で「決壊する自我の洪水は 泪と変えればキレイゴト」って名フレーズだと思うんですけど……。伊藤さんはずっとキレイゴトなんかじゃない歌詞を書いてきて、だからカオスだったり、恐ろしかったり、ユーモラスだったりする歌詞で。「O.D.N.」も相当なカオス。でも今作はストレートで素直な歌詞が増えてると思ったんです。
伊藤:そうですね。ストレートかもしれないです。素直になってきたかどうかは自分ではわかんないですけど。昔と比べて捻くれてないですね。昔はどうとでも取れる感じの歌詞が多かった。むしろどうとでも取ってほしいって気持ちで。
──うん。だから昔の歌詞は、なんだこれ? の連続で。何度も聴いて答えを見つける、みたいな面白さがあって。今作はそういう曲もあるけど、スッとストレートに入ってくるんですよ。伊藤さん自身が自然体で素直に書いた歌詞なんじゃないかなって。
伊藤:うーん、どうだろう。
──伊藤さんの歌詞に変化を感じました?
順堂:感じました。わかりやすくなってる。そのまま受け止めればいいんだって。あとあまり詰め込まなくなった。凄く良かったって俺は思います。