実は仕組みが近い、9mmとKEYTALKの奏る音楽
八木:どういう音楽から、あのメロディになるんですか?
菅原:滝が書いてるんだけど、メロが必ず一番最後に乗って。曲によっては弾き語りのメロがあってそれをアンサンブルにする場合もあるんだけど、大体は、面白いリフとか進行とかを作ったものに対して、最後にメロディを乗せる。だからオケの段階で勢いがあって面白いって思えてるものに自然とメロが乗っていくんだけど、そこでメロまで細かいとメロディが抜けてこないから、符割りが細かい曲に対してちょっと大きくメロディが乗る、っていうことになるんだよね。
八木:それで必然的に歌謡っぽくなってくる。
菅原:そうそう。それが9mmの仕組みだと思ってる。最近、自分でも“だから歌謡っぽく感じるのかな”って、ちょっとずつ分析を重ねてきてる結果としてのこの言葉なんですけど。9mmのメロの乗り方って、ショートケーキにイチゴを乗せることでもあるんだけど、高速移動してるものに乗せる(笑)こともあったりするわけ。
八木:その、イチゴを乗せることによって安定するっていう。
菅原:そう。曲になった…ケーキになったな、って(笑)。KEYTALKとかその世代のバンドは、ダンサブルなビートをメインに置いてるところは共通してるなって思ってて。それってフェスとかと関係があるのかなぁ、そういうステージで演奏して盛り上げるための曲、っていうふうに作ってるのかな?
八木:そうだと思いますね。
菅原:9mmもライブをしたい人たちなんだけど、バンドを組んでライブがしたくて、そのために何が盛り上がるのか、何が武器になるのか。そこを満たすためにどんな音楽をやるのかが決まってきたのかなぁ…って、昨日KEYTALKを聴きながら考えてた(笑)。音楽の仕組みは(9mmとKEYTALKは)近いですよね、歌えるリードがあってビートも細かくて。それでKEYTALKはツインボーカルだからね、9mmはツインボーカル風になる時はあるけど(笑)。
かみじょう:ギターが歌ってるからね。
菅原:形は違うけど、それで9mmはもっと雑食性が強いと言うか。滝が面白いと思ったものとか、メンバーがつけ足そうよって言ったものを入れる土壌があるんだけど、KEYTALKは一つの刃をメッチャ研いでる感があるよね。そういうところがパンクっぽいな、って。
かみじょう:逆に硬派な気がするよね。20曲に1曲ぐらいバラードはあったりしても、ハチロク(=6/8拍子)の曲は絶対に書かないな、とかさ。
菅原:やったら絶対に上手いはずなのにね(笑)。4/4拍子で(BPMは)160前後! みたいな。
八木:仰る通りです(笑)。
かみじょう:俺、「Puzzle」(2023)とかメッチャ好きだよ。こういうのもちゃんとできるんだよね。八木もさ、作詞も作曲もやるんだよね? フュージョンとかジャズワルツとか、そういうのを書いてみたいとかはあるの?
八木:実はジャズっぽい曲は書いてるんですけど…あまりウケなかったんで(一同笑)。このメンバーでやるなら、こういう曲ではないんだな、っていうのは。そう、僕は3拍子の曲もあんまり叩いたこともない…し、KEYTALKでは1曲だけ「Siesta」(2014)っていう曲はありますけどね。9mmは3拍子の曲、多いですよね?
かみじょう:ロックでそんなにやるか、みたいな感じで(笑)。
菅原:これは誰もやってないなって思ったのは、3拍子でメタルをやるっていう。「生命のワルツ」(2014)って曲とかね。
かみじょう:なかなかないよね。4拍子でシャッフル(リズム・ビート)で、プロレス曲みたいなメタルとかはあるんだけど。
菅原:「インフェルノ」(2016)っていう曲にしても3拍子…6/8でもあるのかな。この辺は、発明だなって思ってる。変だし、こういうのはないなぁって。
八木:でも、ちゃんとキャッチーなところもある。
菅原:世界的にもやってないと思う、セパルトゥラ(※ブラジルのメタルバンド)か9mmか(笑)。
──ちょうど今日は両バンドのドラマーがいらっしゃるので、ドラマーとしての印象っていうのを聞きたいです。
八木:テクニックはもちろんですけど、メチャクチャ努力家っていうイメージがありますね。
菅原:バレちゃったね(笑)。
かみじょう:才能があれば努力なんか要らないんだけどね。俺は博士になりたかったんだけど、その夢を捨てて音楽業界に来たので頑張らないと意味ないと思ったし、浮き沈みの激しい業界でちょっと売れたぐらいだと数年で捨てられるのも分かってる、だったら10年20年食えるような実力がないとなぁ、って。
八木:そう仰るスタイルも、かっこいいなぁって思ってます!
かみじょう:俺は今日話して(八木が音大出身と聞いて)合点がいったんだけど、まず普通のロックドラマーがレギュラーグリップで叩かないし。ちょっとソフト目なタッチの時とかは変えるのかなと思ったらガチでずっとそうだし(笑)。