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INTERVIEW

トップインタビュー極東ファロスキッカー - 結成5年にして満を持して発表された初のフルアルバム、それは宇宙を駆け巡る"高次元の超音速浪漫"

結成5年にして満を持して発表された初のフルアルバム、それは宇宙を駆け巡る“高次元の超音速浪漫”

2024.06.26

一番ありきたりに思える楽曲で実験的な試みに挑む捻れた面白さ

──「ろくでなしピエロ」は終盤のフラッシュポイントを担う、ストーンズやスージー・クアトロを彷彿とさせるストレートなロックンロールですね。

秀樹:宙也さんが一番似合う形のロックンロールを作ったつもりなんです。「これを俺が唄うの?」と言われたんですけど(笑)、絶対にハマると思って。おっしゃる通りストレートなロックンロールなんだけど、宙也さんが唄うと変わった形になるんですよ。グラマラスで艶のあるニュアンスが自ずと醸し出されると言うか。

宙也:自分としては、このシンプルで典型的なロックンロールを秀樹が託してきたのはどんな意図があるのだろうと考えたけど、これがシンプルでストレートかどうかは解釈が分かれるところでね。ERYは「ろくでなしピエロ」をありきたりなロックンロールの感じはしないと話していたのが面白かった。世代に関係なくロックンロールの解釈自体は人それぞれだし、同じ世代でも解釈が違う。

ERY:「ろくでなしピエロ」は、私は旅のテーマみたいな印象があるんです。海外へ一人旅へ行ったときの動画にこの曲を当てたこともあるし、自分の中では旅のBGMみたいなイメージですかね。

レイコ:私も「ろくでなしピエロ」をよくあるロックンロールとは思えなかったんです。個人的にこの曲はバスドラが肝で、秀樹君がデモで1、3にバスドラを入れてきたんですよ。そこを最初は1、3、4にさせてもらうかと思ったんだけど、そうなると全然面白くなくなってしまう。それこそありきたりなロックンロールになってしまうことに気づいたんです。これは秀樹君こだわりの1、3だろうと思ってリズムパターンを作り始めたら、自分でも凄く楽しくて。1、3はわりと間延びしそうなところがあるので、そこをまったりしないようにハイハットできっちり煽ると言うか。そのコントラストで楽しい感じを出すのが面白いんです。秀樹君は確信犯だなと思ったし、バスドラが1、3じゃなかったら、もっと普通の曲になっていたかもしれない。

秀樹:モット・ザ・フープルとか70年代前半のグラムの走りの人たちって、ドラムの音がでかいんですよ。細かいことは気にせずにドン! パン! と鳴らすことが多い。その迷いのない感じがインパクトの強さに繋がっているし、その手法をずっとやりたかったんです。ドラマーとしてはそっちのほうが楽しいんじゃないかと思うんだけど。

レイコ:ドラマーはむしろ、バスドラが1、3なら隙間を埋めるように1、3、4にしたくなるか、4発入れてスピード感を出したくなるはずなんですよ。そうならないのはドラマー脳ではない秀樹君が作曲したからこその面白さだと思う。

宙也:仮にスネアが同じ位置でも、キックを入れるタイミング次第で違う感じに聴こえるんだよね。歌詞を書くときや歌を乗せるときはスネアとキックに言葉を一文字ずつ乗せるのが基本だから、「Alien Beauty」、「魔王リベリオン」、「ろくでなしピエロ」は特に、レイコのスネアとキックと自分の言葉の乗せ方を凄く意識した。

レイコ:宙也さんは私のドラムを凄くよく聴いているんですよ。

秀樹:「ろくでなしピエロ」はERYのベースもちょっと変わったことをしているよね。

ERY:そうですね。他の曲はエイトでキメることが多いけど、ここではずっとフレーズを弾きまくったので。

秀樹:そういう実験的なことをやりたかったんだよね。

── 一番ありきたりに思える楽曲で実験的な試みに挑むという、捻れた面白さがあるわけですね。

秀樹:ここまでバンドを長くやっていると、「ろくでなしピエロ」のように初心に返る感じの曲をやらなくなるんですよ。そこをあえて新たなチャレンジを含めてやってみる楽しさを追求してみたと言うか。

宙也:俺の世代はこの手の曲をいかに壊して次へ向かうかが基本的なスタンスだったから。でもこの歳でそれに挑むのが逆に新しかったし、今回は文字通りピエロに徹して、凄く自虐的な歌詞を書くのは初めてで面白かった。

秀樹:宙也さんがここまで自分を曝け出した歌も過去になかったと思うんですよ。40年以上にわたって宙也さんにしか構築できない世界観を確立して、一つのスタイルを保持してきたことを打ち破ったのが斬新だし、バンドの新たな可能性を提示できて良かったなと。

ERY:私としては「ろくでなしピエロ」でお客さんとコール&レスポンスができたらいいなと思いますね。歌詞の中に“I wanna be”、“Yo, wannabe”と掛け声にしやすいフレーズがあるので。コロナ禍が明けてライブで声出しが解禁になったから、そろそろそんなことができたらいいなって。こっちが「Night and day」ってコーラスしたら「Yo, wannabe!」って叫んでよっていう(笑)。そういうのもあって、自分のYouTubeで「ろくでなしピエロ」のリリックビデオを作ってみたんです。ここで“Yo, wannabe”って言うんだよ? わかってるよね? って(笑)。

レイコ:K-POPのアイドルにもコール&レスポンスの練習動画があるからね。「この曲のサビではこういう掛け声でお願いね」と曲の頭でメンバーが話してる。

秀樹:じゃあ俺、“I wanna be”と“Yo, wannabe”のプラカードを作るよ。『元祖どっきりカメラ』みたいな(笑)。

DER ZIBETのISSAYへ捧げた「美神オルフェ」に内在する生命力

──安定の昭和感ですね(笑)。イントロがジーザス&メリーチェインの「Just Like Honey」を思わせる「Sweet FREQ」は悠然としたバラードの逸品で、本作の中では珍しいタイプの曲ですけれども。

宙也:一昨年の秋にデモテープが届いて、秀樹から「クリスマスソングにしてほしい」というリクエストをもらった。ちょうどその年のクリスマスにワンマンが決まっていたので。自分が断酒して以降に初めて完成させた歌詞だね。

レイコ:「Sweet FREQ」はライブでやるごとに曲の表情が変化していった曲ですね。宙也さんの中でさまざまなお別れがあって、その思いを直接聞かずとも感じ取れるものが曲の中にあったんです。凄く大事な曲なんだろうと思ったし。

秀樹:実際、この曲をライブでやると場の空気が一変するよね。

レイコ:うん。客席への伝わり方が格段に違う。宙也さんの中から発せられるものが明確にあるし、私たちも演奏に没頭できるし、客席にその思いがしっかりと伝わる。やり始めた頃と今ではライブでの表情が一番変わった曲じゃないかな。

秀樹:そんないい曲でERYはヘドバンしてますからね(笑)。

ERY:そう、凄く頭を振りやすいんです(笑)。

レイコ:サビでね。私もよくヘドバンしてる(笑)。

宙也:このあいだステージの頭上からの映像を音を出さずにチェックしていたらERYが激しくヘドバンしていて、何の曲かと思えば「Sweet FREQ」で驚いた(笑)。

ERY:私は長いことやっていたんですけど、宙也さんも秀樹さんも横並びだから気づいてなかったのかな?(笑)

──“FREQ”=“Frequency”(周波数)という言葉も詩的でいいですね。互いの心のチューニングを合わせたり、周波数帯によって届ける思いと受け取る思いに高低の違いがあったり。

宙也:自分では純愛をテーマにしたつもりなんだけど、それは秀樹のデモを聴いて何かピュアなものを求められている気がしたから。俺は放っておくとすぐ捻くれた歌を作りがちだけど、曲調や仮歌、仮タイトルからどこか純真でまっすぐなものを主題にするべきなのかな? と思って。

秀樹:どちらかと言えば宙也さんの陽の部分を引き出したいと言うか、ファロキに関してはなるべく明るい方向がいいと思っているんです。宙也さんなりの世界観は確固たるものがすでにあるし、それはもちろん尊重していますけど、ファロキではもっとサニーサイドにフォーカスを当てたい。まあその辺はバランスなんですけどね。

──アルバムの大団円を飾るのは「美神オルフェ」。昨年8月に他界したDER ZIBETのISSAYさんへ捧げたドラマティックなナンバーですが、本作を締め括る上で代替不可の楽曲ですね。

宙也:ISSAYが生まれ育った港町で行なわれた葬儀に参列して、その日はあっちゃん(BUCK-TICKの櫻井敦司)も一緒でね。彼と共にISSAYの骨を拾った。それがあっちゃんと過ごした最後の日でもあった。その青空がきれいだった一日を歌にした。

──ギリシア神話に登場する吟遊詩人のオルフェウス(オルペウス)にISSAYさんの姿を重ね合わせたわけですよね。

宙也:イメージはね。アポロンに授けられた竪琴に合わせて唄うと野獣や草木も聴き惚れたというオルフェウス。歌詞ができて歌入れをしてみんなで聴いたとき、ERYが「この曲が最後がいい!」ってすぐに言ったんだよ。

ERY:はい。「アルバムの最後の曲はこれですよね?」って言いました。

宙也:ERYが「きれいな日本語」って言ってくれたのが嬉しかった。さっきも言ったけど、放っておくと捻くれる作風と言われる中で純な部分も出してみようと言うかさ。これまでの俺は、自分では常にストレートを投げているつもりでもなぜか全部変化球になってしまっていた。それがいつしか歳を重ねて、最初から上手な変化球を投げられるようになったのかな? と。

レイコ:私は「美神オルフェ」を聴いて、夏の空に消えたオルフェを宙也さんが咀嚼できたと言うか、受け入れることができたと言うか、自身の中でやっとオルフェを生かすことができたんだなと思って。彼の不在は悲しいことだけどただ悲しい曲で終わっていない、明るさというのともまた違う、揺るぎない生命力みたいなものを強く感じて大好きな曲です。これからもずっとオルフェと共に生きていくんだという意志を感じますし。あと、よくある3拍子の曲かもしれないけど、宙也さんの文言の力と歌の色合いによって宙也さんにしか生み出し得ない曲になっていますよね。「ろくでなしピエロ」もそうですけど。

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META浪漫SONIC

2024年6月9日(日)発売
極東RECORD KRH-001
¥3,300(税込)

amazonで購入

【収録曲】
01. À Bout de Souffle
02. コードネーム:SlimGenie
03. デウスエクスマキナ
04. ゲシュタルト崩壊
05. Alien Beauty
06. 極北ロマンス
07. 愛 Misery
08. 極東ファロスキッカーのテーマ
09. 無限デシベル
10. 魔王リベリオン
11. ろくでなしピエロ
12. Sweet FREQ
13. 美神オルフェ

LIVE INFOライブ情報

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永劫回帰 〜META浪漫SONICツアー〜
【日時】2024年6月29日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
【チケット】前売¥3,500+1drink / 当日¥3,800+1drink
イープラスファロキ予約でチケット受付中
【問い合わせ】the Groove TAKASAKI 027-387-0895(平日15:00〜18:00)
 

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邂逅いちばん〜No Generation!
【出演】極東ファロスキッカー / the GOD
【日時】2024年7月14日(日)OPEN 18:00 / START 18:30
【チケット】前売¥3,500+1drink / 当日¥4,000+1drink
イープラスファロキ予約でチケット受付中
【問い合わせ】ROCK JOINT GB 0422-23-3091
 

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永劫回帰 〜META浪漫SONICツアー〜 
【OA】the 1970
【日時】2024年9月7日(土)OPEN 18:00 / START 18:30
【チケット】前売¥3,500+1drink / 当日¥4,000+1drink
イープラスファロキ予約でチケット受付中
【問い合わせ】サナッシュ 054-288-0880
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