シーナと鮎川がそこにいるのを感じる不思議な体験
──今回の46周年ライブは、豪華ゲストが入れ替わり立ち替わり登場してシーナ&ロケッツの不滅のレパートリーを披露する、例年以上にパーティー感の強い趣向になりそうですね。
純子:そうですね。今回のライブはすべてLUCYがプロデュースしていて、ゲストの方々にシーナ&ロケッツのどの曲をやりたいかを直で話しているんです。意外な曲が返ってきた方もいて、凄く面白いことになりそうです。
LUCY:5月2日の追悼ライブ音楽葬もそうだったんですけど、ゲスト一人ひとりに「これどうですか? あれはどうですか?」と訊くのがとても楽しいんです。そのゲストに唄ってもらいたい曲、似合いそうな曲を無茶振りするのも楽しんですよ(笑)。
新宿LOFTのオープン10周年(1986年)を記念したライブのパンフレットより
──普段はあまりやらないナンバーが披露されることもありそうですか?
LUCY:はい、その予定です。
──奈良さんと川嶋さんが準備で大変そうですね(笑)。
奈良:そんなこともないですよ。
LUCY:奈良さんは何でもできますから(笑)。
奈良:そんな器用じゃないけど、ロケッツは曲が多すぎるんです(笑)。いい曲ばっかり、マコちゃんは本当によく作ったなと思います。サンハウスの頃からずっとですからね。
LUCY:奈良さんはどんな曲でも奈良さん節で弾いてくれるし、とてつもなく凄いプレイヤーですよ。
純子:サンハウス時代からお父さんの唯一の相棒ですからね。
──話を伺っていると、現編成のシーナ&ロケッツがやるべきことはステージを含めてまだたくさんあるように感じますが。
奈良:僕もそう思うんですよ。
LUCY:そう言ってもらえるのは嬉しいんですけど、私が唄うことで冒涜にならないかな? という思いが絶えずあるんです。
純子:私はこのあいだの『高塔山ロックフェス』で山の頂上で物販をしていて、そこでいつもライブに来てくださるファンの方々と会ったら思わず涙が溢れてしまったです。お父さんがギターを弾く姿をもう見せられない悔しさもあるし、お父さんがもういないのにシーナ&ロケッツを観に来てくれた嬉しさもあったし、いろんな感情が重なって。だから以前のようにはできないかもしれないけど、ライブはやっぱり続けたいんですよね。悲しいことばかり考えていると塞ぎ込んでしまうだけだし、生の音楽を全身で浴びると身体が凄く元気になりますし。ステージに立つLUCYが年々頼もしく感じるし、『高塔山ロックフェス』でも「シーナやったら心が一つっち言いよるよ」みたいなことをさらっと自然に言えるようになったし、そういう一言で私はもう嬉しくて涙腺崩壊してしまって(笑)。お母さんとお父さんがいなくなっても未だにシナロケが音を出せている喜びもありますし。
奈良:凄いことですよね。まさにマコちゃんとシーナが残した財産だと思います。肉体は滅んでも楽曲やバンド、その精神性は生き続けていますから。
LUCY:澄田さんが、二度お父さんが夢に出てきて言われたらしいんですよ。「(ステージを)見よるよ」って。
高塔山ロックフェス(2022年10月22日)
──シーナさん亡き後、鮎川さんがライブを続ける理由の一つとして「ステージに立つとシーナに会えるから」と話していましたが、その感覚はLUCYさんもありますか。
LUCY:やっぱりありますよ。ライブの前の日から首が重くなったりするし、シーナが亡くなってから私が出るライブでは必ず首を壊してしまうんです。私が唄ってないときに声が出ていたこともあったし、すぐそばにお母さんがいるんだなといつも感じています。
純子:LUCYは以前、霊感の強い芸人さんに「凄い憑依体質ですね」と言われたことがあったよね。
LUCY:そう、「すでにもう30人くらい付いてます。優しいから許容しちゃうんですよ」と言われて。
純子:音や光といった目に見えないものには人の念や思いが乗りやすいと思うし、何かのメッセージを伝えようとしているのかな? と感じることがありますね。たとえばお母さんの亡くなった時刻ちょうどに私のパソコンが2台全壊して全データが飛んだり、若松の実家のお母さんの部屋にある時計まで止まっていたり。お母さんが亡くなって、その魂が天に昇っていく瞬間にいろんな所へ思いが飛んでいったんじゃないかと思って。
LUCY:私自身は霊的なものをそんなに信じないタイプなんですけど、音や電波、光というのはエネルギーの一つだし、ある学者さんが言うには「見えないものに魂が宿るのを信じるか信じないかはその人次第だけど、好きという気持ちだって目に見えないじゃないですか」と。言われてみれば世界は目に見えないもので溢れているし、これだけ不思議なことが起こると霊的なものの存在を認めざるを得ないですね。それに、先日の『高塔山ロックフェス』のステージで私の髪にお父さんの顔がべったり写っている写真をファンの方がSNSに投稿していて。あまりにくっきり写っていたので合成かな? と思ったんですけど、プロジェクターでそんな画像を投写する演出なんてなかったし、やっぱりお父さんが来てくれたんだなと思って。
純子:お母さんが亡くなった直後のライブで、ステージの真ん中で謎の光が放たれて、それがお母さんの姿に見える写真もありましたからね。
奈良:以前、鹿児島のライブで、足に障がいのある車椅子の女性の方が果物を持って楽屋を訪ねてくれたことがあったんです。その方を見たマコちゃんが「足、悪いとね? ロック聴いたら治るよ」と言って、ロケッツのライブに通い続けたら本当に治ったんですよ。それまでは痩せ細っていたのに今じゃ普通に歩けて、酒も煙草もやり放題で(笑)。
純子:その方が言うには、「シナロケのライブでもの凄いパワーを貰って、今はどんどん元気になってる」って。
──わかる気がします。鮎川さんのギターは非常にポジティヴなオーラを発していましたから。
奈良:弾いてる指はとても優しくて綺麗なんですけどね。その足の悪かった方の話を聞くと、やっぱり音楽の力って凄いと感じますよ。