真剣に戦うには宴やパーティーの気分も必要
──うん。あと島さんのもう一つのバンド、島キクジロウ&NO NUKES RIGHTSでもやっている「Fuckin' Wonderful World」、「インティファーダ」、「Sunday」はもともとthe JUMPSの曲ですよね?
島:そう。the JUMPSでやってて、NO NUKES RIGHTSに貸し出してたから返してもらったって感じかな。
──「Fuckin' Wonderful World」はNO NUKES RIGHTSでのアコースティックもいいですけど、the JUMPSのバンドサウンド、イントロのギター、いいですよね~。
島:あれはね、ギターのモッキーがずっと大好きだったの。やっぱりその曲を好きな奴がやるのは伝わるよね。しかも、パンクしか弾けないギタリストがってところがいい(笑)。
エンリケ:だからパンクにしようなんて思ったわけじゃないもんね。でもパンクになっちゃう。ならざるを得ない(笑)。
──ならざるを得ないっていいですね。
エンリケ:そう。そこがいいんですよ。俺は、まぁ、いろいろ弾けるんですけど、the JUMPSだと、曲が持つもの、島さんが書く歌詞、モッキーのギター、マサの勢い、そういうものに呼びこまれたっていうのが俺のベースで。そこそこいろいろと弾けたりするけど、レコーディングは要らないものは省いてギューッと絞り込んでいったっていう。
──バラエティがあってもパンクにならざるを得ないアルバムですね(笑)。
エンリケ:ホントそうです。レゲエや4ビート的なジャズっぽい曲もあるけど、どれを聴いてもパンクだし、パンクのアルバムとしか言いようがないと思う。
島:The Clashがそうであるようにね。今作、最初はミニアルバムみたいなイメージだったんだけど、入れたい曲が増えて7曲ぐらいになって。それなら10曲にしてフルアルバムにしようって。「赤いギター」は前に録音したやつに個人的に悔いが残ってたこともあって、構成を変えて録り直した。2曲目のリトル・リチャードのカバー「LUCILLE」は、メンバーにコレをやりたいからよろしくって音源を送って。
エンリケ:こっちは参考曲かと思ったんだよ。こういうタイプの曲をやるんだなって。The Clash 的な曲に「LUCILLE」的なニュアンスを入れたいのかな、とかいろいろ想像して。そしたら直球でカバーをやりたいって言うから驚いた。
島:そもそもカバーやるっていうのが珍しいしね。
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──しかも2曲目ってのも珍しくない?
島:そこは、『LONDON CALLING』の「Brand New Cadillac」の立ち位置だから(笑)。
エンリケ:Deep Purpleの1972年の日本公演『Live in Japan』にもアンコールで「LUCILLE」やってるんですよ。
島:そうなんだよね。リトル・リチャード本人のもいろんなバージョンがあってさ。俺は高校生の頃、リトル・リチャードを知ってぶっ飛んで、中でも「LUCILLE」が凄い好きで。好き過ぎて一回も歌ったことなかったの。一回もだぜ!
──今作で初! 凄い力入ってますよね(笑)。この曲だけホーン隊が入ってる。
島:そう。唯一この曲だけゲスト入れた。NO NUKES RIGHTSのほうはゲストだらけじゃん。いろんな楽器が集まってやってる。the JUMPSは4人のロックバンドだから4人でやるってのは決めてた。でも「LUCILLE」だけはホーン入れた(笑)。長年の思いがここに凝縮されてるんだよ(笑)。そして今作のジャケットは『LONDON CALLING』と素性不明のアーティストBanksy(笑)。
──オマージュっていうか、好きなものは好きって隠さず素直に言えて取り入れて楽しめるのも、やっぱり経験を重ねた自信なんでしょうね。自分たちらしくできる自信と、楽しんでいいっていう自信。
エンリケ:うん。若い頃ってやたらに真面目だった。クスッて程度でいいことを、真剣に盛り上げようとしたり、または俺たちらしくないからやらないって決めつけたり。
島:そうそう。ただ若いうちはそういう頑なさも必要。だけど、やっぱり楽しくなきゃね。楽しむことは絶対に必要。
──だから『REBEL BANQUET』だもんね。
島:そう。戦うには宴やパーティーの気分も必要。生きていくためにはどっちも必要。俺は弁護士だから社会的な運動してる人たちに会うことも多いけど、ちゃんと楽しんでるよ。真剣に戦いながら楽しんでる。
──だからこそ続くんでしょうしね。今作、瞬間だけじゃなく、続いていくパンクロックだって感じました。
エンリケ:さっきも出たけど、ロード、ストリートのアルバムだと思うんです。どこまでも続く、まだ先がある。行き止まりになってもちょっと戻れば分かれ道になって、必ず道はある。確かめながら、羽目外しながら、散らかしたものは掃除しながら(笑)続いていく。そういう感じ(笑)。
島:楽しく騒ぎながら、世の中ひっくり返してやりたいってアルバムだよね。みんな宴に参加してくれよ!