ヘヴィだけど暗い展開とは限らない、人生は終わりじゃない
──うんうん。今作は1曲目の「Down On The Loser」から10曲目の「Working Class Loser」まで、“Road”で始まり“Road”で終わるアルバムですね。常に道の上にいる。
島:そうだね。“On The Road”と“Rights and Freedom, Humanity”って言葉をちりばめた。最初の曲で“Down on the Road”って道の途中で倒れる、倒れても構わないって言ってる。最後の曲はホームレスが登場するんだけど、“Still on the Road”、まだ道の途中、まだゲームは終わってないぜって言ってる。
──ヘヴィではあるけど終わってなどいない。
島:そう。ヘヴィだけど展開は暗いとは限らない。人生は終わりじゃないんだよね。
エンリケ:“まだ続くのかよ”じゃなくて“まだ続いてるよ!”ってね。それは結果がどうあれ、それ自体をワクワクすればいいってことで。
島:そうそう。
──大人になってからのほうが社会の厳しさ、酷さがわかるわけで。でもポジティブでいられるのは……、
島:ポジティブじゃないと生きていけないからね(笑)。
──だからタフなんでしょうね。the JUMPSの以前の曲も入ってますよね。「赤いギター」と……、
島:あと「Let's Go」。これは俺にとって大事な曲だけど、ここ20年以上封印してきた。50代の最後にやっとこうと(笑)。
──この曲のこの歌詞、“この世に生まれた すべての理由を数えてみたい 星の数ほどある”、いいですよねー! 今の荒んだ時代なら、この世に生まれた理由なんてないって思いがちじゃないですか。絶望的な気分になりがち。でも「Let's Go」を聴いて、そうだよな、いいんだよなって思ったんですよ。肯定していいんだって。例えば今日ここHowlin'で美味しい料理を食べた。コレも生まれてきた理由の一つだって思っていいじゃんって(笑)。
島:そうだよね。
──いつ頃作った曲なんですか?
島:曲はホントに若い頃に作って、歌詞はちょくちょく変えてきたんだよね。この歌詞になったのは30代後半かな。その後はやってなかった。
Photo by Miya Chikako
──いいですよねぇ。生まれてきた理由が星の数ほどあるとは思えないところを、星の数ほどあるって歌ってくれて逆に救われる。生きてるだけでいいんだってスコーンとする。
島:そう思ってくれたなら良かったよ。
──たぶん、大人の世代が歌ってるから余計そう感じるのかも。
島:そうだね。若い奴なら言葉通りにそのままの歌になるだろうね。それもOK。でも歳を重ねると、違う意味を求めたくなる。そういう気分になるじゃん。現実を見てるからこそ。
──なんかわかる気がします。夢のある歌詞は現実には起こり得ないけど、それがわかってるからこそグッとくるっていう。嘘でもいいから言い切ってくれるとこが「Let's Go」の歌詞のカッコ良さで、パンクロックのカッコ良さだなって。
島:そうかもしれないね。ただね、そこが悩ましいとこで。言い切るカッコ良さもあるんだけど、悩みを見せることが大事ってのもある。だって悩みって必要じゃん。たとえば「Rights and Frttdom,HumanityⅡ」はコロナの時代のことを歌ってるんだけど、全ての人が生まれて初めての体験をしてるわけでしょ。100年前のスペイン風邪以来のパンデミック。
──初めての体験なのはみんな同じなのに、人によって状況は違うし、時期によっても変わってくるし……、
島:だから悩まなきゃおかしいんだよね。悩むこともなくコロナは風邪だって言ってる奴はアホだし、ずっと家に閉じこもってるって奴も、もうちょっと悩もうぜって。だからさ、コレが正しいって断言はできなくても、悩まなきゃいけないんだって断言するよ(笑)。
──俺は悩んでるぜ! って(笑)。
島:お前らも悩め! って(笑)。だってそれは自分の頭で考えろってことだからね。
──そうですね。今作は時代の進行形、世代の進行形のパンクだなと。自分の世代が今鳴らすパンクロック。
島:ハッキリしてることは、リアルじゃなかったらパンクじゃないしロックじゃないってことだよね。リアルにこだわるのはマストでしょ。自分が生きる世代だったり、時代だったり、立ち位置だったり。そこからしかリアルは生まれないわけだからね。そことちゃんと向き合って、おもねることなく歌わなきゃ意味ないもんね。だから失敗もOKなのよ。だって、それがリアルだから。繰り返しだよ。
エンリケ:あと俺が断言できるのは、コロナ禍においてもロックはなくならないってこと。コロナの制約の中でも続いていくんですよ、ロックは。
島:それは俺も断言する。