純度の高いロックンロールの一番濃い部分を体感できるはず
──まさに青春ですね。“青春”と聞いて思い浮かべる音楽や映画、小説はありますか。
曽我部:ぼくは今もずっと人生の青春期だと思ってるから、自分が今好きなものが全部青春だと思う。若い頃に聴いてた音楽や見ていた映画だけが青春だとはあまり思わない。ただ、昔から自分の好きなものや趣味が大きく変わらないんですよ。新しいカルチャーは何でも受け入れようとは思ってますけどね。
セイジ:青春かあ…オレはまだまだ青春みたいなものだから。今はまだ人生の1/3だからね。青春と聞いてパッと連想するのは『あしたのジョー』とか。あと、『飛び出せ!青春』や『われら青春!』みたいな学園ドラマかな。ああいうのにかなり影響を受けたから。ラグビー部とかサッカー部の話で、先生と生徒が殴り合いの喧嘩もするけど最後は何とか一緒に困難を乗り越えていくっていう…ギターウルフをまた新たに始動させるときにはそういう気持ちがいつもあるね。今回のヨーロッパ・ツアーもそういう感じだったし。
曽我部:メンバー間でぶつかり合うことがいまだにけっこうありますか?
セイジ:もちろん。ぶつかり合うときはグッと堪えて、学園ドラマで先生を演じた村野武範や中村雅俊のことを思い出す。一応、オレがリーダーで年上だから(笑)。
曽我部:そうなんですね。ギターウルフって互いに「ああしよう、こうしよう」と言い合うこともなく、もっと淡々とやっているイメージだったので意外です。バンドだから当たり前なのかもしれないけど、ギターウルフもギターウルフなりに試行錯誤している部分があるんですね。
セイジ:いつもオレが一人でブッ飛ばしてるし、あまりブッ飛ばしすぎると他のメンバーがついて来れなくなるし、同じ方向へ突き進むためのディスカッションもあれば意見の違いもあるよ。でもそれも一つのドラマで面白い。
曽我部:罰則のない体育会系って言うのかな。行けるところまでみんなで行こうぜ! って目指す先を一緒に探すのがロックでありバンドなのかなと思うんです。
セイジ:だからバンドを続けるのって凄くスリリングだし、エキサイティングなんだよね。
曽我部:反省会とかします?
セイジ:反省会はないけど、たとえば新しく入ってきたメンバーが自分たちのやろうとしてることをあまり分かってないかな? とか感じたときにはタイミングを見計らって「どうした?」って話を聞いてみる。「まあ飲めよ」って飲みに連れ出してみたり。
──そういう心遣いみたいなものは、曽我部さんもやっていますか。
曽我部:あまりやりませんね。昔はメンバーと喧嘩もしたけど、ドラムが亡くなったことで接し方が変わったというか。お互いに過度なストレスを抱えるのは良くないし、「今日のライブのあの部分はどうだった?」みたいな確認もあまりやらなくなりました。みんながステージで思いきりやれるのが一番だし、思いきりできていないのを感じたら「今日は思いきりできてた?」と軽く訊く程度ですね。
セイジ:ライブが終わった直後に「どうした?」とは絶対に訊かないね。もし気になるところがあるのであれば、次に会うリハのときとかかな。
曽我部:バンドを一生懸命やっているのはみんな同じじゃないですか。でもそれぞれの一生懸命はちょっとずつ違うから、こっちの一生懸命に合わせてよとか昔は思っていたけど、今はみんなの一生懸命がステージ上のどの場面で出会うのかを考えています。みんな100%、120%の力をステージで出しきっているはずで、それをどうぶつけ合って化学反応を起こせるかってことに気を留めていますね。コロナ禍で思うようにライブをやれなかったのもあるけど、ライブはやっぱり楽しいし、ステージで音を出すと自分の還る場所はここだなと実感します。
セイジ:ステージがオレたちの生きる道だからね。
曽我部:ライブで必ずやる曲ってあるじゃないですか。もはや何千回とやってる曲だけど、不思議と飽きないものですよね?
セイジ:うん、もちろん飽きない。
曽我部:(ローリング・)ストーンズを見に行ったとき、キース(・リチャーズ)が「(I Can't Get No) Satisfaction」のフレーズを弾く前にメンバーに向けてニヤッとしていたんですよ。「行くぞ!」みたいな感じで。そのやり取りを見て、この人たちには飽きるという感覚が全然ないんだろうなと思ったんです。もちろん飽きた時期もあったのかもしれないけど、それも過ぎて今なお「Satisfaction」を演奏することに喜びを見出しているのが最高だなと感じて。自分たちもそうありたいですね。ギターウルフはどうですか、何千回もやる曲に飽きたりすることは?
セイジ:飽きることは全くないし、曲はやるためにあるし。「ジェット ジェネレーション」もやるたびに自分で来た来た来た来た! って感じだからね。
曽我部:ぼくも同じ曲を何度やっても飽きないんですけど、エンターテイナーなのでお客さんが飽きないかな? とちょっと心配になるんです。でもやっぱり自分のやりたい曲をやるしかないと思って、結局は同じ曲になっちゃうんですよ。もちろんアルバムが出たときは新曲を必ず織り交ぜるし、ストーンズも何曲目かのいいタイミングで最新アルバムの曲をやるんですよね。そうやって絶えず新曲を出し続けるのもストーンズのいいところだと思うんです。
セイジ:最初は曽我部くんたちと対バンをやれるのが不思議な感じだったけど、こうして話していて距離が近づいてくると、この取り合わせが凄く絶妙なんだと思えてきたね。だから余計に楽しみになってきた。「青春狂走曲」はやるんだろうか?
曽我部:やります。
セイジ:おお! それは楽しみだ! 「バカばっかり」は?
曽我部:あれはソロの曲なので(笑)。ぼくもギターウルフとの対バンは楽しみです。凄く純度の高いロックンロールを体感できると思うので。ギターウルフとぼくらのやり方や方向性は違うと思うけど、どっちもロックンロールであることに違いはないし、2組ともロックンロールの一番濃い部分を聴かせられるはずだし、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
セイジ:ホントに楽しみだね。サニーもウルフもロッケンロー! それに尽きるよ。