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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】吉村秀樹×名越由貴夫 - bloodthirsty butchers『kocorono 完全盤』完成記念特別対談「憂色に包まれた12ヶ月の物語、失われた一篇の歌が加わり遂に完結──」

【復刻インタビュー】吉村秀樹×名越由貴夫 / bloodthirsty butchers『kocorono 完全盤』完成記念特別対談
憂色に包まれた12ヶ月の物語、失われた一篇の歌が加わり遂に完結──

2021.11.12

愛情を持って闘うべきだと思った

──意外ですね。「9月」のつぶやくような歌に顕著ですが、吉村さんの繊細な部分を名越さんがすくい上げる印象を僕は抱いていたんですよ。

名越:野性的な部分と繊細な部分、その両方の良さを感じてるから、どっちかが欠けることはないんだよね。俺もギターを弾くから分かるけど、ギターを弾く感性って野性の部分なんだよ。

──ギターと言えば、「2月」で聴かれるアコギの音の粒が凄く鮮明になりましたよね。

吉村:あの粒々は名越君が設定したんだよ。

名越:あれは最初、迷ったんだよね。リマスターの段階で一度やり直したんだけど、最初は上も下ももうちょっとレンジが広い感じだった。でも、それだと曲の感じが壊れるかなと思って、思い切って下はそんなになくてもいいんじゃないかって切り替えたんだよ。それなら昔の感じを壊さないで新鮮な感じを出せると思ってね。

──それが今回のリマスターにおける主題だったんでしょうか。楽曲本来の持ち味を壊さずに新鮮さを提示することが。

吉村:俺だっていろんなリマスター盤を買って聴いてるから「オリジナルの音が好きだ」っていう人が絶対にいるのは分かるし、そこは覚悟の上でやってるわけ。でも、リマスター盤として出す上で「これはねぇよな」ってイメージがブチ壊されるようなものは作りたくなかった。要するに愛情ってことだと思うんだけど、惜しみなく愛情を掛ければ絶対にいいリマスター盤になると思ってたね。さっき言ったフガジのリマスターは凄く闘ってる感じがあって、音がいいって言うよりもそこがいいわけ。でも、『IN ON THE KILL TAKER』っていう俺が譲れないくらいに好きなアルバムだけ良くなかったりするんだよね(笑)。そういう体感を経ての俺のリマスター観って言うか、愛情を持って闘うべきだと思ったわけ。

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──リマスターの作業最終日の3日目にスタジオへお邪魔して、みなさんがありったけの愛情を注ぐ姿は目の当たりにしました。「3月」をもう一度やり直したいという名越さんの執念も感じましたけど(笑)。

吉村:あの「3月」は4回目くらいだよ(笑)。

名越:やり直した回数は「3月」が一番多かったけど、一番肝だったのはやっぱり「2月」かな。

吉村:うん、ド頭だよね。チームワークって言うのもヘンだけど、みんなの感性が合わさる瞬間が言葉ではなく音で発せられてるって言うかさ。

名越:「2月」はイントロのインパクトもそうだけど、リズムが入ってからのスピード感が肝だし、そのどっちを外しても上手く行かなかった。安藤さんに2回くらいやり直してもらって、3回目でやっと「これ! これ!」って思えたんだよね。

吉村:あの瞬間の楽しい感じったらないよね。

名越:1回目の時ですでに散々ああだこうだ言いいながら悩んで、「まぁ、こんなところかな」って落ち着いてたけど、聴き直してみたら「うーん、どうかな」って感じになってね。

──「3月」で延々こだわっていたのはどんなところなんですか。

名越:「3月」はただ単純に技術的な問題で難しかったんだよ。凄く変わったミックスだったし。

吉村:悪魔の音がいっぱい入ってるからね。スピード感もあるし、バランスが取りにくいから悪魔を排除できないんだよ(笑)。

名越:オリジナル・マスター音源と当時のマスタリングしてないTD音源を聴き比べても、かなり悩んだ形跡が窺えるんだよね。

──最新鋭のテクノロジーを駆使しても悪魔を排除できないものなんですか。

吉村:それだとリマスターじゃなくリミックスになっちゃうからね。だとすると、俺が最初にリマスターに対して抱いてた考えと変わってくるしさ。俺はね、この“完全盤”を作り終えた今も実は悶々としてるの。“やったぜ!”っていうよりも“クソッタレ!”っていう気持ちが凄く強くてね。過去の自分を受け入れるわけだし、それが『kocorono』だとブラッドサースティ・ブッチャーズにしてみればちょっと重いわけ。過去の自分を受け入れられる窓口っていうのを体感した時に、みんなこの作品に対して愛情があるんだなぁとか思ってさ。

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kocorono【完全盤】

BELLWOOD RECORDS KICS-90587
¥2,934(税込)
2010年3月10日発売

【収録曲】
01. 2月/february
02. 3月/march
03. 4月/april
04. 5月/may
05. 6月/june
06. 7月/july
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