映画作りのきっかけをくれた吉村さんには絶対観てほしい
──観終わったら何か語りたくなりますね。
大石:絶対に語りたくなると思います。fOULのことを語ったり、あのときのライブにいたの? 俺も私もって(笑)。あと未来に向けても…、音楽はいろいろ溢れていて、新しいものもどんどん出てきてますけど、3ピースのバンドでこれだけのことができるってことを、今バンドやってる人たちに観てほしいです。面白い発見があると思う。音楽としての、バンドとしての醍醐味を感じられると思います。
──大石さんにとってライブハウスは最も大事にしている場所ですよね。今はまだライブハウスは以前と全く同じってわけにはいかない。そういう現状も含めて、『fOUL』はライブハウスに対する大石さんの熱い思いを感じます。
大石:私にとって…、ライブには人生が全部詰まっていて、受け取る側も自分の人生を重ねるじゃないですか。そういう時間って凄く大事だと思う。今回、映画を観に来てくれる人たちも、それぞれの想いがあって観に行くと思うので、その時間を大事にしてもらいたいです。知らないけどちょっと行ってみようって感覚で来てもらっていいんです。なんだコレ? ってびっくりしてもらっていいし、ISHIYAさんのコメントみたいに拷問って思う人がいるかもしれないけど(笑)、そういう人も観てほしいんです。何が起こるか分からないっていうのがライブハウスだし、そういうライブが凄く心に残ったりするし。今はまだコロナでそういう体験がなかなかできないし。
──だからこそ、そういう楽しさを伝えたいし守りたいし続けたいですよね。
大石:そうですね。
──大石さんは最初に好きになったものをずっと好きでい続けて、そしてまだまだ発見があるし、それって素晴らしいな。なかなかできない。
大石:ちょっと気持ち悪いぐらい好きなんです(笑)。
──私もfOUL大好きなんですよ。でもずっと聴き続けてるわけでもないし、部屋のどこにあるのか分からないCDもある。改めて最後に聞きますが、ずっと聴き続ける、ずっと好きでい続ける、その理由ってなんでしょう?
大石:3人それぞれが活動していてくれてるっていうのもあると思います。健さんも大地さんも学さんも、今もそれぞれで音楽を続けている。自分の昔の日記を見たら、健さんがfOULを休憩してしばらくして、ブッチャーズの吉村(秀樹)さんとソロのライブに出演していたことがあって、当時観に行ったんですが。吉村さんが、健さんに向けて唄ったと思えるような曲があって。当時の私には「音楽続けていけよ」って言ってるように捉えられたんです。
──うわぁ。ジンとくる。
大石:3人がどこかしらで活動していて、ずっと音楽をやり続けているっていうのを見ているので、fOULへの思いはずっと繋ぎ止められて…繋ぎ止められてっていうか、ずっとあるんですよね。
──自分自身の感性を信じ続けられるのも、表現者の強さだと思います。そのへんがfOULと共鳴したんだろうな。
大石:私、映画を作るきっかけが、吉村さんが直電してきて、「オマエ、『kocorono』(川口潤監督)手伝え」って。それでお手伝いさせてもらったんです。そういう濃い体験をさせてもらって。濃い体験や多くの人たちとの出会いに、私は育てられてきたんだなって思います。だから、吉村さんにはこの『fOUL』を観てほしいんです、絶対に。
【大石規湖 プロフィール】
フリーランスの映像作家として、SPACE SHOWER TVやVICE japan、MTVなどの音楽番組に携わる。怒髪天、トクマルシューゴ、 DEERHOOF、DEATHROなど数多くのアーティストのライブDVDやミュージックビデオを制作。2010年、bloodthirsty butchersのドキュメンタリー映画『kocorono』(川口潤監督)で監督補佐を担当。2017年、音楽レーベルLess Than TVを追った映画『MOTHER FUCKER』で映画監督デビュー、the原爆オナニーズの今の姿を描いた『JUST ANOTHER』(2020年)に続き、本作『fOUL』が3作目となる。