音楽ユニットが映画を作る発想自体が他にない
──DISCOMPO with 泉茉里がバーチャルのステージで「輪郭」を演奏するシーンに一番労力をかけた感じですか。
名嘉真:そうですね。編集期間で最も時間がかかったのは演奏シーンです。実写だけのシーンの編集は2日ほどで終わったんですが、CGのシーンの編集は2、3週間かかりましたから。
──映画本編とは別に「輪郭」単体のMVも発表されて、余計に時間がかかったのでは?
名嘉真:そうなんです。しかもMVのほうは改めて同じセットと衣装で撮り直したんですよ。
──ですよね。映画にはなかったシーンがMVにはありましたし。「輪郭」は元からストックとしてあった曲なのか、それとも今回の映画のために書き下ろされた曲なんでしょうか。
名嘉真:映画のテーマ曲として書き下ろしたものです。映画用にまずワンフレーズを作って、映画が完成した後にフル尺を作りました。
Dr.Usui:映画と楽曲の制作は同時進行でしたけど、まずは映画での尺を逆算して作り始めましたね。名嘉真監督から「同じフレーズやワードがリフレインで聴こえてくるのがいい」というリクエストを受けてから考え始めた曲です。
──『アートにエールを!』のサイト内で作品が公開されて、観た人の感想は皆さんの元へ届いていますか。
名嘉真:映画や映像を制作している同業者から「観たよ」という個人的な連絡は来ましたけどね。SNS上でのリアクションはこれからなのかな? と。
泉:自分のことで言うと、観た人からは大人っぽくなったねと言われました。マリ・インフィニティーの年齢設定は特に決まっていなかったんですけど、デビューしてステージで唄っている自分とコロナでうまく進んでいない自分の違いを出すために大人っぽく演じることを心がけたんです。そういう演じ方は今までやってきたことがなかったので、新しい自分を垣間見ることができました。全体的にそれまでの私自身のキャラクターとはガラッと変えられてますからね、マリ・インフィニティーを除いては(笑)。
──恋人役の植野晃成さんとの共演シーンはご自身でも納得してやれましたか。待望の恋愛要素だったと思いますが(笑)。
泉:でも結局、ディスタンスでしたからね(笑)。特に触れ合うこともなく、距離も遠いままで終わったので。ただフラれて終わった感じです(笑)。
名嘉真:そうなんですよね。いい雰囲気になるシーンもあまりなかったので。
泉:唯一、やっといい感じだなと思ったシーンもディスタンスを取ってご飯を食べているだけで。マリ・インフィニティーは家の中でもディスタンスを守るという意識高い系女子だったんですね(笑)。だから思い描いていた恋愛シーンとはかけ離れていましたけど、これはこれで今の時代っぽくていいのかなと思って。
──DISCOMPO with 泉茉里を世に知らしめる格好の映像作品だし、CDデビュー前に短編ながら映画を発表するのが前代未聞だし、コロナ禍のなかでもこれだけクリエイティブなことをやれているのが痛快ですよね。
Dr.Usui:何らかの目標や夢を共有するのがバンドだと僕は思っているので、このDISCOMPO with 泉茉里でもメンバーそれぞれの思いを乗っけていきたいんです。演技をやりたかったという茉里ちゃんの思い、映画を撮りたかったという名嘉真監督の思いは今回果たせたし、順矢とは音楽的にこんなことをやってみようとか、彼がどんなプレイヤーになっていきたいかを常々聞いているし、そういうメンバー各自の思いを乗っけるからグループは面白いんですよ。『アートにエールを!』で他にも映像作品を発表している人はいるけど、音楽ユニットがしっかりとエンターテイメントを意識しながら作った映像作品は『DISCOMPO』だけだと思うんです。そもそも音楽ユニットが映画を作る発想自体がなかなかないですよね。その意味でもDISCOMPO with 泉茉里らしい活動をやれていると自負しています。
──作品自体はあくまでも『アートにエールを!』のサイト内での公開に限られているのでしょうか。通常の劇場で公開するお考えは?
名嘉真:東京都から上映の制限は特にありませんし、どこで上映してもOKなんですが、22分の短編映画だと単独での上映がしづらいんですよね。
──せっかくの映画なので大きなスクリーンで観たいと思っていたところ、渋谷のCINEMA9[10月19日(月)〜23日(金)]と下北沢のFlowers Loft[10月1日(木)〜]で上映されることが決まったそうで。
Dr.Usui:こんなに早くスクリーンで観られる機会を与えてもらってありがたいです。映画が完成したらプレミア上映会をやりたいと名嘉真監督も話していたので。
──10月14日(水)にはLOFT9 Shibuyaで『DISCOMPO』の公開記念イベントが開催されますが、どんな内容を予定していますか。
Dr.Usui:DISCOMPOのメンバー、出演者、スタッフで挨拶させていただいた後に映画を上映して、それを観ながら撮影秘話などをオーディオコメンタリー的にわいわい話せたらいいなと思っています。「ちょっと止めて」なんて言いながらツッコミを入れたりして(笑)。