短編映画の撮影初日にメンバー4人が初顔合わせ
──皆さんは毎週木曜日の夜にZOOM会議を開きながらさまざまな企画を扱っていて、デモ楽曲の人気投票で勝ち残ったものを新曲に仕上げていくとかユニークな試みを展開されていますが、それもオーディエンスを巻き込みたいという姿勢の表れですよね。
Dr.Usui:そうですね。ライブをするわけじゃないからお客さんが傍観しているだけだとつまらないと思ってZOOM会議を最初に思いついたんです。毎週1曲作るのは大変ですけど、その大変さも含めて面白いかなと思ったんですよ。
──その何回目かのZOOM会議で、6月の下旬にやっとメンバー4人が初めて顔合わせをしたというのが前代未聞ですよね。その場で名嘉真さんが伊達メガネだったことが判明したりとか(笑)。
泉:そう、そのときまで知らなかったんですよ(笑)。
Dr.Usui:あれが初めて4人全員が集まった日で、それも実は配信のために集まったわけではなく、その日の朝から夜の配信の時間まではこのあいだ発表した短編映画『DISCOMPO』の撮影初日だったんです。配信の映像をよく見ると、名嘉真監督はだいぶへろへろでしたね(笑)。茉里ちゃんの元気で何とか成り立っていた配信というか。
──そもそもどんな経緯で短編映画を作ろうと思い立ったんですか。
Dr.Usui:東京都の『アートにエールを!』という芸術文化活動に対する支援事業があって、それにエントリーしてみない? と僕がみんなに話してみたんです。具体的な内容はあまり考えていなかったんですけど、「たとえばこんな演奏シーンを撮ってさあ…」みたいなことを名嘉真監督に提案したら、監督がいろいろとアイディアを出してくれたんですよ。今はカメラマンや照明といった映像制作に携わる人たちに仕事がないから、そういう人たちに参加してもらう機会にもなるよねという話にもなって。(名嘉真に)最初から映画にするという話でしたっけ?
名嘉真:一番最初はMVを作ろうと考えていたんですけど、せっかくわれわれ4人が集まっているわけだし、今の状況がこれはこれで面白いからDISCOMPOの結成秘話ドキュメンタリーみたいなものを作りませんかと僕がUsuiさんに提案したんです。ドキュメンタリーならフィクションをちょっとずつ足していけば映画になるんじゃない? という話になって、それで進めていった感じですね。
──DISCOMPO with 泉茉里が結成に至るまでの物語でありつつ、このコロナ禍におけるエンターテイメントの世界を舞台にしたファンタジー的要素の強い劇映画としても楽しめますよね。
名嘉真:そういうものを目指しました。途中からエンターテイメントの方向に仕上げていきましたが、当初考えていたドキュメンタリーの要素もラストシーン辺りに痕跡がありますね。
──Usuiさんから泉さんに「実は茉里さんに唄ってほしいんですけれど…」と電話連絡が入るシーンですね。
名嘉真:そうです。あのシーンだけドキュメンタリーにしようと考えていた頃の脚本がそのまま残っていますね。
──脚本をひとまず仕上げてクランクインするまではどれくらいの期間だったんですか。
名嘉真:『アートにエールを!』に応募してから許可が下りるまでに1カ月近くかかったんです。その1カ月のあいだずっと脚本を温めていて、そろそろ許可が下りないといろいろヤバイぞとヒヤヒヤしながら準備をしていたんですけど(笑)。
Dr.Usui:申請が通る発表の前から撮り始めていたんでしたっけ?
名嘉真:はい。撮影初日の前後1日辺りでやっと許可が下りたんですよ。撮影場所の手配もすでにしていたので、助成金がもらえなかったら大損害だなと思っていました(笑)。
Dr.Usui:そうでしたね。予算の出所はまた考えようみたいな話をしつつ。
──泉さんはまだ顔合わせもしていない面々と映画作りに臨むことに不安を抱いたりしませんでしたか。
泉:これまで映画やWEBドラマ、NHKの『天才てれびくんhello,』となんやかんややってきたし、お芝居はずっとやりたかったんです。自粛期間中にいくつかなくなってしまった撮影スケジュールもあって、演技をやりたい思いは密かにずっとあったので、不安よりも嬉しさのほうが大きかったですね。台詞を覚えるのは大変といえば大変ですけど、他にやることもないのでそこに没頭できたというか。
──物語の大筋は名嘉真さんが考案したものなのか、4人で意見を交換しながら進めていったのか、どちらなんでしょう?
名嘉真:叩き台をまず僕が出して、メンバーの意見をもらいながら修正するところは修正しましたが、第二稿くらいで脚本がほぼ固まりましたね。
──なんでもスタッフと出演者合わせて10人以下で撮影しないといけなかったそうですね。
名嘉真:それが東京都からのお達しだったんです。『アートにエールを!』の主旨はコロナ禍で仕事を失ったエンターテイナーたちにアートを作ってもらって、その補助をしますというもので、その枠組みのなかでコロナの被害者を出してはいけないし、感染症対策のために10人以下にするというルールだったんです。
──とはいえ、撮影、照明、美術、スタイリストなど関わるスタッフが撮影現場に集えばすぐ10人くらいにはなりますよね。
名嘉真:そうなんです。だからメイクさんは現場に呼べなかったし、主演の茉里ちゃんにはご自身でのメイクをお願いしたんですよ。