Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー頭脳警察 - 万物流転の半世紀から浮上する未来への鼓動

万物流転の半世紀から浮上する未来への鼓動

2020.07.09

18歳の時に書いた「ソンムの原に」「雨ざらしの文明」

──常に時代とシンクロし続ける頭脳警察らしさを改めて感じたのが、最後に披露される「絶景かな」という新曲なんですよね。あえてコロナ禍の真っ只中にライブハウスを使って新曲を一発録りしたところに転んでもただでは起きない頭脳警察の真骨頂を見たと言うか。

PANTA:コロナの感染拡大がなければ違うエンディングになっただろうし、その前の「さようなら世界夫人よ」で終わったはずだよね。だけどこのコロナ禍の状況は避けて通れないし、本来はライブの予定だった日にLa.mamaで無観客のライブ・レコーディングをしてみたんだよ。

澤:レコーディングは急に決まったんですよね。その前日にスタジオに入った時に明日録れるという話を聞いて。La.mamaでレコーディングしたのは3月28日でした。

──政府が緊急事態宣言を発令する10日前ですね。「絶景かな」は映画のために急遽書き下ろしたということですか

PANTA:うん。「今までいろいろとうんちくや能書きを垂れてきたけど、よく殺されずに済んだな。でもそんなことはもうどうでもいいんだ。とにかくいま君と見ている未来は絶景かな」といった歌詞でね。しかもそれは「乱破者」の世界観にもつながるんだよ。「絶景かな、絶景かな」は、『楼門五三桐』という歌舞伎の演目で石川五右衛門が南禅寺の山門の上から満開の桜を見て言う台詞だから。

末永:その直後に役人に捕まるんですよね。一人で桜を見て悦に入っていたところを。

PANTA:黙っていられない監督です(笑)。

末永:今はこの取材の撮影で照明助手をやっていますけど(笑)。

TOSHI:なぁんだ、俺はてっきりこのコロナの世界を「絶景かな」と反語的に唄っているのかと思ったよ。

澤:そういう解釈があってもいいんじゃないですかね。いろんな意味があると思うし。

宮田:「絶景かな」はこの1年で積み重ねてきたものが良い形で出たと言うか、この面子が一番得意とするタイプの曲ですよね。

PANTA:スタッフからのリクエストは「世界革命戦争宣言」みたいな曲が欲しいということだったんだよね。だからああいうジャーン、ジャジャジャーン!というイントロになったわけ。

澤:あの日は全員で音を出すのが2カ月振りだったんですけど、1年間やってきた経験があったので全然違和感がなかったんです。自然とバンドの音になったと言うか。

PANTA:ただ「絶景かな」では変則リズムをけっこう使っていて、自分でわからなくなっちゃったのでおおくぼくんにかなりの指導を受けたんだよね。

──現状、「絶景かな」を聴けるのは映画のみなんですか。

PANTA:映画の公開に合わせて3曲入りのEPとして出すつもり。そのEPには「絶景かな」の他に「ソンムの原に」と「雨ざらしの文明」という曲を入れるんだけど、どちらも俺が18歳の時に書いた曲なんだよ。倉庫を大掃除したらたまたま当時のノートが見つかってね。「雨ざらしの文明」は頭脳警察の初期も初期、結成したばかりの頭脳警察のために書いた曲でさ。TOSHIは俺の隣で寝惚けているだけだから、そんな曲の存在は覚えちゃいないだろうけど(笑)。

TOSHI:うん、覚えてないなあ…。

PANTA:あと「ソンムの原に」に関して言うと、当時、キンクスの「ウォータールー・サンセット」(「Waterloo Sunset」)という歌があってさ。そうか、キンクスもナポレオン・ボナパルトの最後の戦いとなったウォータールー(ワーテルロー)のことを唄うんだ、なんて思っていたんだよ。ところがキンクスのウォータールーはロンドンにあるターミナル駅のことで、ベルギーの地名とは全く関係なかったんだよね(笑)。その事実を最近知ったんだけど、当時18歳だった俺はキンクスがナポレオンの最後の戦いの地を唄っているならば、第一次世界大戦における最大の激戦であり、連合国側のイギリス軍・フランス軍、同盟国側のドイツ軍の両軍合わせて100万人以上の犠牲者を出したソンムの戦いをテーマにした曲を書こうと思ったんだよ。

TOSHI:PANTAってそういう勘違いが多いよな。なんだか美しく解釈しちゃって(笑)。

PANTA:勘違いのまま終わらせるのもなんだから、「ソンムの原に」は岳にキンクスっぽく弾いてもらったよ(笑)。一方、「雨ざらしの文明」は竜次にちょっとオリエンタルなイメージで弾いてもらってね。なぜ「ソンムの原に」のことを思い出したのかと言うと、たまたま『1917 命をかけた伝令』という第一次世界大戦に投入された二人の若きイギリス兵の一日を描いた戦争映画を観たばかりでね。あれ?俺は昔、この映画に似た曲を書いたことがあったよなと気づいたわけ。『1917』も「ソンムの原に」も同じソンムの激戦を描いているんだよ。

おおくぼ:PANTAさんから聞いて面白かったのは、リリースした曲はどんどん忘れるけど、リリースしない曲はずっと覚えているという話で。

PANTA:そうそう。見つけ出したノートには「ソンムの原に」と「雨ざらしの文明」の歌詞だけ書いてあったんだけど、メロディもコードもちゃんと覚えていたからね。だけど一度レコーディングした曲はなぜかすぐに忘れてしまう。なんでだろうね。一度記録したら危機意識がなくなるのかな?

sub1.jpg

このアーティストの関連記事

頭脳警察/絶景かな

2020年7月18日(土)発売
BRAINPOLICE UNION BPU-001
定価:¥1,500+税

amazonで購入

【収録曲】
1. 絶景かな(映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』エンドロールテーマ曲)
2. ソンムの原に
3. 雨ざらしの文明
*『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』公開館の新宿kSシネマ、一部レコードショップ(詳細は近日発表)、近日オープンの「頭脳警察オフィシャルstores」にて販売

LIVE INFOライブ情報

zk/頭脳警察50 未来への鼓動

zk_B5flyer_表面.jpg
 
2020年7月18日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次公開!
 
出演:頭脳警察(PANTA、TOSHI、澤竜次、宮田岳、樋口素之助、おおくぼけい)
 
加藤登紀子(歌手)、植田芳暁(ミュージシャン)、岡田志郎(ミュージシャン)、山本直樹(漫画家)、仲野茂(ミュージシャン)、大槻ケンヂ(ミュージシャン)、佐渡山豊(ミュージシャン)、宮藤官九郎(脚本家)、ROLLY(ミュージシャン)、切通理作(評論家)、白井良明(ミュージシャン)、浦沢直樹(漫画家)、木村三浩(活動家)、うじきつよし(ミュージシャン)、桃山邑(演出家)、春風亭昇太(落語家)、鈴木邦男(活動家)、足立正生(映画監督)、石垣秀基(ミュージシャン)、アップアップガールズ(仮)(アイドル)、鈴木慶一(ミュージシャン)、髙嶋政宏(俳優)ほか <登場順>
 
監督・編集:末永賢
企画プロデュース:片嶋一貴
プロデューサー:宮城広
撮影:末永賢、宮城広
整音:臼井勝
スチール:シギー吉田、寺坂ジョニー
企画協力:田原章雄(PANTA頭脳警察オフィシャルFC)、徳田稔(TEICHIKU ENTERTAINMENT)
企画・製作プロダクション:ドッグシュガー
製作:ドッグシュガー、太秦
配給:太秦
[2020年/DCP/モノクロ・カラー/スタンダード・ビスタ/5.1ch/100分]
©2020 ZK PROJECT
 

帰ってきたPANTA暴走対談LOFT編〜映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』公開記念トーク&ライブ〜

出演:頭脳警察(PANTA / TOSHI / 澤竜次/ 宮田岳/ 樋口素之助/ おおくぼけい)、ほかゲスト有り
2020年7月12日(日)LOFT9 Shibuya
OPEN 18:00/START 19:00
配信時間:19:00〜21:00(予定)
オンライン視聴チケット:¥1,500(税込)
ライブ会場入場チケット(着席):¥2,500(税込・ドリンク代別途¥600、お一人様2枚まで購入可能)
 
 
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻