頭脳警察を音楽的に捉えてくれたのが良かった
──オープニングを飾る、水族館劇場の舞台を使ったライブ(「銃をとれ」)から一気に引き込まれるし、若手を揃えた頭脳警察が吉と出たことを改めて感じます。
PANTA:みんな若いながらも腕利き揃いだしね。竜次と岳は黒猫チェルシーを10年以上続けていたし、素之助は騒音寺でのキャリアを積んで今に至るし、おおくぼけいはキャプテンズから芸歴が長いし(笑)。
おおくぼ:みんな各々で対バンはしていたんですよね。
PANTA:そうだね。レコーディングも最初はおおくぼくんを中心にデータを送り合いながらパソコンで曲作りをしていったんだけど、そういうのも時代の流れだよね。それを経て、映画にも出てくるリハーサル・ルームで音合わせをするというね。ただ、50周年を迎えるにあたってのメンバーが若い世代になったのは意図したわけじゃなく、ごく自然な流れだったんだよ。それが結果的に素晴らしいものになっていくというのが嬉しい。素之助とは騒音寺との出会いから始まって、おおくぼくんはアーバンギャルドやトーキョーキラーでの活躍を知っていたし、竜次と岳の黒猫チェルシーはいいバンドだと思っていたし、すべてが自然な流れだった。
澤:頭脳警察に入らないかと声をかけてもらったのが、ちょうどバンドが活動休止になった直後だったんですよ。
宮田:いいタイミングだったよね。
──今回の映画は50周年イヤーに焦点を絞るのかと思いきや、意外と過去の写真や映像が織り交ぜてあって、頭脳警察の軌跡をテンポ良く辿れる構成になっていますね。
PANTA:瀬々監督の映画とは違って、政治的なことや現象的なところとは別次元で頭脳警察を音楽的に、ロック・バンドとして捉えてくれたのが良かったと思う。政治の季節が背景としてあった歴史をちゃんと踏まえながら、でもそれだけじゃないよって言うか。それはTOSHIが一番気にしていたところでしょ?
TOSHI:今回? まあ、自分たちを炙り出された感じはあるかな。
──『暴走対談』でも大槻ケンヂさんが話題にしていた、日清パワーステーションで行なわれた再結成ライブでのTOSHIさんは天真爛漫と言うか無邪気と言うか…(笑)。
TOSHI:もう本当に恥ずかしいですよ。勘弁していただきたい(苦笑)。
PANTA:これまで取材やトークライブでTOSHIがどれだけ悪行を重ねてきたかを話してきたけど、こうしてTOSHIの実態を見せられるのが俺は本当に嬉しい。「悪いのはこいつなんだよ!」ってやっと証明できるから(笑)。
──あの映像を見ると、慶應三田祭ではちみつぱいの後にステージ・ジャックするのをけしかけたのがTOSHIさんだったという話も肯けますね。
PANTA:でしょ? 今まで俺がバンドを取りまとめるのにどれだけ苦労してきたか(笑)。火をつけるのはいつもTOSHIなんだから。
樋口:火を消すのはいつもPANTAさんで(笑)。映画の中で、1990年に頭脳警察が再結成した時にPANTAさんは「節操のないバンド」と話していましたね。
澤:あの時期のTOSHIさんを見ると、僕らももっと暴れないとダメだなと思いました(笑)。
TOSHI:真似するな。ろくなことがないよ(笑)。
──そういったアーカイブ映像も挟みつつ、視点はあくまでも現在の頭脳警察に置かれているのが良いですね。
PANTA:理想を言えば、俺とTOSHI以外のメンバーの声がもっと出てくると良かったんだけどね。でもすべては「暑苦しいんだよ」という岳の一言に集約されているからな(笑)。映画のタイトルにしてもいいくらいだよ、『暑苦しいんだよ』って(笑)。