Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー頭脳警察 - 万物流転の半世紀から浮上する未来への鼓動

万物流転の半世紀から浮上する未来への鼓動

2020.07.09

クリミアのパートは別の映画としてまとめてほしい

──竜次さん、岳さん、素之助さん、おおくぼさんはこの映画で改めて頭脳警察を俯瞰できたところもあったのでは?

澤:史実的に知っていた学生運動の映像と共に加藤登紀子さんの証言があったり、いろんな角度から捉えた頭脳警察の姿を見られて新鮮でした。テンポ良くわかりやすく時代背景が映し出されていて勉強にもなったし、改めてすごく格好いいバンドだなと思いましたね。

宮田:過去の映像も盛り込まれていて楽しめましたけど、やっぱりTOSHIさんが一番面白かったですね。パワステでのライブは楽屋に戻ってきてからもやんちゃなままで(笑)。今もあんな感じでいてほしいです。

樋口:僕がいいなと思ったのは、昔の映像と今の映像が切り替わる「万物流転」の演奏シーンですね。PANTAさんとTOSHIさんがストレッチしていたり、二人の関係が垣間見られると言うか。ストレッチは今もやってほしいですね。

TOSHI:今やったら腰が折れるよ(笑)。

樋口:二人がじっくり話し合っているところはあまり見たことがないんですけど、要所要所でコミュニケーションを取っている場面が僕は好きですね。

TOSHI:昔の自分の映像を見ると、ホントにただの酔っ払いだもんなあ…。

PANTA:親父さんが亡くなるまでは飲まなかったのにね。TOSHIの親父さんはジャイアンツが負けるとダルマ(サントリーオールド)が半分くらい減るような人だったんだけど。

TOSHI:70年代の頭脳警察の打ち上げはジュースを飲んでいたしね。

PANTA:それが1990年の再結成ではスタジオにウイスキーの水割りとクリームソーダを持ち込んでさ。水割りとクリームソーダの両方を飲む奴なんて初めて知ったよ(笑)。

おおくぼ:クリームソーダがチェーサーだったんですね(笑)。

樋口:よくPANTAさんが頭脳警察のことを「本来なら真っ先に社会に抹殺されないといけなかったバンド」と言うじゃないですか。確かに映画を見ると抹殺されて然るべきバンドだったことがわかりますよね(笑)。だってライブは暴動そのものだし。

PANTA:パワステのライブが終わった後の客も血走っていたしね。「オイ!出てこいよッ!!」って。70年代のライブだって瓶や石が平気で客席から飛んでくるんだから。それを避けながらライブをやっていたし、映像には出てこないけどナイフを隠し持ってもいた。今日のライブは殴り込みがありそうだと聞くと、ベースの(石井)まさおに「これ持ってろ」ってナイフを渡してさ。

TOSHI:昔の学園祭が怖かったよな。

PANTA:うん。客席が乱闘になって、まさおはどうした!? って探すわけ。そうするとPA卓のそばで逃げ遅れた右翼に「ぶっ殺してやる!」とか叫んでるんだよ、ナイフを持ちながら(笑)。それを必死になってスタッフが止めてね。俺はその様子を笑って見ていたけど(笑)。もう毎日が事件だったよ。

樋口:その時、TOSHIさんは何をしていたんですか?

TOSHI:学園祭ではそんなに暴れてないよ。

──「学園祭では」(笑)。

TOSHI:俺たちが乱闘することはなかったけど、まわりは血だらけの人が多かったよ。学生同士の喧嘩もあるし。

PANTA:体育会系と反体育会系もあるし、組織のぶつかり合いもあるし、同じ学校でも実行委員会と反実行委員会があるしね。

──おおくぼさんは映画をご覧になっていかがでしたか。

おおくぼ:1年間ずっとカメラクルーの方々がついて回って、カメラの前でいろいろ喋ったりしたんですけど、完成した映画を観ると意外と演奏シーンが多くて。思っていた以上に音楽映画になっているなと思いました。さっきPANTAさんがおっしゃっていたように、ちゃんと頭脳警察の音楽的側面に焦点を当てているんだなと。

PANTA:たとえばあの水族館劇場のシチュエーションでライブをやるなんて、やろうと思ってもなかなかできることじゃないからね。花園神社の境内に特設された小屋の中のステージ、あれはどんな舞台よりも素晴らしい。ただ、あれでもし客席が崩れようものなら大惨事になっていたけど(笑)。

おおくぼ:実際、ちょっと揺れてましたからね(笑)。

sub3.jpg

──映画の見所のひとつは日本の外務省が渡航中止勧告を呼びかけているクリミアへの渡航、ヤルタ国際音楽祭での「7月のムスターファ」の演奏シーンで、日本語がわからないはずのヤルタ市民がPANTAさんの歌に深く感銘を受けていたのがとりわけ印象に残りました。

PANTA:末永(賢)監督はあのクリミアのパートをもっと長く見せたかったみたいなんだけどね。「戦争と戦争の間に俺たちはいる」(「時代はサーカスの象にのって」)という歌と共にクリミアの紛争が映し出されるような感じの導入で、最初はだいぶ長かった。ただ確かに内容はすごく面白いんだけど、頭脳警察の50周年に焦点を当てるという趣旨とずれてしまうから短くしてもらって、後々その部分だけで一本の映画にしてほしいとリクエストしたんだよ。その代わり、本来伝えたかったことのすべてを「7月のムスターファ」に集約してもらったわけ。あれはあれで見せ方としては大正解だったと思う。

TOSHI:あれ、歌詞を訳してくれた人がいたの?

PANTA:唄う前にニコライという通訳の人が俺のMCをロシア語で伝えてくれたよ。サダム・フセインやその孫であるムスターファのこと、200人の米兵を相手に銃撃戦を繰り広げたことなどを忠実に訳してくれて、イラク戦争の内実もちゃんと理解していたんだよね。

sub4.jpg

このアーティストの関連記事

頭脳警察/絶景かな

2020年7月18日(土)発売
BRAINPOLICE UNION BPU-001
定価:¥1,500+税

amazonで購入

【収録曲】
1. 絶景かな(映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』エンドロールテーマ曲)
2. ソンムの原に
3. 雨ざらしの文明
*『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』公開館の新宿kSシネマ、一部レコードショップ(詳細は近日発表)、近日オープンの「頭脳警察オフィシャルstores」にて販売

LIVE INFOライブ情報

zk/頭脳警察50 未来への鼓動

zk_B5flyer_表面.jpg
 
2020年7月18日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次公開!
 
出演:頭脳警察(PANTA、TOSHI、澤竜次、宮田岳、樋口素之助、おおくぼけい)
 
加藤登紀子(歌手)、植田芳暁(ミュージシャン)、岡田志郎(ミュージシャン)、山本直樹(漫画家)、仲野茂(ミュージシャン)、大槻ケンヂ(ミュージシャン)、佐渡山豊(ミュージシャン)、宮藤官九郎(脚本家)、ROLLY(ミュージシャン)、切通理作(評論家)、白井良明(ミュージシャン)、浦沢直樹(漫画家)、木村三浩(活動家)、うじきつよし(ミュージシャン)、桃山邑(演出家)、春風亭昇太(落語家)、鈴木邦男(活動家)、足立正生(映画監督)、石垣秀基(ミュージシャン)、アップアップガールズ(仮)(アイドル)、鈴木慶一(ミュージシャン)、髙嶋政宏(俳優)ほか <登場順>
 
監督・編集:末永賢
企画プロデュース:片嶋一貴
プロデューサー:宮城広
撮影:末永賢、宮城広
整音:臼井勝
スチール:シギー吉田、寺坂ジョニー
企画協力:田原章雄(PANTA頭脳警察オフィシャルFC)、徳田稔(TEICHIKU ENTERTAINMENT)
企画・製作プロダクション:ドッグシュガー
製作:ドッグシュガー、太秦
配給:太秦
[2020年/DCP/モノクロ・カラー/スタンダード・ビスタ/5.1ch/100分]
©2020 ZK PROJECT
 

帰ってきたPANTA暴走対談LOFT編〜映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』公開記念トーク&ライブ〜

出演:頭脳警察(PANTA / TOSHI / 澤竜次/ 宮田岳/ 樋口素之助/ おおくぼけい)、ほかゲスト有り
2020年7月12日(日)LOFT9 Shibuya
OPEN 18:00/START 19:00
配信時間:19:00〜21:00(予定)
オンライン視聴チケット:¥1,500(税込)
ライブ会場入場チケット(着席):¥2,500(税込・ドリンク代別途¥600、お一人様2枚まで購入可能)
 
 
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻