自信のなさ=向上心の表れ、伸び代がある証拠
──ソロを始めた9年前と比べて理想的な歌詞を書けるようになった手応えはありますか。
浜崎:ありますね。「思春の森」は自分の中でもビギナーズラックとして別格だけど、『BLIND LOVE』の歌詞のほうが全般的にクオリティは高いと思います。「FORGIVE ME」と「Maybe Not Love」の歌詞はあえて『フィルムノワール』に寄せて書いて、「東京、午前4時」の歌詞は最新の私ということもあり今までで一番いいと自分では思っていますが、『BLIND LOVE』の歌詞はどれもすごく気合いを入れて書いたので愛着がありますね。自分では特に「バイブル」の歌詞が好きです。
──だけど面白いですよね。恋愛が苦手なはずの浜崎さんがこんなにもたくさんのラブソングを書き上げているなんて。
浜崎:私はどうも、苦手なことをやらされる星のもとに生まれたのかなと思って(笑)。人前に出るのが苦手なのに人前に出る仕事に就いちゃったし、歌は苦手なのにこうして唄っちゃってるし。でもきっと、苦手なことをやると輝く性分なんだと思います。
──シンガーだけでもない、ソングライターだけでもない、自分はあくまでシンガー・ソングライターなんだという見定めができたのが今回一番の収穫と言えそうですね。
浜崎:自分をシンガーと呼ぶには実力不足だと思っていたし、ソングライターとしてそれほどクオリティの高い曲をポンポン作れているのかなと自信がなかったし、どちらもしっくりこなくて居心地が悪かったんです。どっちかを専業でやれるのか? と自問自答すると、どっちもやれないなと思って。その気持ちはいまだにありますね。
──アーバンギャルドに加入してから12年も経つのに?
浜崎:だけど、その自信のなさは向上心の表れだと思っているんです。自分にはまだ伸び代があると信じているので。
──今回の『BLIND LOVE』のように、AORに通じる大人のポップ・ソングが近年だいぶ少なくなってきたように思えるし、浜崎さんにはぜひそういう洗練された都会的な歌をこれからも唄い続けていただきたいですね。
浜崎:こないだネイルサロンへ行った時、そこのネイリストさんが全く喋らない人だったんです。それで店内の有線をずっと聴いていたんですけど、流れてくるのはラップにちょっと歌を足したような曲ばかりで、それもアーバンギャルドみたいな男女混声ボーカルの曲がすごく増えたなと思って。私がソロでやっているような歌は確かに少なくなりましたよね。私は私で自分とかけ離れたものをやりたいとは思わないし、今さらテンションの高いロックをやりたいわけでもないんですけど(笑)。自分としては、今やっている音楽はテンションがとても自然なんです。まぁ、暗い曲ばかりですけどね。今度のレコ発は『BLACK OR WHITE』というタイトルで、自分の中のダークサイドとライトサイドをお見せしようと思って選曲してみたら、ダークサイドしかないことに気づいたんですよ(笑)。
──ライトサイドがないのも自然でいいんじゃないですか?(笑)
浜崎:ハッピーで平和な曲がほとんどないんですよね。もう衣装で何とかするしかない(笑)。でもそれも私らしいし、レコ発では初披露する曲も多いので、アップデートした浜崎容子を楽しみにしていただきたいですね。