浜崎容子(アーバンギャルド)のバラ色の人生
まず最初に、このご時世の余波で誌面版Rooftop様が休刊となってしまったこと、非常に残念ですし、スタッフの皆様の心中を考えるといたたまれません。我々ミュージシャンやエンタメ事業に従事している皆様すべてに現在多大なる影響を及ぼしている新型コロナウイルス。世界的にも類を見ない事態にこれからどうなってしまうのだろうと不安なお気持ちで毎日過ごされていらっしゃる方も多いと思います。
しかしながらこうやってWeb版は続けていかれること、そしてわたくしのような者のコラムの連載も続けさせていただけること、非常に嬉しく思っております。
この場をお借りしていつも支えてくださっている編集部の皆様、我々ミュージシャンにパフォーマンスの場を与えてくださっているLOFTプロジェクトの皆様に感謝いたします。
と、これまでになく真面目な語り口で始まりました『浜崎容子のバラ色の人生』。
私自身は真面目に人間の屑として日々生きているつもりなのですが、世の中には冗談の通じない人もたくさんいらっしゃいますし、なかなかこのような状況になった時に人の本性が現れててしまう時期でもあり、無駄に心を痛めている人も多いと思います。かくいうわたしも真面目にふざけた人間なのですが、やはりどこまでのラインが許されるのか見極めるのが正直難しいところです。
なので、今回は真面目なちょっといい話(?)をさせていただきますね。
先日、ロフトブックス様より発売されました私の所属するアーバンギャルドの自伝本『水玉自伝〜アーバンギャルドクロニクル』。前回のコラムを読み返すとすっかり4月に発売イベントをやる前提で書いておりますね。たった1カ月で、いや1日でこれまでの日常が覆ってしまうという現状は、皆様の心身にも影響しているだろうと心配しております。
人の心配より自分の心配をしろと言われそう、というかお前なんぞに心配されても金にならねーぞと言われそうなのでこういうことは早々におしまいにして、『水玉自伝』で話していなかったエピソードを。
発売当日、筋肉少女帯の大槻ケンヂさんのYouTubeチャンネル『オケミュー! オーケンの、ミュージシャンみんなどうしてる?』に電話出演させてもらった時も話したエピソードなのですが、アーバンギャルドがガタガタで今にも壊れそうな時期[『水玉自伝』を読んでいただけるとわかると思いますが、私、基本的にアーバンで苦悩ばっかりなのですよね(苦笑)。なのでこの時期かな? などと憶測してください]、偶然にも何かのライブを観に行ったときオーケンさんも同じ現場にいらしていて、当時まだそこまで親しくない、と申し上げたら語弊があるのですが、とにかく毎年恒例アーバンギャルド主催イベント『鬱フェス』で共演させていただいたり、毎年何らかの形で共演することがまだまだ少なかった時期で。しかも私はというと打ち上げに参加しないで有名(?)なミュージシャンの一人なのですが、そのライブの出演者の方に(肝心のその人が誰なのか思い出せない・笑)「良かったら打ち上げ参加しませんか?」と言われ、いつもなら秒で断るのにその時は気分も沈んでいる時期だったし、たまにはハメを外してみるかと打ち上げに参加させていただきました。
すると、オーケンさんもいらっしゃるじゃないですか。わぁオーケンさんもいらしたんだと思っていたらいつの間にかお席が隣になり、オーケンさんはけっこう酔ってらっしゃったけど、バンドの話になると周囲のバンドマンの方々と真面目に話し込んでおられました。
その時になぜそんなことを話したのかきっかけも思い出せないのですが、私はオーケンさんに「バンドをやめたいと思っている」と打ち明けてしまいました。いきなり迷惑な話ですよね。しかしながらそれに対してオーケンさんは非常に真面目に受け止めてくださって、「やめちゃダメだ」と即答してくださいました。
「僕も筋肉少女帯というバンドを一度やめたことがあるけど、あれは間違いだった。そして今の自分はバンドの名前に助けられて活動できている。いつかよこたんにもアーバンギャルドというバンドの名前がよこたん自身を助けてくれる日が来るから、絶対にバンドはやめたらいけないよ」
私は失礼ながらもここまで断言してくださるとは思ってもいなくて、「そういう時期もあるよね〜」的な感じで流されちゃうかなと思っていたのですが、その後も本当にいろいろ心配してくださって、何が辛いと思っているのか、どうしたら状況が良くなるのだろうか、などたくさんのアドバイスや助言をいただきました。
実は、同じくらいの時期に人間椅子の和嶋さんとも共演させていただく機会があったのですが、その時の楽屋が非常に和気あいあいとしていて楽しくて、和嶋さんもとても優しくて、その場でもつい「バンドやめたくなる時がある」みたいなことをポロっと言ってしまいました。本当に迷惑な後輩ですよね。するとやはり和嶋さんも「やめちゃダメだよ」と仰ってくれたのです。
「ずっと順風満帆な人生なんかない。だからこそバンドって面白いんだ。」と。
オーケンさんも和嶋さんも、バンドマンとして先輩ミュージシャンとして我々の中では神のような存在の方々です。そんなお二人がそう仰るのなら、この思いは間違いなんだ、私はバンドというもの、ミュージシャンとして生きるということの根本を見直さなくちゃならないと感じました。
そして今、私はまだバンドを続けています。
きっとまた何か困難があったとしても、オーケンさんや和嶋さんを始め憧れの先輩ミュージシャンの皆様に恥じない生き方をしていきたいと思っています。
そして同じように悩み苦しんでいる後輩がいたら、真摯に向き合える器の大きさを持ち合わせている人になりたいと心に誓った忘れられない出来事でした。