Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー川口 潤 『THE COLLECTORS〜さらば青春の新宿JAM〜』監督 × 梅田 航 『SOUNDS LIKE SHIT:the story of Hi-STANDARD』監督

THE COLLECTORSとHi-STANDARDのドキュメンタリー映画が伝えるバンドを続ける気概と覚悟、何が起こるかわからない人生の面白さ

2018.11.12

 川口潤監督の『THE COLLECTORS〜さらば青春の新宿JAM〜』は、モッズとしてのスタンスを信条とするキャリア30年のバンドが揺籃期を過ごしたライブハウスで現在と過去を交錯させるライブを繰り広げ、自身の出自を再確認する映画だ。梅田航監督の『SOUNDS LIKE SHIT:the story of Hi-STANDARD』は、数々の偉業を成し遂げ破格の成功を収めたモンスター・バンドの結成から活動休止、誰もが二度とないと思っていた再始動から現在に至るまでの軌跡をメンバー3人の証言と貴重なアーカイヴ映像で検証する映画だ。両作品とも既存の音楽ドキュメンタリーとは一線を画した独自のメッセージ性が込められており、バンドという社会の縮図に僕らもなにがしか投影できるものがあることに気づく。また、川口と梅田は旧知の間柄でもある。両監督とも互いの作品への制作協力を惜しまず、この2作品は被写体との距離感や演出方法、作品のカラーは異なるものの、どこか相通ずるものを感じる。それは音楽に対する純真さや生真面目さ、頑なに痩せ我慢を貫く男の意地みたいなものに焦点を当てていることだ。純真ゆえに頑なで、頑なゆえに譲れないものがある。だから時にボタンの掛け違いやトラブルも起こるが、それもすべて純真さゆえ。ひたむきに生真面目に音楽を探求するバンドに密着した川口と梅田に両作品の見所について聞いた。(interview:椎名宗之)

WRENCHのMV作りで仕事として関わることに

──お2人の出会いは、川口さんがスペースシャワーTV/セップ在籍時、梅田さんがWRENCHのマネージャーだった頃ですか。

川口:知り合ったのは梅ちゃんがマネージャーになる前ですね。

梅田:前だけど、ちゃんと話したり付き合いができたのはマネージャーになってからじゃないかな?

川口:いや、梅ちゃんがマネージャーになる前に写真を撮ってた頃から僕は知ってたよ。「今度WRENCHのマネージャーになるんですよ」みたいな話をした記憶があるから。

梅田:ああ、そうかもしれない。マネージャーをやる前はフリーのカメラマンをやってたんですけど、食えなかったのでバイトをしてたんです。ZKレコードのI氏と出会って身の上話をしていたら「ウチで働きながら写真をやればいいじゃん」と言われて、体良く騙されて(笑)。気がついたらWRENCHのマネージャーになっていたんです。

──川口さんはWRENCHのMVを何作か手がけていましたよね。

川口:そうですね。最初はZKから出たライブDVDを手伝いました。もう時効だから話しちゃいますけど、僕はセップで働きながらカウパァズとWRENCHのライブを撮影する内職をしてたんです。スペシャの番組でも放送したんですけど、その素材をフルで編集してVHSにしたんですね。カウパァズは『RUST DAYS』、WRENCHは『LIVE ON EARTH』という作品なんですけど。僕はもともとニューキー・パイクスのファンで、彼らの解散ライブの映像でテコ入れをしてほしいとI氏にお願いされたんですよ。いま思えば当時のZKはそこそこ儲かってたと思うんですけど、I氏には小遣い程度で操られて内職を請け負ったんです。その流れでカウパァズのMVを手がけることになって、それが僕にとって初めてのMV作りだったんですよ。

梅田:最近そのカウパァズのMVを見直す機会があって、すごく格好いいなと思ったんだけど、あれは川口さんが監督だったんだ?

川口:うん。今回の『さらば青春の新宿JAM』のプロデューサーをやってるフジパシフィックミュージックの大塚(涼大)さんに「あれは川口さんの仕事だったんですね」と言われたんだけど。

──両者がちゃんとした仕事で関わるようになったのはWRENCHからですか。

梅田:そうですね。僕がマネージャーになったのはちょうどWRENCHがメジャーに進出した頃で、売り出していく上でMVの制作を誰に頼もうかという話になって、ここはやっぱり川口さんがいいってことで、一緒に富士山のほうまで行って撮影して。

川口:1本目のMVは僕じゃなかったんですよ。当時はすでにスペシャで『MEGALOMANIACS』という音楽番組を制作してた頃で、自分もWRENCHのMVを撮りたいとビクターの人にアピールしたんですね。「僕のほうが俄然格好良く撮れますよ!」くらいのことを言ったんだと思いますけど(笑)。ちょうどセップから独立するのを決めた頃にWRENCHのMVの話をもらったんですよね。

──当時のお互いの印象は覚えていますか。

川口:梅ちゃんはカメラマンだった頃の印象が強くて、「エッ、マネージャーになっちゃうの!?」って驚いた記憶があるんですよ。わけがわかんないなと思って。

梅田:最初はずっとそんなふうに言われてましたね。僕自身、なんでマネージャーなんてやるんだろう!? ってわけがわかりませんでしたけど(笑)。どんな仕事をすればいいのかも全然わからなかったし。

──梅田さんがマネージャーをやめてカメラマンに復帰したのはどんな理由からだったんですか。

梅田:マネージャーをやりたくてやってたわけじゃなかったし、音楽業界自体もレーベルとかが面白そうだなと漠然と興味があって入っただけでしたからね。もちろんWRENCHのメンバーのことは尊敬してたし、大好きだったんですけど、やっぱりまた写真を撮りたいという気持ちが高まってきたんです。マネージャーの仕事を5、6年やったところで自分が本当にやりたいことをそろそろやりたいと思ったんですよ。

川口:梅ちゃんの写真をちゃんと見るようになったのはマネージャーをやめた後で、独特の現場感と言うか、梅ちゃんにしか撮れない被写体との距離感とか、確固たるものがあるなと思いましたね。ライブハウスの現場でしょっちゅう会ってたし、写真展があれば必ず行ってたし。後年、アメリカにも行ってたよね?

梅田:だいぶ後ですけどね。語学留学という体で。

川口:そういういろんなことがあって、今こうして同じ立場の仕事をしているのは感慨深いですね。

このアーティストの関連記事

LIVE INFOライブ情報

collectors_flyer.jpg

THE COLLECTORS 〜さらば青春の新宿JAM〜

【監督・編集】川口潤

【撮影】川口潤、後藤倫人、梅田航、大石規湖、山辺真美、SUSIE、渡部フランケン、木本健太

【制作】アイランドフィルムズ

【製作】THE COLLECTORS 映画製作委員会(フジパシフィックミュージック+日本コロムビア+スペースシャワーネットワーク)

【配給】SPACE SHOWER FILMS

1:1.78│カラー│ステレオ│105分│2018年│日本

© 2018 The Collectors Film Partners

2018年11月23日(金・祝)より新宿ピカデリーほかにて劇場公開

HiSTANDARD_flyer.jpg

SOUNDS LIKE SHIT:the story of Hi-STANDARD

【監督・編集】Wataru Umeda

【製作】SOUNDS LIKE SHIT PROJECT

【配給】NexTone inc.

2018年│カラー│日本│DCP│114分

© 2018 SOUNDS LIKE SHIT PROJECT

2018年11月10日(土)より新宿バルト9ほか、全国にて劇場公開

RECENT NEWS最新ニュース

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻