身近な人の存在の大きさ
mitsu:卓偉さんのインタビューとかで、シーケンス(同期/あらかじめ録音した音素材を生演奏と融合させる手法)とかの話になってるのを耳にして、目にして、自分はシーケンスを限りなく減らしてるんです。多分2月15日は、1曲も入らないと思います。基本6割はシーケンスなしなんですけど、ある曲もあって。この間、初めて誕生日のワンマンで、キーボードにインストを入れて、完全に生でやった時に、さっきも言っていたエゴが出て。その場でアレンジするのが全てとかは思わないんですけど、自由なものをすごく感じて。卓偉さんがやられてるライブも、縛られてないというか、その中でちゃんと出来上がっているものみたいなのを感じたので、自分も誕生日の日はそうしようかなって思ってやったんですけど、それで良かったなって思いますね。
卓偉:僕もね、20代後半から30代入るくらいの6〜7年間は、ほぼシーケンスを使わないでやってた時期もあるんですよ。
mitsu:そうなんですね!
卓偉:そうそう。デビューくらいの時は、それでも4割くらいはあって。それで一時、ほぼ全曲くらいシーケンスが鳴ってる時もあって。20代後半になって削ぎ落としたいってなった時代も結構あったんだけど、今はまたシーケンスが多くて。ダンスチューンに出来るし。今はこうしたい、ああしたいっていうのは、波があると思うんだよ。それも自分の感覚だと思うんだよね。減らしたいって思ってる時は、全然減らして、アレンジを変えてもいいんじゃないですかね。
mitsu:ソロは、経験したい、知識を勉強したいっていう気持ちが最初は近くて。今ももちろんそうですけど。してみて初めて分かることってあるじゃないですか。自分にはこれが合うなみたいな。
卓偉:ほとんどそうだよね。
mitsu:なので、活動もそうですけど、シーケンス1個でも、それをまず知りたくて。今減らしたいっていうのは、元々は自分はシーケンスバリバリのバンドだったんですよ。ピコピコって言われるような時代のシーケンスバリバリで、クリックから始まってそこに合わせて。基準がそこからだったんで、今はそこから解き放たれて、その時から変わりたいっていう意思も含めて、シーケンスが減ってきてると思うんです。1回なくなって、次にシーケンスをってなった時に、シーケンスへの頼り方が変わるかなって思って、そこも期待してる部分ではあるんです。
卓偉:いいと思います。若い人はシーケンスを使ってるバンドが多いんだっけ? バンドによるのかな?
mitsu:そんな気がします。でも、あまり完全生って聞かないですね。
卓偉:やっぱりそうなんだね。僕もシーケンスでギターとかが出ちゃうのは、ちょっとダメなんだよね。バンドで補えない音をちょこっと出してるだけなの。だからシーケンスバリバリって言っても、音数は少ないですけどね。
mitsu:それはもう見てて分かります。
卓偉:ギター1本でやってるバンドが、シーケンスを出してツインギターになってるバンドっているじゃない? 「それ、なくていいし」ってちょっと思うんだよね。そういうんじゃなければ、なるべくクリアな方が格好いいですよね、バンドは。
mitsu:そうですね。
卓偉:そうなんだね。今若くて、シーケンスを減らそうとしてることは、すごくいいことだと思うよ。
mitsu:ただそんなことを言っても、自分は作曲を1人ある子とずっとしてるので。
卓偉:共作なの?
mitsu:メロのアレンジとか編曲は一緒にするんですけど、デモをもらう段階ではその子が。
卓偉:曲を書いて?
mitsu:はい。バンドを辞めてソロになるまでに、自分は本当に楽器が何も出来なかったんですよ。ギターのコードがちょっと弾けるくらいで。最近はそれが嫌だなって思って、まだ全然素人レベルなんですけど、ピアノとかを触るようになったんですよ。この間初めてライブで、ぎこちないままやったんです。なのでその瞬間、さらに「やっぱりすごいな、プロで楽器をやってる人は」って思ったんです。自分がソロを始動したきっかけのひとつは卓偉さんなんですけど、実際に行動を移す時に何も知らなくて、ライブの組み方も分からない時に手を差し伸べてくれた子で。自分が17歳の時今とは全然関係ないジャンルのバンドを組んでいて、そのメンバーの紹介で知り合ったんです。その子が、今までの自分のワードとかも拾ってきてくれて、自分が何も歌がないから、1回デモを作ってきてくれたんですよ。過去の曲をずっと歌ってても、その時は自分の心がマイナスばっかりで。その時に救ってくれた子で、その子がすごく単純に好きなんですね。なので、「mitsu」って名前で看板は自分なんですけど、どっちかっていうとプロジェクトに近いかなっていう気持ちもあります。一緒に背負ってるというか。なので今後、その子がどうなろうが、自分がどうなろうが、一緒にやっていきたいっていう気持ちが今はすごくあります。
卓偉:その子はバンドのメンバーではないの?
mitsu:そうなんですけど、何度か出ていて、つい最近から一緒にステージも立つようになりました。ジャンルも違って、サポートメンバーともすごい仲良くはしてるんですけど、実際は裏方みたいなとこにいたんですね。でもそれって、そもそもカテゴライズする必要ってあるのかな?って思って。やっぱりステージで感じたものを一緒に作っていきたいし、そういうものを今はやっと出来るようになって、今一緒にステージに立つようになってきました。
卓偉:そうなんですね。そういう人との関係は大事にした方がいいですよね。
mitsu:やっぱり卓偉さんを見てると、作曲も含めて全部ご自身でやられてるので、まだ自分はそこが出来ないとこだなっていうのと…。
卓偉:いやいや、頼れる人がいるっていうのは、いいことなんですよ。僕はそういうツテもないからやるしかないって感じだったんで(笑)。
mitsu:いやでも、それはソロっていうのをやっていく中の理想形ではあると思うんです。そこから先に誰かと一緒にやるとかがあるとしても、1度は自分の経験って部分ではしておきたいなって感じてます。なのでいずれはと思っている段階です。
卓偉:パートナーがいるっていうのは、すごく重要な事で。例えばJohn LennonにしてもPaul McCartneyにしてもお互いがいたからThe Beatlesが成り立ったように。自分もそういう人がいればバンドを組んだんですけどね。それがないから結局自分でやるんですけど。
mitsu:もしかしたら自分の側にいてくれるっていうのもどっかにあって、まだバンドを組まなくてもいいやって、はっきり言ってたのかもしれないです。本当に1人かって言ったら、ソロになってからの方がむしろ人を身近に感じるようになった気がします。
卓偉:それはバンドをやってソロになる人は、最初に感じることだと思いますよ。僕も解散して最初の2〜3年、そう思ったことをちょっと思い出しましたね。
mitsu:そうなんですね。
卓偉:今だったら、ソロっていう名義だからこそバンドのメンバーと上手く話せるんじゃないかっていう気になったりとか。それは距離があってね。
mitsu:実際にソロ活動して、少し何年か経ってから話すことってありました?
卓偉:いや、結局なかったんだけど。ベースの奴なんかは、すぐ実家に帰って結婚しちゃったりとか、ギターの奴も解散してそれっきりとか。なんかそんなんだったと思いますよ。
mitsu:そうなんですね。
卓偉:バンドも運命で、本当に音楽が好きだったら、解散した後でもどんな形でも続けると思うんですよね。自分の楽器が何にせよ。だからそこで終わってしまうっていうのは、それまでの自分のモチベーションだっていう感覚があるから。
mitsu:他に大事なものが出来たりとかも含めて。
卓偉:そうそう。だから、僕もバンドをやりたかったっていう感覚はありますけど、ここまで長く続けてこれたのは、自分がソロなんだっていう判断をした結果だと思ってるんで。だからそれは、決して悪い判断じゃなかったなとは思ってるんですよ。でも本当にそう思えてきたのは、ここ2〜3年ですよ(笑)。
mitsu:えー、そうなんですか!? 意外すぎる、それは!
卓偉:最初の10年とかは、「ソロでバンドって何?」みたいな。本当にプロモーションキャンペーンでどこに行ってもいろいろ言われたしね。
mitsu:今のソロへの認識と、当時って、絶対に違うと思います。
卓偉:もちろん。
mitsu:間違いなく卓偉さんとか、そういう先人の方がいたことが、今、相当影響してると思います。本人が思う以上に、見えないものかもしれないですけど、自分たちはその恩恵を受けてきたので。有難いです。
卓偉:いやいや、そう言って頂けるだけで嬉しいです。もう恐縮です。何も出ません、すいません(笑)。
一同:(笑)