「シワ」と「白髪」という言葉を歌詞に込めた意味
──「その日まで」もすごくいいですよね。夕暮れ時の情景が目に浮かぶキラキラしたメロディで。「いつまでも愛してね/いつの日かシワが増えても」「いつまでも愛してね/いつの日か白髪増えても」という歌詞の「シワ」と「白髪」が印象に残ります。
大谷:メロンの時は作っていただいた歌詞を自分たちなりに消化して唄っていたんですけど、年齢にそぐわなかったり、経験したことのないことが歌詞になっていると背伸びした感があったんです。でも自分たちで歌詞を書くことでそれまでの経験や理想が言葉になるので、歌に感情移入しやすいんですよね。30代半ばのいまの二人が唄う歌なら、それなりのワードが入ってもいいかなと思ったんですよ。
田渕:シワも白髪も、アラフォーのぼくたちには切実すぎて大声で唄えない気持ちにはなるんですけど(笑)。
小林:シワも白髪も「いつの日か」じゃなくて、もうすでに増えてるもんね。未来の話じゃない(笑)。
村田:いやいやいや…(笑)。ちなみに言いますと、「いつまでも愛してね」という歌詞は、応援してくださるファンの皆さんへ届けたいフレーズでもあるんです。
田渕:素晴らしい!
村田:それはまさちゃんのアイディアだったんですけど。
大谷:この先、私たちが老いてシワや白髪が増えたりするのは自然なことだし、お互い様じゃないですか(笑)。いままではちょっとでも若く見られたいと思ったりもしたけど、歳を重ねたからこそ醸し出せる魅力もありますよね。これから夢に向かってどれだけ頑張れるかが楽しいことでもあるし、私たちはファンの皆さんと一緒に老いていきたいんですよ。そんな気持ちを歌詞に込めました。
──ヲタモダチに向けた等身大のラブソングでもあるわけですね。
村田:ここから先、長く唄えますね。命ある限り唄える曲だと思います(笑)。
大谷:締め切りのギリギリまで粘ったんですよ。toddleさんはいつもどうやってタイトルを決めてるんですか?
小林:(田渕に)超悩むよね?
田渕:うん。歌詞のなかから抜粋することはあんまりなくて、その曲がどういうことを唄ってるかをまとめてぼやかす感じが多いですね。
小林:サビの歌詞をそのままタイトルにすることはないよね。
田渕:あんまないよね。たぶんない。
──「その日まで」は他にタイトル候補があったんですか。
大谷:詞を書く前にさぁどうしよう? と考えていたのは……「キクラゲ」。
小林:え!? どうして?(笑)
田渕:しかも「クラゲ」じゃなくて「キクラゲ」(笑)。
大谷:曲を何回聴いても「キクラゲ」だと思ってたんですけど、いざ歌詞を書いてみたら全然「キクラゲ」じゃなくなったんです(笑)。
田渕:「キクラゲ」の要素が0%に(笑)。
小林:まぁしぃの「マルスケナム」は「キクラゲ」だったんだね。
大谷:私もタイトルは歌詞から抜粋しないのがいいなと思っていたんです。「なんでそのタイトルでこんな曲なの?」みたいな感じにしたくて。私的に「その日まで」のテーマはプロポーズなんですけど、だからと言ってそのまま「プロポーズ」というタイトルにはしたくなかったんですよ。
──「マルスケナム」に「キクラゲ」、こんな部分にも村谷姉妹の対照的な個性が出ていて面白いですね。
村田:意外とそうなりましたね。そういうところも含めて、やっぱり自分たちで詞を書くのはいいなと思いました。
小林:むらっちもまぁしぃも長く音楽活動を重ねてきたから、自分で作った歌詞をメロディにのせることを割とすんなりできるじゃないですか。それが純粋にすごいなと思って。そういうことをできる下地がちゃんとあるってことですよね。二人ともとてもクリエイティブで、こんなにキャリアがあるのにすごく謙虚で、それでもやりたいことはしっかりあって…一緒に曲を作るのがとても楽しかったです。歌詞も本当に良いものを付けてくださって、私は幸せ者だなぁと思いました。
大谷:私たちも幸せ者ですよ。詞の書き方は人それぞれあると思うんですけど、自分の経験を詞の要素として全く使わずに虚構の世界を作り上げる人もいますよね。
田渕:物語的な感じで?
大谷:はい。私は自分が体験したことで出てくる歌詞しか書けないので、物語的な歌詞を書ける人はすごいなと思って。でも今回、こうして作詞をやらせてもらって、ちゃんと一つの形にすることができたのは大きな自信になりました。これからは怖がらずに、苦手意識を持たずに書いていきたいです。もっといろんな詞を書いてみたいですし。たとえば売れてる曲の歌詞を聴いても、実はそんなにすごいことを言っているわけじゃないし、普段発している言葉が多いんですよね。言葉の並べ方次第で聴こえ方が変わるって言うか。自分で作詞をすることによって、そんなふうに曲の聴き方自体も変わってきた気がします。