Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューTHE THROTTLE(Rooftop2016年2月号)

ムーブメントを本気で作ろうとしているロックバンド 

2016.02.01

純粋なロックンロールは俺たちだけだってことを聴衆に体現していきたい

 
—メンバーの自己紹介をお願いします。
高岩遼(Vo&Pf)(以下高岩):THE THROTTLE、ボーカルの高岩リョウです。 
熊田州吾(Vo&Gt)(以下熊田):ギターボーカルの熊田州吾です。
向後寛隆(Vo&Gt)(以下向後):ギターボーカルの向後寛隆です。
田上良地(Vo&Ba)(以下田上):ベースボーカルの田上良地です。
成田アリサ(Dr)(成田):ドラムの成田アリサです。
—結成は何年ぐらいですか?
高岩:結成はですね、2013年の5月25日からなんで、2年半ぐらいですね。
—どうやってメンバーが集まったんですか?
高岩:全員同じ大学なんです。音楽大学のジャズコースで全員が出会って、僕と熊田は同い年なんですが、良地さんとアリちゃん(成田)は2つ上の先輩で、さらに2つ上が向後さん。
僕が1年生の時の5年生ですね。
向後:留年したからね。
一同:(笑)
—大学にいるときからライブはやってたんですか?
高岩:いや、THROTTLEを結成したのは卒業してからだよね。僕と熊田が卒業して、次の年の5月25日ですね。
—今のメンバーになった経緯を教えてください。
高岩:もともとよく遊んでたメンツではあったんですよ。僕と熊田と田上と向後さんは。俺が上京してきた頃、向後さんが「遼ちゃん遼ちゃん、キャロル知ってる?」とか言ってよく構ってくれて。色んなことを教わりました。それこそ東京に出てきて初めてライブやったのは向後さんの紹介ですし。で、アリちゃんは結構…恐かったんだよね。
成田:あはは(笑)
—なぜ恐かったんですか?
高岩:そういう印象だったんですよ。
成田:仲良くなかったんです、全然。会ったら挨拶はするけど、ぐらいで。
高岩:良地さんとは一緒にライブやったりしてたんで。俺はジャズのボーカルを都内でずっとやっていて、良地さんをゲストで呼んでいろいろやったりして。それで卒業して1年後ぐらいに、良地さんと遊んでて「何かやる?」ってなるわけですよ。ここに来てバンド組むか、と。
田上:池袋の…プロントでね。それがゴールデンウィーク中ですね。
高岩:それで「何する?」って話になって。ジャズは?ジャズじゃねぇ。ブルースバンドもちょっと違うよな。ウケるのはやっぱりロック&ロールだ、R&Rじゃねぇかということになって。
田上:金儲けをそこで早速意識しました。
高岩:そうそう。で、まず州吾に「お前やれよ」って話して。彼はまた別のバンドでラママとかでライブをやってたんで。
熊田:そうですね、高校ぐらいから大学の4年ぐらいまでずっとラママでやってたんですけど。そのバンドが解散した時にこの話が来たんですよ。
高岩:じゃドラムはどうするよって3人で話してて。やっぱ売れるには華やかさがないとね。全員革ジャンでキメてもな、じゃあとりあえず女じゃないかということになって。「あのおっかない人いいんじゃない?」ということでアリちゃんを誘ってね。それで5月25日、THE THROTTLE結成して。それからしばらく経って、向後さんが加入したのは10月?
向後:つい最近、去年の10月ですね。
高岩:って感じで現メンバーが集まりました。
—それぞれやっぱりロックンロールとか聴いて育って来たんですか?
向後:僕はビートルズから始まりましたね。まぁUKロックが好きですけど、有名どころは殆ど手をつけて。個人的な話なんですが、僕は卒業してから六本木のアビーロードで箱バンやってて。その仕事がビートルズだったんですよ。そういうときにTHROTTLEの演奏を路上で見る機会があって。デビュー前の、革ジャンの時のビートルズみたいだなって思ったんで、アビーロードに誘ったりして。だから僕は、アメリカンロックよりはUK全般ですかね。
熊田:音楽を志したのは、中学の頃だったと思います。その頃、義理の兄貴…姉の旦那さんなんですけど、その人が横須賀でライブをやるって聞いて。俺もバンド始めたてだったんで見に行ったんですよ。ニルヴァーナのコピーやってたんですけど、米軍の人たちが暴れ狂っていて。「恐いなー」っていう印象で。でもそのあと原曲を聞いたら良くて。俺はもともと邦楽ばかり聞いてたんですけど、このときからロックってカッコイイなって思い始めていろいろ漁っていった感じですね。
田上:僕は、両親がクリスチャンなんですよ。だから毎週教会行ってゴスペル歌ってたんです。そんなこともあって音楽はずっと好きだったんですけど、中学の頃に親父がアコギをやってたので、僕もギターを始めたんです。最初はカッコつけてたんで、そのころ流行ってたポルノグラフィティのアゲファ…いや、アゲハ蝶を。
熊田:アゲファ(笑)
田上:Fの発音入ったことに関しては、ちょっと…
高岩:そこは伏せておきましょうか。
田上:それでバンドってのを意識し始めたのは、クイーンですかね。初期のゴスペルとロックが融合したみたいで、すごいカッコイイなって思って。それと同時に70年代のハードロックも聞き漁り始めたんです。こっちもカッコイイって思ったんですけど、この2つ似てるような違うような気がするけど、わからねぇなって思って。そこで本能的にジャズって言葉が浮かんだんですよね。ジャズ聞き始めてオムニバスとか聴き漁ってるときにサミー・デイヴィスJr.っていうエンターティナー、ジャズボーカリストに出会ってものすごい衝撃を受けて。その流れでジャズを学ぼうと…学ぶっていうか身につけたい一心で大学に入って彼らと出会ったって感じですね。
熊田:カッコイイ。
成田:すごいイイ感じにまとめたね(笑) 私は…吹奏楽上がり、クラシック上がりなんですよ。中学の時に吹奏楽をやってたんですけど、高校に入ったときに吹奏楽が辛すぎて、もう音楽やめようって思って全く違う部活入ったんですよね。
—辛いっていうのは?
成田:すごい厳しい部活で、週一で顧問に怒られたりして。こんな苦しい想いするならやりたくないと思って、全く違う部活に入ったんですけど、やっぱり何かやりたいなって思った時に、友達から「バンドやらない?」って誘われたんですよ。吹奏楽部で打楽器やってたんで、出来る楽器はドラムぐらいしかない、って事がドラムを始めたきっかけです。それまであまりバンドの音楽を聞いてなかったので、誘ってくれた子が好きなバンドを聞いてましたね。それこそ、高校生が通るようなシャカラビッツだとかGO!GO!7188だとか、女の子が歌ってるバンドばかり聞いてたんですけど。別に好きっていうわけでもなく「バンドってだいたいこういうものなんだ」ぐらいの気持ちでした。ジャズを本気でやりたいとかじゃなく、ドラムを練習して大学を卒業できるなんて超最高、というちょっと…頭が悪い考え方で入りました(笑)でもちゃんとジャズをやろうとも思ったんですけど、それもどっちかと言うと、勉強しなきゃっていう気持ちで聞いてて。「やっぱり音楽って厳しいんだな」って。それで、大学を卒業するタイミングで、一回ちゃんと就職しました。
—どういう所に就職したんですか?
成田:病院です。医療事務。受付とかしてました。それで2年ぐらい働いたときに田上から連絡が来て「月に1,2回酒飲みながらブルースのセッションしない?」って言われて。ずっと仕事ばっかりだったから快諾したら、いつの間にか「次のライブ決まってます」って言われて、真剣にやります系のバンドになってて(笑)
田上:…はい。
成田:ロックンロールもそれがきっかけで聞くようになりましたね。
—その誘いはメンバーに入れたくて言ったんですよね?
田上:勿論です。
成田:流れに身を任せてここまで来ました(笑)
向後:皆ちゃんと喋っててやばいな俺…
—それで仕事もやめたんですか?
成田:そうですね。正社員やりながらこれは出来ないんで。
高岩:…俺は本当にガキの頃からブラックミュージックが好きで。というか、マジで自分が黒人だと思ってたし。周りの皆が何を聞いてたか知らないけど、日本人の歌手とか全く知らなくて、スティービー・ワンダーとレイ・チャールズがキングだとずっと思ってたんで。
—それは親の影響ですか?
高岩:そうっす。御袋も親父もどっちもそういうのが好きで。小学一年からクラシックピアノをやってたんですけど、中学一年ぐらいからは独学でブルース、ジャズっぽいピアノもやっていて。ただ、どっちかって言ったら親父はブラック/ソウルとかR&Bが好きだったんですよ。で、御袋はスコーピオンズとかの世代だからクイーンの大ファンだし、ちょっとロック寄りでしたね。サーフィンやってディスコ行って、イケイケだったらしいですね。そういう所で育ちました。俺はロックンロールっていうよりは黒人寄りのR&Bの方が近くて、エレキな感じじゃなかったですね。俺のルールは。ピアノメインで、みたいな。ファッツ・ドミノみたいな。
—ラグビーと柔道をやってたんですよね。
高岩:中学は柔道部で。高校はラグビーでしたね。
—そういうスポーツをやっていたときも音楽から離れなかったんですか?
高岩:そうですね。生活の中には常にありました。中学からダンスをやってて、ヒップホップダンスみたいなのをやりつつ…。ソウル、ブラックミュージックをずっと聞いてると必ず中三ぐらいで「ヒップホップ超かっけぇ」みたいになるわけですよ。俺もやりてぇ、バンダナ巻こうかななんて思ったり、坊主にしたりして。まぁ中学の時は普通に坊主だったんですけど。それでヒップホップを聞いたりしてたんですけど、そういう時期でもレイ・チャールズは聞いてたんです。そしたらその内「ジャズってなんだよ」って思ってきて。レイ・チャールズはゴスペルとブルースのスピリッツの融合+ジャズ、みたいな結構複雑で。で、改めてインストゥルメンタルのジャズだったり、色々聞き漁ったんです。すると、白人のジャズボーカリストの存在があって。ずっと黒人至上主義だったのに、フランク・シナトラの、ジャズのオムニバスCDに入ってる歌を聞いてマジで感動して。全然フェイクしないしストレートに歌い上げるし、こいつは何なんだって調べてみたら「うわ、白人だ」と。その頃から、俺もスターダム目指してぇと思い始めたんですよね。だからずっと体育会系ではいましたが、唯一心の安らぎ処が音楽でしたね。高校時代も、レイ・チャールズのコピーバンドみたいなのをやってたんですけど、言ってしまえばリスナーとしてだったわけです。歌はずっと好きだったけど、それを誰かに披露したことはなかったし。
—初めてちゃんと歌ったのはいつですか?
高岩:小三のとき、スティービー・ワンダーの曲ですね。
—小三でスティービー・ワンダーなんですね(笑)
高岩:普通だったんですよ、それが俺の中では。だからお袋に「これ全部カタカナにして」ってお願いして。『涙をとどけて』でしたね。
向後:めっちゃイイね。
高岩:めっちゃイイ。
—THE THROTTLEの楽曲はみんながボーカルをとっていますが、どういう風に作っているんですか?
高岩:基本は俺がメインボーカルなんですけど、大学でも男はみんなジャズボーカル専攻だったんで、全員作詞作曲できるんです。彼女(成田)はジャズドラム専攻ですね。
—皆それぞれ書いてきて持ち寄る感じですか?
高岩:そうですね。その分、共作も多いです。そこはかなり強みだよね、曲が延々と生まれるっていうのは。
—メンバーの中でも「この曲キたなぁ」って思うことありますか?
高岩:それはありますね。
—採用されたら嬉しい…というか、作った甲斐があるというか。
熊田:俺の場合は、自分以外に曲を見てる視線がものすごくハイクリエイティブだと思うので、確かに受け入れられたら嬉しいですけど、その視線を通らないで受け入れられちゃうとカッコ悪い部分を出しちゃうことになるので、線引きみたいなのはありますね。
高岩:日本のロックンロールマンには「本当にそこだけにしかない」足を払われたらその先何もないみたいな特徴があると思うんです、イメージとして。俺らはロックロールをかなり客観視してますね。だけど俺らはロックンロールをかなり客観視しているので、楽曲に対する視線にはフィルターがあるかも知れないですね。わざとダサい曲を作る時もあるし、テクニカルな曲を作ってみることもあるし。でも歌詞はわかりやすいもの、歌えるもの、と。
熊田:そうですね、歌モノであることは大前提ですね。歌モノだということを意識するのは言わずもがな。その上でクリエイティブな部分とダサい部分のバランスを取りつつ曲を作ってるんだと思います。
高岩:それは俺たちがジャズを消化してるからだと思う。ああいう、数学的な、ち密なアドリブとかは出来ないけど、ジャズを消化したから、逆にシンプルなロックンロールを難しく見れるというか。あるよね。最近すごい感じる。
田上:ロックンロールって誰でも言えるし作れるじゃないですか。3コードだし、ジャンル的に違っても生き様がロックンロールって言い張ってるアホなバンドもたくさんいるけど、当然そうはなりたくない。生き様も楽曲もロックであり、しかもロックはジャズから来てる。ライブでも言ってるように、純粋なロックンロールは俺たちだけだってことを聴衆に体現していきたい。
成田:カッコイイじゃん、どうしたの?
田上:そりゃジャックダニエル飲んでるから…そういう感じになって…すいません。
—バンドの特徴として、ライブも演劇っぽいというか作りこんでいますよね。そこが他のバンドと違う所かなって思います。ああいう見せ方をしてお客さんにどういうモノ、感情を見せていきたいのか、聞かせてください。
高岩:やっぱり俺らはジャズを消化してるからこそ、ジャズボーカルの世界とインストゥルメンタルのジャズの世界を知ってるけど、後者はやっぱり金を稼げない。俺らは4人がボーカルで、それぞれ消化してきたものにエンターテイメント性がかなりあって。それはフランク・シナトラでもビング・クロスビーでもビートルズも勿論そうだし。あそこまでスターダムにのしあがれたら最高なわけで。だから見てるビジョンがよりセレブリティでグラマラスな部分があると思うんです。要するに「いなたいロックンロールで踊ろうよ」みたいな感じは好きだけど、そこをさらに客観視してもっとエンターテイメントな所にいたいんですよ。やっぱりスターダムですね。
田上:その通りだね。それこそ、フランク・シナトラとかサミー・デイヴィスJrとかはよくホテルでショーをやってたけど、そういうショービジネスと呼ばれるものの世界観が強いからおのずとそれはステージに反映されていくよね。
高岩:ロックンロールにおいてもショービジネスと絡んでる時代、プレスリーの時代だったりあるわけでね。だって誰一人として、THE THROTTLEはロカビリーを通ってないもんね。
向後:ちょっと違うんだよね。
高岩:何か違うよね。カントリー&ウエスタンの世界観と俺らは違って、そこはショースタイルに意識が強いからじゃないかな。
熊田:あと、俺らシナトラとか好きだけど、皆それだけじゃない、少しずつズレてるから互いにアイディアを補えるというか。例えば、ちょっとUKっぽい曲を作ったとしても高岩が歌えばブラックの要素が加わる。そういうところが俺らの強みじゃないかな。ライブをやる上でも曲を作る上でも。
—バンドとしての体幹がすごくしっかりしていますよね。その上でそういうズレが緻密さとかエンターテイメント性に繋がってるのが伝わる。高岩くんは実際の体幹もしっかりしてますけどね(笑)
高岩:ラグビーやっててよかったです(笑)
 
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2016年2月10日(水)
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