個々に聴いてる音楽がバラバラだから、面白いアイデアが出る
——10月14日にニュー・アルバム『次の物語』をリリースされますが、レコーディングは7月くらいだったんでしたっけ?
結良:5〜7月くらいですね。
靖乃:ドラム録りは5月くらいにやったよね。
——いつもレコーディングからリリースまで結構間を空けるんですか?
靖乃:今回はツアー・スケジュールとかの兼ね合いですかね。6月と7月がKra的には殺人的なスケジュールだったんですよ。
タイゾ:5月からMoranと2マンがあったりしたんで、結構合間を縫って、録れる人から録ろうって感じでしたね。
——そうなんですね。『次の物語』というタイトルにはタイミング的にも大きな意味を感じたんですが、このアルバムを作るに当たり、タイトルを決めてアルバムの中身を決めていったんですか?
結良:タイトルは最後ですね。
——タイトルはみんなで決めたんですか?
結良:いや、ほぼ歌詞に基づいて、景夕がメインで考えて「これどうかな?」っていう意見をもらって、「これは?」っていうのがあれば返すって感じですね。
靖乃:今回はそもそもパッケージがミニ・アルバムかなって言って作り始めた流れから、曲が出揃う流れの中で代表とも話しをしつつ、「全部入れちゃえばいいんじゃない」ってなって、フル・アルバムになった感じですね。
——そうなんですね。タイトルを景夕さんがメインで考えているとのことですが、メロディは作詞者ですか? 作曲者ですか?
景夕:曲によって違いますね。タイゾは基本的にメロディも入れてくるんですけど、たまにこの曲は俺に付けて、とか。結良さんも自分で入れてくるのもあれば、俺に付けてというもあるし、ほんとその曲によって違うんですけど。メロディを付けてって時は、伸びる感じのメロディがよくて、とか、詰まってる感じがよくて、とか、そういう話を聞いて、「こういう感じかな?」って感じで考えていきますね。
——作曲する時に、歌詞はこういう感じでっていうイメージがあったりするんですか?
タイゾ:ほとんどないですね。
——そうなんですね。じゃあ曲を聴いて、景夕さんが自分の中でイメージしていくんですか?
景夕:こういう言葉が似合いそうだなとか、そういう感じではやっていきますね。
タイゾ:よっぽどイメージがある時は伝えたりはしますけど、今回は特になかったですね。前に出した「Utopia」って曲はイメージがあり過ぎたんで自分で書いたりしたんですけど。やっぱりボーカルの世界観で統一されてた方がいいなと思うし。特にアルバムなんで。あとは景夕から出てくるものが結構面白かったりするんで、いい意味で任せてますね。
——レコーディング中や曲作り期間中は、音楽を聴いたりしますか?
結良:僕は全然聴かないです。もしかしたらこの曲が似てるかもしれないって不安になった時は聴いたりはしますけど、なるべく似るのが嫌だから。今は一小節、二小節が似てるだけでパクリとか言われる時代だから。僕の知ってる音楽の中ですらあったら嫌だなって思うから。もしかしたらそれは影響を受けちゃっててそうなってるかもしれないし、でもそれは避けたいんで。
——普段は音楽は聴くんですか?
結良:聴かないです。テレビで聴くくらいですね。あとはベースの凄い人たちの曲を聴いたりはするけれども。聴くようにしようかなとは最近、思ってます。ジャニーズはよく聴くんですけど(笑)。特に曲作り期間中はなるべく聴かないようにはしてますね。でも、ドラムのフィルとかどんなのだろうっていうので聴く時はありますね。何かおいしいおかずはないかなとか、自分の専門外のところは聴きますけど。
——最初にデモを作る時って、全てのパートを入れ混んでるんですか?
結良:入れ混んでる時もあるし、全くない時もあるし。僕は基本、単純なベーシックな状態でみんなに渡してます。僕はそれぞれの楽器のプロじゃないから、その人の持ってる、出てくるものでやって欲しいんで、基本な流れしか作らないですね。
——タイゾさんはどうですか?
タイゾ:結構作り込みますね。Kraの場合、多分アンサンブルがバラバラになっちゃうんで、合わすところは合わして、そこ以外は自由にやって下さいって感じですね。
——期間中は音楽は聴きますか?
タイゾ:俺は期間中とか関係なしに普段から聴いてるんですけど、結構偏ってますね。いわゆる最近の流行ってる曲とかは分からなくて、小室ファミリーとか90年代のJ-POPが多いですかね。バンド系は、最近だとラスベガス(Fear, and Loathing in Las Vegas)とかSiMとか、ちょっと激しい感じのハード・コアが多いかなって感じですね。
靖乃:去年から今年に掛けてぐらいでEDMを聴いてることが多かったですね。自分がやってることとは全く真逆なんですよね。なんだったら、どっちかって言うと嫌悪感に近かったというか。生楽器で生のドラムをやるのがありきでってところが、多分、きゃりー(きゃりーぱみゅぱみゅ)を聴いてるところの流れから、もっと太いキックの音とかって掘り下げて聴いてて。マネージャーが(EDMを)好きだったりもするんで、「これ、誰?」って言って聴いてる間に、聴くことが増えたんですけど。ある意味、客観視できるっていうか、全然違う温度感のところに持っていけるから、気分転換になるんですかね。あとは最近聴いてて思うのは、どうしても自分のアプローチだったり、先輩方から見聞きして、バンドで生でって場面転換していくってなると、いわゆる走りもたりもあるし、フィルだったりとか、そこに持っていく空気感、溜め感とかで場面転換をパッパって作るのを、打ち込みの人たちって全部縦が一緒やから、似たりよったりって言ったらそうなんだけど、音の出し入れでそれを作ってて。ダイナミクス、ベロシティとか、押したいとこの前を抜くとか、そういうのは勉強になるかもなと思って、そういう視点でたまに聴いたりする感じですね。あとは元々俺がミーハーなので、移動中の気分を上げたりとかで、グラミーのコンピレーションのアルバムとかが毎年出るから、あれで知ったかぶりをする(笑)。
——他のメンバーさんも一緒に聴いてるんですか?
靖乃:いや、基本的にはヘッド・フォンで聴いちゃってることが多いけど、たまに車の中で掛かってることがあるかなってくらいですね。ワールド・スタンダードで抜けてる曲ってやっぱり持ってる力がすごいから、それに突き動かしてもらって自分のことも楽しめたらいいかなっていう気持ちで聴いてますね。
——景夕さんは聴きますか?
景夕:歌詞を書く時は、もうほぼ自分が今付けなきゃいけない曲しか聴かないですね。普段だと、ゲーム・ミュージックとか、アニソンとか、そういうのを流してる感じで、バンド系とかもそこまで聴かないですし。でも、今話を聞いてたみたいにそれぞれがバラバラなんで、持ち寄ってきた時に面白いアイデアが出てくるんですよね。偏らないというか。
——いろんなカラーの曲がありますもんね。
靖乃:こうやって改めてしゃべってみても、結構自分がやってることと直結してないのばっか聴いてんのやなって感じですよね。
“カウントダウン”という言葉が示す意味
——ではリード曲の「カウントダウン」についてお聞きしたいんですが、この曲を聞いた時、「あれ? 景夕さん、唄うのを止めるの!?」って不安を感じたんですよ。でも何度も聴いているうちに逆の意味かなって思うようになり、先日の渋公でのMCを聞いてその不安は払拭されたんですが、この曲名や歌詞にはどういう意味を込めてるんですか?
景夕:歌詞が歌詞だし、前のツアーで初出しした時は、状況的に周りの友達のバンドも解散を発表してっていうタイミングも相まって、お客さんが結構不安になってたと思うんですよ。初めてこの曲を演った時に、やっぱりそういう声が聞こえたんで、「いやマズい! そうじゃないんだ」って思って。“カウントダウン”っていうのも、やっぱり人間は終わりに向かってってますから、そういう意味での“カウントダウン”であり、いつまでも同じものが継続しているわけではないし、その終わりが自分で決めてるその場所でもないし、いきなり終わっちゃう時もありますから。だから目に見えない、うちらの考えにないところでの“カウントダウン”が生まれた時からもう始まっていて、その中でも自分は、唄を止める時は死ぬ時だから、そのことも忘れないで、と。今、この唄で届けてるこの言葉を忘れないで、みんなついてきて欲しいなっていう意味合いの言葉ですね。