人んちで起きてる面白いことを味わえるのがライブハウスの醍醐味
──ZAZEN BOYSとは対バンしてます?
増子:けっこう久しぶりだよ。ZAZENはもの凄く練習してるんだろうな。しないとあんなことできないよね。あんなふうにストイックにやるのは誰にでもできるこっちゃないよ。まぁノリでいいか、なんてことが一個もないからね。インプロのできるバンドって実はそういうのがけっこう多いんだよな。適当にやってないって言うかさ。あと、レディキャロも久々だから凄く楽しみだね。ところでなんでチッタでやるの?
──チッタって凄くライブハウス感があると思って。キャパが大きいライブハウスらしいライブハウスってどこかなと考えて、自分でもよく遊びに行くのがチッタだったんですよ。
増子:なるほどね。都内からも行きやすいし、広くて過ごしやすいっていうのもあるしね。まぁあれだね、今度の“LOFT FES.”はこの先訪れるシルバー・ロックの時代を象徴したイベントかもな(笑)。今や日本の人口の25%が65歳以上だって言うんだから、だんだんエラいことになってきてるよね。だって4分の1だよ? これからは若者がジイさんのライブを見に行く時代になるよ(笑)。
──怒髪天を筆頭に、今の40代は凄く元気ですからね。
増子:昔はロック・バンドなんて30過ぎたらやるもんじゃないっていう時代だったから。今は普通の社会でも40代が一番の働き盛りで会社の中心じゃない? そりゃバンドだって当然そうなるよ。いろんなことを理解した上で無茶もできるし、体も一番動く頃だからさ。だから今は凄くバンドが面白い。若いバンドには若いバンドの良さがもちろんあるし、若い頃にしかできないこともある。でも、歳を重ねないとできないことだってたくさんあるんだよ。
──最近、その若い世代のバンドが打ち上げで盛り上がる感じが薄れてきたように感じるんですよね。
増子:みんな大人しいよね。純粋に音楽が好きでさ。
──純粋に好きな音楽を真剣にやっているのはよく分かるんですけどね。
増子:音楽オタクとまではいかないけど、いわゆるバンドマンじゃないんだよね。ミュージシャン気質の連中が集まれば必然的にそうなるよ。地元で一番ケンカが強いヤツらがバンドをやるっていう時代じゃないから(笑)。酒も呑まないし、暴れもしない。バンド幻想みたいなものも時代によって違うしさ。でも分からんよ? これから『北斗の拳』に出てくるような荒くれ者しか楽器を持たないような時代が来るかもしれないし(笑)。そういうのは時代の移り変わりでね、今はロックよりもヒップホップとかのほうが、ここで一発名を上げてのし上がろうってヤツが多いんじゃないかな。
──確かに。
増子:結局、ロック・バンドにはそういう時代が過ぎたってことだね。まぁ物足りなくもあるけどさ。俺らの若い頃は、狂った音楽の最先鋒がロックだったりパンクだったりしたけど、狂い方にもいろんなベクトルがあって、時代性が凄く反映されるじゃない? 今はフィジカルな暴力ではなく言葉の暴力だったり、ネットというバーチャルな世界が主戦場でしょ? そうやって多様化して然るべきだと思うし、俺はそういう自分が理解できないものを面白いと感じるね。自分が考えてもよく分からないシーンがあって、そこで何かが生まれることに凄く興味がある。そういう人んちで起きてる面白いことを味わえるのがライブハウスだったり、ハコのブッキングの醍醐味だったりするよね。
──ここ数年は通常営業じゃないから、ハコのブッキングにはあまり出れていない状況ですよね。
増子:そうだね。ハコのブッキングは、自分らじゃ絶対に企画しないような、合わなそうなバンドと一緒に出るじゃない? それが意外と共通項があったり、意気投合することがあるから面白いんだよね。
──またいろいろと企画させていただきます。最後に、“LOFT FES.”に向けて意気込みを聞かせて下さい。
増子:出演するどのバンドもロフトらしさが出てるし、よく知りすぎてるからね。何ならメンバーをシャッフルしても何かできるはずだよ(笑)。そういう気心の知れた面々といっぺんに会えるのは嬉しいね。だからなるべく早く出番を終わらせて呑みたいよ。呑みながらライブを見たい。
──皆さんそう言いますね。後半に出るのはイヤだって(笑)。
増子:そうだろうね。俺らは最初の口火を切る係って言うか、ビールの栓をシュポン! って開ける感じでいいんじゃないかな。自分たちなりのロフトへの思いを込めて一生懸命やるつもりだし、ロフトに捧げる特別なものもちょっと入れたいなと思ってるよ。とにかく今から凄く楽しみだね。