Radio Caroline(PATCH/Vo.G、ウエノコウジ/B、楠部真也/D)が、ダウンロード・コード入り7インチ・シングル「Can't Get Enough/Silly Thing」をリリースした。新音源は12年ぶり、シングルとしては16年ぶり。彼らは2002年に結成し2009年に活動休止したが2014年に活動再開、変わらぬパワフルなライヴで健在ぶりを示して来た。このシングルを携えて「Radio Caroline 2020 TOUR"CAN'T GET ENOUGH」を、大阪(3月7日)名古屋(3月8日)で行ったところで、新型コロナ・ウィルス感染が各地で拡大、ライヴ自粛の流れとなり、3月14日に下北沢Flowers Loftで予定されていたライヴが中止となった。急遽シングルとツアーグッズの販売会が開かれたのだが、3月半ばだといいうのに東京は雪が降り真冬の寒さ。「お客さん、来てくれるのかなあ」と不安げな表情で集まった3人に、新シングルについて話してもらった。
──活動再開後の初音源リリースおめでとうございます。いつ頃から新曲の準備をしてたんですか?
PATCH:ありがとうございます。
ウエノ:去年LOFTから7インチを出すのはどうかと言うお話を頂いて。もっと早く作れればよかったんだけど、諸々のスケジュールにより、このタイミングに。
──そのお話を頂いてからの曲作り?
PATCH:去年の後半ぐらいですかね。(アプリの)ガレージバンドで作りました(笑)。
ウエノ:PATCHがある程度、固まったものを作ってたんで。2、3回リハを取ってたんだけど、ある程度固まったところで、いいんじゃない? って。こういう曲は、あまり上手くなってもしょうがないんで。
──初期衝動が大事(笑)。新作を作りたいと言う気持ちはあったんじゃないですか?
ウエノ:買って頂いてどうのというのよりは、ここでレコード作れたらツアーができるかな、それはいいなあ、と思ったかな。今はしっかり作り込んで、しっかり聴いていただいて、と言う時代でもないもんねえ。
楠部:聴き方とか買い方も、ずいぶん変わりましたもんね。いい部分もあるけど、僕らが若い時の買い方聴き方ではない気がする。
──僕らって、皆さんはちょっと特殊だと思うんですけど(笑)。アナログしかも7インチ愛は人一倍強いのでは。
ウエノ:7インチって可愛いじゃん。俺は好きだから7インチで聴いてもらいたいけど、こういう時代だからダウンロード・コードもつけて。音質も全然違うのわかってるんだけど。カッティングはアナログ用とダウンロード用と2つやってもらって。嬉しかったな。いいよね、アナログって。やっぱりストリーミングとかで聴くと硬いもんね。
楠部:柔らかさがないですもんね。家でちゃんとしたスピーカーでレコードで聴くと、やっぱり音の深さというかね、違うなあって感じますね。
──Radio Carolineとしてのこだわりも?
楠部:そうなんですよ。音はソリッドなんですけど、ソリッドの中にも柔らかいところもあるというか。今までの制作でも深さはこだわってやって来た部分もあったので、嬉しかったですね、この7インチ。
──文字だけのジャケット・デザインもカッコいいですね。
ウエノ:俺らはTシャツとリンクさせることしか考えてない(笑)。わざわざ「PLay Loud」って入れるのなんか古いけどねー。でも俺は、そういうゴミみたいなレコードが好きなんだよね(笑)。俺らが買ってるガレージのレコードなんて、本当にゴミみたいなレコードたくさんあるからね。その中にキラッと光るのがたまにあってさ。そういうの見つけると、すげえ嬉しい。これ何かの焼き直しだなとか、ジャケット違いとか。
──それはレコードならではの面白さですよね。
ウエノ:俺らもこのシングル、今は会場限定販売だけど、一般流通させる時にはジャケット変えようかな。レコード・バイヤーが買って海外とか行っちゃって、全世界の何処かにRadio Carolineフリークがいて、「これジャケット違うな?」とか思ったら楽しいじゃん。それ、俺らがまんまとハマってきたとこ。そういうのが俺は好きだったりするから。そう言っといて、最近はアナログ買わないようにしてる。7インチだったら買うかな。PATCHの方が買ってるんじゃない?
PATCH:そんなに買ってないけど、大人になったんで、昔は買えなかった高いレコード買ってますよ。見つけると「どうしてあったんだ。なければよかったのに」(笑)。で、一回戻してね。ジャズのところとか自分にだけわかる場所に移して隠したり。でも次の日に行くと元の場所に戻ってる(笑)。
楠部:僕はけっこう7インチ買ってて。アルバムに入ってる曲の7インチを探す旅をしてるんですよ。Neat Beatsの真鍋くんの店で通信販売してるんで、「これ探してんだけど」って真鍋くんに直接電話して、元メンバー価格にしてもらって(笑)。
──そんな皆さんが7インチをリリースできてよかったですね。
楠部:ほんとですよ。PATCHが作ってきた「Can't Get Enough」すごいかっこいいし、俺ららしい曲だし。B面のカヴァーもなかなか上手く行ったんで。僕らにとって久々じゃないですか、音を録って製品にするって行為が。だけど意外とトントントンと行ったんですよ。技術力が上がったんですかね? 違和感は全くなかった。だから嬉しかった。
──今更ですけどなんで活動再開したんでしたっけ?
楠部:LOFTが川崎のクラブ・チッタでイベントやるんでRadio Carolineどうですかって。ありがたい話なんで3人で相談して。ウエノさんが、やるならそれ一回だけは嫌だと。不定期でもやっていけたらって。そこからやれる範囲で、今もやってる感じ。
ウエノ:で、ごっついシングル作ってツアーやろうかと思ったらこの有様(笑)。
──そのライヴが本日は中止になりまして、販売会に。
ウエノ:どうにもならんねえ。先週まではやったんだけどね。
楠部:大阪と名古屋ではライヴやってきたんですけどね。このご時世ですから、いろいろ迷ったんですけど。正解がないですもんね。だから3人で、名古屋からの帰りに話し合って決めたんですけど。また違う形でここでライヴができればいいな。
ウエノ:やってもやらなくても文句言われるからねえ。それだったら、ちょっとでも安心してやれるまで、ねえ。
楠部:気持ちよくやれる方がね。
──ただ、持久戦になってきてるのが辛いところですね。
ウエノ:音楽業界やばいね。精神的なこともあるし、ライヴで生計立ててる人もたくさんいるわけで、それに付随するスタッフ、音響さん照明さんイベンターさん、こういうライヴハウスも。もう大変ですよ。でもライヴハウスだけ集中砲火浴びてるのを黙って見てるわけにはいかないので。ライヴハウスが好きで、こういうことやってるわけで。ライヴハウスが叩かれるのが一番厳しいね。
──今日のような販売会も一つの回答ですよね。
ウエノ:まずはこのシングル売らないとね(笑)、売るほどあるんでね。
このインタビュー後に3人は販売会へ。雪の中をわざわざ来てくれたファンの人たちは暖かかった。
「大阪と名古屋もチケット取ってたんです。今日ライヴなくなって残念だったんですけど、3人大御所なのにわざわざ来てくれて。ずっと活動休止する前から好きなんです。また来ます」(ナナコさん)
「ライヴできなかったのは残念ですけど、こういう催しをやってくれてよかったです。来てよかった」(クボタさん)。
最後にPATCHが「今日はどうもありがとうございました。必ず振替でワンマン・ライヴやらせてもらいますので」と挨拶し、ウエノが「Save The LOFT,Save Caroline」と締めくくった。