PV撮影は過酷なものでしかない
── セルフプロデュースをするようになったのって、ここ3年ぐらいの話なんですね。もっと長いのかと思ってました。
Яyo:俺が1回心折れたんですよ。『NOW』(2009年12月16日リリース)も自分でやったんですけど、セルフレコーディングの過酷さを知って断念したんです。そこで別のエンジニアさんを入れて作業したんですけど、やっぱり思い通りにならなくて、また俺の魂に火がついて(笑)。それでやってみたら、これまで培ってきたものが反映されて、これはやれるんじゃないかって『INCOMPLETE』『MONSTER』『LIVE BEST』はセルフプロデュースでやってます。『NOW』とか『crying rain』も自分でやってますけど、あの頃は技量が足りなかったですね。
── では愁さんがこれまでの10年を振り返って、一番の思い出深いレコーディングってどんなことが挙げられますか?
愁:PVの話でもいいですか?
── ぜひお願いします。今回初回盤にはPVのDVDが付いてるんですよね。
愁:『終わりと未来』っていうのが、人生で初めてPVを撮った曲で、その時の様子は今でも鮮明に思い出せます。監督が絵コンテを見せてきて、「わっ、すげー、これがプロだ!」って思って。でもその時はまだ、ヘアメイクさんもスタッフもいないんで、自分たちで搬入・搬出してセッティングをやって。で、いざ撮ろうとなったら、メンバーみんなパフォーマンスをビシッと決めてるんですよ。もちろん俺もそうでしたけど、みんな家で練習してきたんだろうなってぐらい気合い入れてきてて(笑)。こういう映り方にしたいとか、勉強してきたんだろうなぁという初々しさはありましたね。
弐:でも、愁さんが言うほど俺はパフォーマンスの練習をしていなかったんです。逆に、こいつ絶対なんかやってきたなって。左迅くんは絶対にキメル男だからやると思うけど、俺はそうでもなかったですよ。それにどうやったらいいかわからないし。
Яyo:でも、初めてのPVにしては、クオリティーも高く仕上がったよね。
愁:PV撮れて嬉しいなぁって思いも強かったですし、このPVはすごく印象に残ってますね。
Яyo:左迅が衣装忘れてガンギレしてたよね、確か。
愁:あったなぁ。
左迅:衣装を忘れたんじゃなくて、実家に住んでて衣装を用意しておいたら、母が勘違いしてクリーニングに出しやがって。ふざけんじゃねぇってクリーニング屋まで取りに行かせて(笑)。親切心が仇となった感じですよね。俺らのPVっていつも過酷なんですよ。『終わりと未来』の時は衣装忘れるわ蒸し暑いわで、『volcano』の時は氷点下の中撮影したり。雪が降ってて、とにかく寒くて、凍える中でやってたから、呼吸もかなり苦しかったですね。『BORDER』は逆に40℃ぐらいの灼熱の中で撮影して。海の近くで、カンカン照りの中黒の厚手のパーカーを着てやったんで、脱水症状で死ぬかと思いました。それで、PV撮影は過酷なものという意識が植え付けられましたね。
弐:『壊れていく世界』も大変だったよね。雨が降り始めちゃって。5時間ぐらい車の中で雨が止むのを待っていたんだけど、霧まで出始めちゃって、「撮るの止めます」ってなって。
左迅:『crying rain』もきつかったなぁ。雨を降らしてビショビショになりながら頑張って歌ってるのに、PV監督とカメラマンが、「いや、このレンズだとちょっと違うんですよね」「いや、これでいかないと」って30分ぐらい揉めてて(笑)。「いい加減にしろよ」ってキレたのは覚えてますね。
愁:その頃俺ら3人は旅館でゆったりしながら、お弁当食べてたね(笑)。
Яyo:お弁当食べて、漫画読んでた(笑)。
左迅:俺は最悪な思い出だった。
弐:個人的に、『crying rain』で穿く黒いパンツ忘れたんですよ。それで、愁さんが終わったら借りたんですけど、メンバーも濡れるシーンっていうのを一応撮るということで、愁さんが終わった後のグッチョグチョに濡れたパンツを借りて(笑)。
── 昨年リリースした『INCOMPLETE』のPV撮影も暑かったと言ってましたよね。
左迅:でも初期の頃に比べたら、まだラクでしたよ(笑)。最近のPVはラクになったとしか思わないです。
弐:あっ、そんな事言っちゃう? 俺、今衣装で帽子をかぶってるんですけど、『INCOMPLETE』の撮影で耳が日焼けして全部水ぶくれになっちゃたんです。踏んだり蹴ったりじゃねぇかよって。
── PVは13曲収録されていますが、楽しかった思い出はないですか?
Яyo:楽しかったのは…。
弐:『Break Down』ぐらいじゃない?
Яyo:基本は過酷ですね、やっぱ。ドラマーはけっこう辛いんですよ。スタジオで演奏シーンの撮影になると、別のメンバーの撮影中でも、「この角度からだとЯyoさんの右腕が入るので一緒に入って下さい」とか、ほとんど映んないのに毎回叩かなくちゃいけないから、俺だけプレイ回数ハンパないんですよ。
左迅:ドラムの宿命だな、それは。
── PVはこれまでこういった形でのリリースはされていないんですか?
左迅:アルバムの特典としてDVDを付けたことはあるけど、まとまった形でリリースするのは初めてですね。
愁:『evolution』は新しく作ったんですよ。
左迅:『LIVE BEST』のリード曲という意味合いがあったので、プロモーション用にPVを撮ったんです。
── どんなPVになっているんですか?
愁:プロジェクターでマッピングみたいな感じで壁に当てて。
左迅:デジタルっぽい曲なんですけど、CGを合成するんじゃなくて、壁に直接映像を映して、その違和感が面白いかなって感じになってますね。
── みなさん演奏してるんですか?
左迅:してます。
── 過酷だったんですか?
左迅:いや全然。Яyoは相変わらず過酷でしたけど(笑)。